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〈Aries〉のデザイナー、ソフィア・マリア・プランテラが語る「小規模経営とサスティナビリティ」 – スタイリスト谷崎彩の超私的ファッション愛 #13

〈Aries〉のデザイナー、ソフィア・マリア・プランテラが語る「小規模経営とサスティナビリティ」 – スタイリスト谷崎彩の超私的ファッション愛 #13

スタイリスト谷崎彩さんが愛するファッションの話。


2019年11月、大好きな〈アリーズ(Aries)〉が神保町の小宮山書店で、キューバを代表するラム酒メーカー「ハバナクラブ」に依頼されて作った写真集『Butterfly』の展覧会を行いました。来日していたデザイナーのソフィア・マリア・プランテラに、写真家であるジョシュア・ゴードンと一緒にこの写真集を作った経緯について尋ねると、こう話してくれました。

「今までのクリエイティブは友人関係で“一緒に作り上げていく”コラボレーションが多かったけれど、今回はインスタグラムでリサーチしてジョシュアを発見したの。彼とは初対面だったし、彼にとってもこのようなプロジェクトは初めての経験で。ハバナに長期間滞在してもらい、全てを彼に一任して作品を作り上げていってもらったわ。彼の才能を信じてたし、開花させてもらいたいとも思って。」

老舗・小宮山書店の空間と相まって、それはもうスーパークールな展示風景。さすが、やるなぁ。ちょうどソフィアに前から聞きたいこともあり、インタビューが実現しました。今回はその辺りを…。

 

サイラス&マリアで出会ってから22年
ネットのない時代の交流って?

 

谷崎彩(以下A): 1998年に代官山の外れでお店を始めた時、当時ソフィアが手掛けてた〈サイラス&マリア〉が近くにあって、週末ともなれば入店待ちの大行列だったんだよねー。うちはというと、お客さんが1日に2、3人きてくれたら良い方で(笑)。あっそれは今も変わらないかも。

ソフィア・マリア・プランテラ(以下S): ねぇ…そう聞いてロンドンで驚いてたの。あの時、東京で何が起こってたのか全く把握できてなかったし。

A: その時、うちで売ってた〈スーザン・チャンチオロ〉の服を、〈サイラス&マリア〉のスタッフが買いにきてくれてて、それでソフィアが作ったコンピのCDを貰ったりして。それがめちゃカッコ良い!ストーナーロックとかドゥームメタルやなんかすごく好みで。わたしの周りでそんなの聞く女子がいなかったから、とてもシンパシーを感じました。

S: 懐かしい!スーザン(〈スーザン・チャンチオロ〉デザイナー)も友達よ。

A: そうだよね。わたしはその頃はスーザンの旦那だったアーロン・ローズが経営する「アレッジド・ギャラリー」に通ってた。マーク・ゴンザレスとかスケートカルチャー周辺のアーティストたちの溜まり場で、わたしはスケーターのことはよく分かってなかったんだけど、スーザンの服を仕入れしたくて。「アレッジド・ギャラリー」でスーザンのファッションショーとかもやってたから。

それで、スーザンからソフィアの話も良く聞いてたの。ソフィアもショーに参加してたよね?当時、インターネットもSNSも今ほど盛んでないのにロンドン、ニューヨーク、東京と離れててもテイストが同じ人たちはちゃんと交流してた。今考えたら、どうやってお互いのこと知り合えたんだろう?って不思議なんだけど。

S: 同じ感覚を持つ人たちとはちゃんと繋がりあえるものよ。私はセント・マーチンズ(ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート&デザイン)を卒業してから、そう、同級生にはアレキサンダー・マックイーンがいたわ。「スラムシティスケーツ」というスケートショップからプロダクトデザイナーをやらないかと誘われたのが始まり。〈ホームズ〉というブランド名だった。

A: 1986年オープンの老舗スケートショップね。初めてのロンドン旅行でお店を震えながら訪ねた記憶がよみがえる〜!

S: それで1998年に〈サイラス&マリア〉を立ち上げて、2000年に代官山店をオープン。〈サイラス&マリア〉を辞めてから少しブランクをおいて、2012年に〈アリーズ〉をスタートさせたの。

 

シンプルでも細部にこだわったアリーズの魅力
「小規模経営がサスティナビリティにつながる」

 

A:  わたし、今日も着てるけど、〈アリーズ〉のスウェットが大好き。一見、シンプルなものなんだけど着てみると全然違う!まず、肌触りが良くて。素材はイタリア製の裏起毛コットン。洗濯してもヘタれない。あと、サイズ感が良いよね。

同じグラフィックのものでもLとかXLだと完全にメンズ仕様だし、SやXSだと身幅もピタッとめで着丈も短め、すごくよく計算されてる。オーバーサイズという言葉でレディースも片付けられちゃうユニセックス感がわたしはどうも苦手で。

S: 実はサイズにはすごくこだわってて。でも、メンズもレディースも同じグラフィックのものがあっても良いじゃない?だからスケールを通常の間隔とは変えて、特にXSサイズはあえてぐっと小さめに作っているの。ユニセックスな服は好きだし、デザインし続けるけど、サイズ感にこだわるだけで着たときの印象がグッと変わるから。あと生産の殆んどが今はイタリアなの。

A:  なるほど〜!シンプルでも細部にこだわった服は、ちゃんとその結果が目に見えてくるものよね。

S: 縫製工場にはこだわっていて、実はハイブランドと同じ工場を使っているのでクオリティは良いけれど、あまり高い値段はつけれないので、なにかと妥協しなければいけない部分もあるわ…。〈サイラス&マリア〉の頃は経営や生産管理の仕方を教えてくれる人もいないから、一つずつ手探りで経験を積み上げていったけど、今はその時の経験を活かして〈アリーズ〉を運営している。

例えば、最近だと投資家をいれて会社を運営するのが当たり前になってきているけど、それをすると自分の望まない色んなことが決定されちゃって。ブランドとしての魂が失くなってしまうので、私はそうしたくないの。自分で決断してやっていくことが大事。どんどん大きくしていくことがゴールではない。

アンジェロ・フラッカヴェント(Angelo Flaccavento)、彼はとても良い評論家よ。彼が”サスティナビリティ”が今のバズワードだと言ってたわ。言葉が一人歩きして、本当のところが良く理解されていないまま、とにかく多用されていると。私は本来ファッションは”サスティナブル”でないと思ってる。

けれども、そこについては考えないといけない時代になってきているとも思ってる。それで、見つけた一つの答えは「小規模経営の方がサスティナビリティにつながる」ということだったの。アリーズの経営はとてもオーガニックで役職なんかもなく、スタッフ25人全員がそれぞれ自分の受け持ってる仕事に責任を持ってやっていく方法を選んでいる。ある意味、会社を構成する一人一人が経営者的なセンスをもつということよね。

少人数だからみんなが頑張らないとすぐに仕事が滞ってしまうし、逆に良い結果もダイレクトで実感できる。大きな会社と違ってデザインに株主やコンサルティングの意見が入ることがないから、自分で直接指示をだして形にしていくことができるし、問題が起きたって幹部ミーティングなんかしなくても、現場で解決できるしね。

そういうスピーディーで小回りの効く仕事の進め方が好きなの。その結果、廃棄物を減らすことだってできるしね!だから小規模経営でいるということはサスティナビリティの理想により近づけるんじゃないかって思ってるの。

A: ソフィア、カッコいい!セント・マーチンズでデザインの教育をみっちり受けた後に、当時キレキレだったストリートカルチャーの渦にぶっこまれて、30年以上揉まれ続けて、その人が体で掴みとった答えが盛り込まれてるアリーズは、若い人たちだけじゃなく、ぜひ大人世代にも着て欲しい!

さらにまじめな話し、大企業的な右肩上がりの成長・拡大を目標にしてると、これから先の地球はホント危ない。わたしにとってのサスティナビリティは結局のところ、「服は丁寧に選んで、大切に着てあげること」だと思ってる。だからリアルファーだって昔から持ってる物は気にせずに着るし。

S: 本当にそう!うちの子どもたちも20年くらい前のサイラスを着ているし、わたしが昔買ったチャンピオンのスエット、すごく持ちがよいの。30年前の服が洗濯を繰り返してイイ感じに仕上がってきてるわよ。でもファストファッションのものは素材や縫製がまずくて長く着れないことが多いのよね。

良い素材を選んで、長く着ることのできる服を作るのは大事なことだと思ってる。私にとってファッションは、今感じてることやアイディアをアウトプットするためのメディアのようなもの。常に新しい発見や出会いに刺激を受けて表現し続けたい。〈サイラス&マリア〉を辞めた時はそれを失くした気がしてたけど、また〈アリーズ〉という自分を表現できる場所を見つけることができて、すごく今興奮してるの!

 

ソフィア・マリア・プランテラを知るための2冊

 

『Click to Buy』 2017年

デヴィッド・シムズはソフィアが敬愛する写真家のひとり。「(自身の部屋に飾っていた彼の)写真の女の子たちから自分なりのフェミニティについて影響をうけた」。ソフィアとデヴィッド・シムズ、そして〈サイラス&マリア〉時代からアートディレクターとして一緒に仕事をし続けているファーガス・パーセルと作った写真集。ソフィアの気概あふれる序文から始まる。

「スノッブで型通りのハイファッションが主流だった頃から私は、ファッションは自由な自己表現であるべきだといつも思っている。現状について反抗的な態度でいることは簡単なことだけど、デヴィッドはファッションの在り方を内側から変えようとしてきた。ファッションは私たちの認識や先入観を再定義することができるので、社会で重要な役割を果たしていると思う。」

 

WILTSHIRE BEFORE CHRIST(WB4C PROJECT) 2018年

写真家デヴィッド・シムズとソフィアとの共作でもう1冊。こちらはアーティストのジェレミー・デラーとイギリスの世界遺産ストーンヘンジで特別に撮影許可をもらい撮影されたプロジェクト。ロンドン、東京、ニューヨークで展覧会を開催。各国の「Dover Street Market」では期間限定でPOPアップストアも開催された。

 

Aries アリーズ

Instagram:@ariesarise
お問合せ先: Comcode Showroom / コンコード ショールーム 03-6434-7136

谷崎彩 Aya Tanizaki

スタイリスト。1998年から代官山の隅っこで小さな輸入洋品店を開業。2000年〜2004年くらいまでフランスのインディペンデントマガジン「Purple fashion 」のスタイリスト兼ファッションエディターを務める。

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