ファッションを見極める確かな目を持つ識者を「おすすめする人」として、身の回りにいる〝おしゃれバランスがいい人〟を推薦してもらった。さらに、推薦された「バランスがいい人」をポートレート撮影!それぞれに個性あふれる私服の装いは、オリジナルな魅力に満ちている。はたしてバランスのよさとはどこから生まれるのか?識者と推薦された人、双方のコメントから探ってみたい。
バランス巧者の私服SNAP。高木由利子さん「情報よりも自分の好みに素直に従って」
高木由利子
写真家
「私なりに、顔と服とその人のたたずまいが〝オールインワン〟なのがカッコいいと思っています。高価なブランド品も、個性とチグハグでは台無し。ファッションは、よくも悪くもアイデンティティを表すものですから。若い頃からトレンドをひと通り経験した後、40代後半でメイクをやめ、60歳で髪を染めるのもやめたら、とても自由に。今はこの自宅スタジオの壁のような、墨黒が好みです。
今日の服は、自然を模写したような不規則な編み地のカーディガン、枯山水の波紋柄のような母作のカットソー、最近一目ぼれした革のウエストバンド付きのワイルドなスカート。結局、情報よりも自分の好みに素直に耳を傾けることで、その人なりの装いになるのではないでしょうか」
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高木由利子
1951年生まれ。欧州でフリーランスのファッションデザイナーとして活躍後、独学で写真家に転身。人体、民族、衣への興味を陰影に写す作品多数。
おすすめする人
長嶋りかこ
グラフィックデザイナー
一貫した美意識を生きることで自然と獲得した
“高木さん”としか言いようのない世界観
「髪型、服装、自宅、愛猫(グレーのアメリカンショートヘア)、どこを切り取っても“高木さん”としか言いようのない世界観。写真作品にも通じる、一貫した美意識がうかがえます。その色合いやフォルムや質感は、土や木や風などの自然物と地続きのよう。そして、それはとても高木さんらしい。きっと若い頃から自分自身を生きることに忠実だった結果でしょう。ファッションも、彼女の生き方になじむものを正直に選んできたのだろうなと想像します。
自らの正しさを疑わないことは、強さである反面、傍若無人に陥りかねないけれど、高木さんはまったく違う。とてもオープンで、常にフラット。優しさと強さとウィットを携えながら、どんな状況でも笑顔でポジティブ。周囲には老若男女さまざまな友人がたくさん。その姿から、自分を信じることをためらわない人生は喜びにあふれていると感じます。年をとるのが難しいと感じている私にとって、高木さんは希望でありお手本なのです」
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長嶋りかこ
1980年生まれ。2014年デザイン会社「village®」設立。今年度のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で、日本館のグラフィックデザインを担当。
トップ画像: カーディガン: BABAGHURI トップ: HANDMADE BY MOTHER スカート: EMIC:ETIC