アイスティーを飲むとき、グラスの中で氷がカランと音を立てる。秋が来る、と思う。ビルとビルの間の遊歩道を風が通り抜けていく。そんなときにも、秋が来る、と思う。カーディガンを羽織る木陰。少しずつ訪れが早まる夕暮れ。月の夜には虫の声。空に溶けた朝の雲。新しい季節はひんやりした何かが運んでくる。そして私の心を逸らせる。いつまでも夏みたいな気分ではいられない。秋がもうそこまで迫っている。チリン、と鳴った風鈴もそろそろ外してしまわなければ。
待ちあわせは午後2時半。新しい恋のための服を選ぶ。少しだけ複雑なスタイルで、少しだけ気むずかしい顔で、少しだけアンバランスな心で、私はクローゼットから着て行く服を選ぶ。淹れたてのコーヒーをひとくちすする。ふと、ついてみたため息に感じる甘い暖かさ。秋は来る。どこへ行くときも遠回り。そんな気分になったとき、秋は私のもとにもやって来る。