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〈クロエ〉inspiring women 女性のアクションが世界を触発する

〈クロエ〉inspiring women 女性のアクションが世界を触発する

気候変動対策にはジェンダーギャップの解消が不可欠だと考えるクロエが注目したのは17世紀のイタリアの女性画家、アルテミジア・ジェンティレスキ。つらい経験を作品にぶつけ、偏見と闘った彼女の姿勢や衣服の表現方法がコレクションに反映されている。


ビショップスリーブのドレスの手元には、メタルのコインクロージャーが象徴的なバッグ〈ペネロペ〉の新作。グレインカーフスキンとスウェードの組み合わせとブレイドレザーのディテールに職人技が光る。

ナッパレザーのミニドレス ¥930,600 *参考価格、バッグ H24×W35×D13cm ¥376,200 (共にクロエ | クロエ カスタマーリレーションズ)

ニットの上下には、ルネサンス建築から着想を得た格子のモチーフがインターシャで編まれている。ベルスリーブやフレアスカートは17世紀風のシルエット。

ウールシルクのセーター ¥229,900、スカート ¥220,000、シューズ ¥115,500(以上クロエ | クロエ カスタマーリレーションズ)

プリーツニットの上下にバッグ〈ペネロペ〉に加わったスモールサイズを持って。スムースカーフスキンが構築的なフォルムを作り上げている。

ウールシルクのタンクトップ ¥100,100、フレアスカート ¥246,400、バングル ¥107,800、リング ¥44,000、バッグ H16×W17×D9cm ¥294,800、シューズ ¥115,500*参考価格(以上クロエ | クロエ カスタマーリレーションズ)

グラフィカルなパターンがあしらわれたプリーツニットのドレス。スクエアネックやトランペットスリーブ、大きく広がるスカートがアルテミジアの作品に描かれている女性たちの姿を彷彿とさせる。

ウールシルクのドレス ¥313,500、ネックレス ¥124,300、シューズ ¥115,500(以上クロエ | クロエ カスタマーリレーションズ)

Chloéを導くガブリエラ・ハースト
自由を愛するゲームチェンジャー

クリエイティブ・ディレクターに就任して3年目。メゾンの歴史を引き継ぎながら“誠実なラグジュアリー(Honest Luxury)”を信条に、ファッションを通してポジティブな選択肢を世界に提示している。パワーウーマンを体現する彼女にインタビュー。


6年ぶりの来日となったガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)。〈クロエ〉加入後に訪れるのは初めてだという。チークキスの挨拶をして、スタッフを温かく銀座店へと迎え入れてくれた。ポートレート撮影ではジョークを交えながら、長い手足を使って次々とユーモラスにポージングを決める。明るくパワフル、茶目っ気あふれるムードメーカーという印象を与える彼女のルーツは、南米ウルグアイにある。牧場を営む家系に生まれ、職人技への理解やエシカルな資源消費の大切さを自然と学んだ。現在は7代目として牧場を継ぎ、自身のブランド〈ガブリエラ ハースト〉と〈クロエ〉を手がけながら、私生活では3児の母でもある。

いざインタビューを開始しようとすると、店頭のディスプレイに触れ始めた。

「VMDの作業をしながら話すのでもいいかしら?マルチタスキングは、女性が得意なことのひとつですよね」

行動家の彼女らしい、スタンディング形式でのインタビューが始まった。

グリルズ専門店にも!?
久しぶりの日本滞在を満喫

「今回一緒に訪れている14歳の娘も、東京に留学したい!と言っているほど、家族でお気に入りの街なんです。昨日は皇居周辺を散歩しましたが、都会だけど自然があって気持ちよかった。普段、自分のための買いものはあまりしないのですが、日本の製品はクォリティが高いから、ショッピングも期待してきました」

高円寺の古着店や楽器店、タトゥーショップ、そしてグリルズ専門店にも足を運んだという。ヒップホップシーンでおなじみの、歯に装着する金のアクセサリーだ。

「オーダーメイドのお店で、歯形をとってきました。アメリカだったら3日程で完成しますが、日本は到着までに3カ月かかると聞いてびっくり。クラフトマンシップを重んじる東京で作ってみたかったんです。いつ使うのかは、まだ決まってないけど(笑)。届くのが待ちきれません」

高揚した笑顔のガブリエラに、〈クロエ〉について尋ねてみると。

「特別な思い入れのあるブランド。初めて購入したバッグも香水もクロエでした。自分自身とメゾンの歴史を見ても、重なる部分が多い。たとえば、私の出身地である南米の服飾史で重要なポンチョやケープは、アーカイヴにもたびたび登場するキーアイテムです。そして創業者はギャビー(・アギョン)で、私の愛称もギャビー。お互いに移民であることにも、運命を感じます」

自らもかつてカスタマーとして感じた、〈クロエ〉の魅力とは?

「女性の自由や表現、喜びへの賛美。不安を煽るようなネガティブな情報があふれる時代において、私たちができる一番の反抗は“楽しむこと”だと思うんです。今日生きていて、誰かと関わったり、当たり前に歩いているという喜びに気づき、感謝する。日常に“JOY”を見出すマインドが、クロエ ウーマンにはあるんです」

ガブリエラを語る上で欠かせないキーワードが、“サステイナビリティ”だ。彼女の指揮のもと、2021年、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に与えられる国際的な認証制度「Bコープ」をラグジュアリーブランドとして初めて取得。

「想像よりも早く結果を出すことができたので、周囲は驚いていましたね。でも、この実績を誇りに思って満足するのではなく、スタンダードになっていくべきだと考えています。だから、クロエの公式サイトでは、サステイナビリティに関する資料やツールを一般公開しているんです。業界が前進するためには、競うのではなく、互いの協力が必要不可欠ですから」

持続可能性への配慮は、プロダクトにももちろん表れている。特に注力したというのが、〈ナマ〉スニーカーだ。サステイナビリティ専門のコンサルティング会社「クアンティス」と協業し、原料の抽出から製造までに排出される温暖化ガスを35%軽減。既存のスニーカーと比べて、製造過程の水の使用量を80%削減した。

「数量の多いアイテムこそ、製造背景を見直す価値があると思ったんです。今店頭に並んでいるこのデニムも、古着をアップサイクルしたもの。そして、栽培過程で大量の水を消費する綿は、できるだけ新しい生地を使わないようにしています。リサイクルコットンを使用したり、水の消費量が少ないリネンを積極的に採用しています」

そんなクリエイションの最高峰にあるのが、職人の手仕事を讃えるプロジェクトである“クロエ クラフト”。ラグジュアリーファッションが過度に工業化されている状況に対して、上質な素材を使用し、ハンドクラフトによる製品の数を増やす試みだ。

ポジティブな発想の転換で
解決策を探っていく革命家

3月に発表した2023年秋冬コレクションでは、17世紀イタリアで活躍した画家、アルテミジア・ジェンティレスキをミューズに掲げた。自らの運命を切り拓く主人公として女性を描いた数少ないアーティストの一人であり、美術の世界で評価され、“女性ができることの限界”に対する認識を覆した存在だ。

「美術の才能があったのはもちろん、辣腕家だと思います。画家といえば男性ばかりだった時代に、メディチ家をはじめパトロンを味方につけて、クレバーに生き抜いた。“閣下、女性の力をお見せしましょう”という彼女の言葉が、大好きなんです」

アルテミジアを手がかりに、ジェンダーの不平等と環境問題の関係性に着目した今季は、環境保全の先進的アプローチ(22年秋冬)、核融合エネルギーの可能性(23年春夏)に続く、気候変動への解決策を探るメゾンの取り組みの第3章にあたる。ユニークなのは、これらについてガブリエラが語る際に、一般的に使われる“気候危機(Climate Crisis)”ではなく、“気候成功(Climate Success)”と独自のフレーズを用いていること。そこには物事をユニークに思考し実践するフィロソフィーがあった。

「何か不安があるとき、正反対の状態を紙に書き出してみるんです。人間は誰しもがクリエイター。実際に書かれた文字を目にしているうちに、それが本当に起こると信じて、実現させる方向へと動き始めるんです。そうやって自ら、脳をプログラミングしていく。これは問題解決法のひとつで、どんなことにも応用できるんですよ」

明るい未来を想像しながら、現実に真摯に向き合い、今を楽しむ。業界に新しい風を吹き込むゲームチェンジャーが、今後見たい“変化”は何なのだろうか?

「クリーンエネルギーが一刻も早く主流になることを願っています。それこそが、人間が生き延びるための鍵だと思うから。よく耳にする“SAVE THE PLANET”というスローガンは、正確ではないなと思うんです。なぜなら、地球は私たち人間がいなくても平気で存在し続けられるから。むしろその方が環境や動物にとっては楽園になるんじゃないでしょうか。でも、人間にはやはり、私たちにしかできない、スペシャルな何かがある。生き残る価値のある存在だと信じて、そのために私も自分の立場でできることはすべてやっていきたいんです」

ガブリエラ・ハースト

1976年、ウルグアイ出身。20代にパリでモデルとして活動後、ニューヨークへ移住し舞台芸術を学ぶ。服飾のデザインは独学で習得し、2015年に〈ガブリエラ ハースト〉を設立。20年12月、〈クロエ〉のクリエイティブ・ディレクターに就任。21年には、第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)に参加。

問い合わせ

クロエ カスタマーリレーションズ ☎03-4335-1750

公式サイト

【FASHION】Photo: Reiko Toyama Styling: Yuriko E Hair: NORI TAKABAYASHI (YARD) Make-up: ANNA (S-14) Model: Thialda Text&Edit: Itoi Kuriyama
【INTERVIEW】Photo: Zoë Ghertner Text: Mami Osugi

GINZA2023年6月号掲載

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