28 Jan 2023
自由なDENIM♡LOVERS 吉田恵理子さん

貴重なヴィンテージに自身の“歴史”を日々刻み込む、生粋のデニムラバー。色落ち具合はもちろん、傷、擦れ、ペイントなどのダメージはすべて思い出や愛情の証なのだ。
吉田恵理子/ロク ディレクター
「普遍的だからこそ、飽きない。年齢に応じて装いをアップデートできるのもいいところ」
10代に買ったデニムを今も愛用する吉田恵理子さん。出合いは高校生の頃だという。
「学校帰りに原宿や渋谷の古着店に寄り道するのが日課でした。渋カジブーム全盛だったので、お目当てはジーンズ。まだヴィンテージの価格は高騰していなかったので、格安ラックにレアものが放り込まれていることもあって、そこまでお金を欠けずに収集できました。手放すことなく、20年以上、ワードローブの重要なピースになっています」
今は、ハイファッションを合わせる機会が増えているとか。
「尖った服をなじませるのって意外と難しい。そんなときは、デニムの出番。自分らしく調和させる役割を果たしてくれます」
視点も独自で、ヒネリが効いたアイテムにも積極的に触手をのばす。
「一点ものとよく言いますが、中でも個人が愛でていた形跡のある〝名も無きアーカイヴ〟に惹かれます。今日重ねてはいた〈501〉をカットオフしたショーツは、私にはルーズですが、こうやってハイウエストの〈701〉の上からはくと、まったく違う印象になる。どう着こなすかは自分次第だと思うんです。創造力を掻き立てられるのも、〝ひと癖〟があるからこそ。でも、挑戦的な着こなしをしても、オーセンティックという筋が通っているから、奇抜になり過ぎない。こういう楽しみ方は、女性の特権なのかもしれません」
アメリカ出張で訪れた、ヴィンテージの名店で偶然譲ってもらった70年代のリーのジーンズは、吉田さん思い出の品。絵描きか、塗装職人か先人のダメージがよい味わいに
左膝にリペアした痕跡のある、60年代のリーバイス®のジーンズ〈505〉。「これこそ、“名も無きアーカイヴ”です」はいていた人の癖を考えるのもロマン
カウボーイ用に作られたジャケット〈11MJZ〉。デニムでは珍しい、肩まわりのアクションプリーツがアクセントに。ラングラーを代表する、マスターピース
吉田恵理子 よしだ・えりこ
東京都生まれ。国内外のコレクションを巡り、イットブランドを次々に掘り当てる審美眼の持ち主。ドレス、カジュアル、ヴィンテージをバイイング。
Photo: Shinsaku Yasujima Text: Keiichiro Miyata
GINZA2022年12月号掲載