〈ディオール〉のパリ・モンテーニュ通り30番地のブティックが、ついにリニューアルオープン。ギャラリーも併設され、新たなモードの聖地となっている。
〈ディオール〉始まりの地パリに新装ブティック。メゾンの歴史をたどるギャラリーも
パリ・シャンゼリゼからほど近い、モンテーニュ通り。ここにブティックを開きたいと強く願ったのは、ムッシュ ディオールその人だった。そうして、ナポレオン1世の子・ヴァレフスキ伯爵が1865年に建てた邸宅が、1947年、勃興するモードの揺りかごに生まれ変わった。
ほどなくして、「ニュールック」や香水「ミス ディオール」など、今に通じる美のアーキタイプがここから産み落とされた。30 モンテーニュのブティックはまさに、女性の新たな夢を描く「夢の王国」だったのだ。それから75年。約2年の改修期間を経て、王国は進化形となって戻ってきた。
歴史あるファサードが修復され、建築は「パリらしさ」で溢れている。内装は現代的でありながら、職人技が光り、〈ディオール〉の原点を感じさせるデザインに。プレタポルテやレザーグッズ、ビューティやメゾンコレクションの空間が、それぞれ開放的かつ有機的に連なっていく。さらにはカフェやレストラン、そして庭園も設けられ、まさに五感でエレガンスを堪能できる。
そしてこの新しい王国は、夢を売るだけでなく、「夢の秘密」をも見せてくれる。オートクチュール文化とメゾンの歴史を展示する「ラ ギャラリー ディオール」だ。
はっとするようなカラフルなインスタレーションに囲まれているのが、ギャラリーの入り口。コレクションピースをミニチュアにして、色合いごとに並べたものだ。色彩の広がりが螺旋階段のカーブと重なり、ファッションの躍動を表現しているようにも見えてくる。
歴代デザイナーが引き継いできたのはどんなエッセンスなのか。ムッシュが描いたフェミニニティはどう変わり、また変わらずにきたか。美しいドレスの眼福に浸りながら、モードについて思考できる場所だ。
各階には、ムッシュのオフィスやキャットウォーク前の支度部屋「キャビン」を再現したものなど、30 モンテーニュならではのリアリティに満ちた展示。そこに、あくまでモダンで、ときに挑戦的ですらあるセノグラフ(空間演出)が重なる。ギャラリーといっても、ここには美術館のようにいくつもの部屋が作られ、それぞれ違う方法で美しいストーリーを紡いでいる。訪れた人がみな、お気に入りの部屋を見つけられるように。
メゾンの原点である30 モンテーニュは、まるで光を受けたプリズムのように、〈ディオール〉の多彩な世界を映し出す。さらに覗き込むと見えてくるのは、21世紀の新しい美と女性像だろう。