東京で1番オシャレな親子 “eriとお母さんのワードローブの物語”

東京で1番オシャレな親子 “eriとお母さんのワードローブの物語”

東京の古着カルチャーを牽引した〈DEPT〉の創業者である両親の元に生まれ、その家業を継いだeri。「私は洋服の仲介人。人と時を古着でつなぐ」。これは、そう語る彼女と母のワードローブの物語。


母から受け継いだ洋服をおしゃれに着ている女性を探す。東京で、自分らしく、今の気分で楽しんでいる人を見つけてみよう。そんなふうにスタートしたこの企画、考えれば考えるほど、その女性とはeriしかいなかった。NY生まれ、東京育ち。1980年代から東京カルチャーの中心を担う存在であった古着屋〈DEPT〉のオーナーを両親に持ち、生まれた時から、ハイセンスな古着が当たり前のようにそこかしこにある。それがeriにとって当たり前の環境なのだから、誰も敵うはずがない。「母がよく言うんです。『この洋服は私が手に入れた時点ですでにヴィンテージなんだから、あなたが着るころにはヴィンテージ感は2倍増しだ』って。たとえば、過去に母が見つけて選んだうえに、自分で丁寧にメンテナンスを重ねて、きれいに保ったまま40年経っている1枚のニットを、娘の私が今、自分のワードローブに合わせて、また着る。それって単純にすごいなと思う。私はヴィンテージと呼ばれるものも、その辺に落ちているようなTシャツも、その両方を好きでいられるのが自分のいいところと考えています。でも今回、あらためて母親の持っている本当に古いものを見ると、やっぱりいいな、特別なものだなと感じましたね」

dept mother eri
民族衣装は普段からよく着せられていた。「旅先で布を巻かれていると完全に現地の子ですね(笑)」

eriの母、知恵子さんの洋服に対する熱量にも驚かされた。娘がお気に入りのアイテムを自分の衣装部屋から1枚、また1枚と運び出すたび、「これはサンフランシスコに住んでいた時にマーケットで見つけたもの」とか、「eriが1歳の時にパーティに着て行った。あれは確か〝エスニックナイト〟だった」「新聞広告で見つけて、個人宅まで伺って買い付けた」とそのアイテムにまつわるエピソードを明確に記憶している。洋服に対する愛情が桁外れで、どうでもいいものなど1枚もない。聞けば、過去に自分の結婚式に着た古着の白いワンピースをはじめ、かなり手放してしまったものがあり、それがどんなアイテムだったかをすべて覚えていて、今でも激しく後悔しているとか。だから、これから先は絶対に1枚たりとも捨てることなく、「最終的にはすべてをeriに譲ってから死んでいくつもり」なのだそう。

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〈DEPT〉の仮装パーティ。1歳10カ月のeriを膝で抱く知恵子さん、隣には父の誠治さん。

そうやって知恵子さんが大切に、大切に所有してきた洋服やジュエリーを2017年の今に、eriはどう着るのだろうか。「クラシックになりすぎないよう、シェイプや丈感を変えたり、配色のバランスに気をつけたりします。あとは街へ出たときに、人から〝古着大好き人間〟みたいに見えるのは嫌なので、全身を古着でかためない。特に靴とバッグは今、売られているものを合わせます。〈セリーヌ〉〈メゾン マルジェラ〉が多いかな。そうすることでやっぱり、今の空気を吹き込めるし、古着だけじゃなく、洋服という存在が好きなんだということが大事だと思っています」 そんな考えを軸に、母の古着のワンピースの上からボリュームたっぷりのマキシスカートを重ねたり、ハワイアンプリントのパンツにオーバーサイズのチェックジャケットを羽織ったりする。手にはたくさんのリングやブレスレットをつけ、足元はあくまでモダンな靴を合わせる。するとそれは強烈なオリジナリティを放ちながらも、確かに今の東京の街に映える、eriだけのスタイルになる。「想像を絶する着こなしだよね(笑)。私には絶対思いつかない、eriらしいアレンジよね」と若干苦笑いをしながらも、とてもうれしそうな知恵子さんの表情も印象的だった。

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94年、11歳。プーケットにて。古着のアラビア文字のコットンシャツにバンダナ柄の帽子。

娘が母から洋服を受け継ぐ。ここで終わらないところが、この2人の物語が稀有たるゆえんだ。2年前、eriは両親の築いた古着屋〈DEPT〉も継ぐ。両親とはまったく異なるやり方で、今の時代にあったバイイングで、ファンをおおいに楽しませている。「〈DEPT〉を継ぐんだと自然に思って生きてきました。トレンドに関してはあえて情報を入れず、私が今、いいと思うものを選んでいます。時代の背景がありながら、クスって笑っちゃうようなものとか、ヴィンテージとして価値がなくても、かわいい、面白いと感じたものは買っちゃいますね。今って、ヴィンテージと呼ばれるだけで格好がついてしまう時代だから、私はその先に行きたい。何かを欲しいと思った時の熱量ってその服の寿命を左右する重要なものだと思っているので、店頭で出会った時に『私のものだ』と強く感じてもらいたい。なので〈DEPT〉ではメンテナンスにとても力を入れていて、リサイズ、丈詰め、クリーニング。色を戻したり、シミを抜いたり……。できることはすべてしてから店頭に出しています」知恵子さんはそんなeriの〈DEPT〉で服を選ぶそう。

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とてもお気に入りのメキシカンドレスを、母の誕生日に着て。

「あの子がセレクトしているものは他の古着屋にはないし、切り口が新しいので今の私には選べない。今日、はいてる水玉のパンツもさっきつけていたピアスもeriがセレクトした服やアクセの中からピックしたんです。私、ずっと古着が大好きだから」と笑う。「私は古着を通じて人の物語をつなぐ仲介人のようなものです。母の洋服を私が着て継ぐように、1人の人が着て終わっていたかもしれないものを買い付けて、それがせめて2人、3人と、なるべく多くの人へ広がってほしい。それを〈DEPT〉でやりきりたいと思っています」

eri dept mother
ピンクのプリントジャケット
母、知恵子さんが新聞広告で見つけ、セントルイスにある個人宅にお邪魔して買ったというエピソードを持つ、50sのグラフィカルなプリントジャケットが主役。「今は、上からビスチェを重ねてコンパクトに着るのがいいと思う」。同じくピンクのサロペットは70sの古着。靴とバッグは現行品、というのがeriのポリシー。合わせた靴は〈MM6〉。

 

東京で1番オシャレな親子の稀有なストーリー
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Photo: Naoko Kumagai   Text: Kaori Watanabe (FW)

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