念願だった自分の店をようやく開いた人、
長い間、粛々と同じ場所で商いを続ける人、
いくつもの店を切り盛りする気配り上手な人。
働く人の想いや店に集う人の個性が交じり合い、あたたかな人となりを感じる店が、ここ東京にはいくつもある。不器用でもひたむきにモノと向き合い続けるその姿にすっかり魅せられた駆け出しエディターYが、西へ東へと大奔走! 愛すべき「店と人」を応援する新連載のはじまりです。
念願だった自分の店をようやく開いた人、
長い間、粛々と同じ場所で商いを続ける人、
いくつもの店を切り盛りする気配り上手な人。
働く人の想いや店に集う人の個性が交じり合い、あたたかな人となりを感じる店が、ここ東京にはいくつもある。不器用でもひたむきにモノと向き合い続けるその姿にすっかり魅せられた駆け出しエディターYが、西へ東へと大奔走! 愛すべき「店と人」を応援する新連載のはじまりです。
vol.1
ヴィンテージショップ「FUROL(フロル)」
主宰 鈴木里美さん
月始めの土日に、青山・国連大学前で開催されるヴィンテージ・マーケット『RAW TOKYO』。なかでも、多くの女性客で賑わいをみせるショップ〈FUROL(フロル)〉は、『RAW TOKYO』の立ち上げを機に店づくりを始めたばかりだという鈴木里美さんの店。10月からは水曜日の夜限定で『ナイトマーケット@下北沢』にも参加し、感度の高い女子の間では周知の存在へと成長している。
現在、少しずつ活動の場を広げながら実店舗オープンに向けてもっか準備中だ。彼女がヴィンテージに魅了された理由や、店に対する率直な想いを伺った。
11年間働いたヴィンテージショップを辞め、改めてスタート地点に立つ
「環境から受ける影響は強く、とても多感な20代を過ごしました。昨年の7月に体調不良で退社しましたが、しばらく休んでフラットな気持ちになったときに『人に会いたい、やはり古着から離れることができない』と強く思ったのが、この活動を始めたシンプルな理由です。なんの後ろ盾もなく、自分だけでどこまで出来るんだろう・・・と不安になる時も多いですが、自分が古着屋をやることに妙な使命感を感じるんです。まだまだ勉強する事はたくさんありますが、20代を大好きな仕事に捧げ、がむしゃらにやってきた経験があるからこそ、自分にできることがあると思ったんです」
RAW TOKYO
「数十店舗の古着屋が参加する、日本には今までなかったタイプの開けたイベントです。この日の為にじっくり買い付けからメンテナンスまで、なるべく計画的に動いて毎月の出会いを楽しみにしています。また出店型ではできるだけ奥行きを感じてもらえるよう自宅からに植物など好きなものをそのまま運び出し、遊びのある空間になるよう心がけています」
次回開催予定:12月3・4日 10時00分〜16時00分
Farmer's Market @ UNU(東京都渋谷区神宮前5-53-70)
instagram:@rawtokyo_jp
下北沢ナイトマーケット
「参加は不定期ですが、土日以外の出店の要望を受けて参加しています。徐々に多方から出店のお誘いをいただいているのですが、クオリティを保つ事と、自分の出来る範囲でやることをモットーに続けています」
毎週水曜日開催 17時00分〜12時00分
@ 下北沢ケージ(東京都世田谷区北沢2-6-2)
好きこそものの上手なれ
「もの心ついた時から異常に洋服が好きです(笑)。二歳上の姉と一緒に、小学生の頃から原宿の竹下通りの古着屋で買い物をしていました。学生時代は古着を中心にデザイナーズも着ていましたが、”ヴィンテージ”を知り、物凄く未知の魅力を感じたんです。『これはなんだろう、もっと知りたい』と思ったのがキッカケで、古着屋を巡りまくり、現在に至ります。その気持ちは今も変わらず、いつまでも悔しいくらいの発見があるのが私にとってのヴィンテージなんです」
東京でいま、新たにヴィンテージショップをやるということ
「ヴィンテージはいま、何年ぶりかの盛り上がりを見せています。SNSの普及などでヴィンテージが身近になったこと、私も含め、様々な営業形態が可能になったことはとても恵まれた時代だと思います。だからこそ、実店舗の価値や強みも感じていて、出店型であっても発信するものにこだわりたいと思っています。例えば、(insagramの)1枚の写真にも、伝えたいことを詰め込みたい。
〈FUROL〉は私がやりたいことが出来る、とても個人的なショップです。影響を受けたものが大きい分、焼き増しや二番煎じにならないように好きなものを突き詰めていく。この作業は、この仕事を選んだら一生続くもの。大変で、楽しいです。自分だけの感覚を見出すには、自己を解放して自分を知っていくしかないと思うんです」
CEMENT by JUNMIKAMI にin shopとして参加。
現在、目白のセレクトショップ『CEMENT』と〈JUN MIKAMI〉が合同企画するポップアップストアが『ラフォーレ原宿』内にて開催中だ。
「プライベートでも仲が良い〈JUN MIKAMI〉の純ちゃんは、表現の仕方は違えど、昔からシンパシーを感じているクリエイターです。独特のファッション感覚だけでなく、確かなテクニックを持った職人的な真面目さのある彼女に刺激を受けています。
今回のイベントでは〈JUN MIKAMI〉がセレクトに関わった様々なアイテムが並ぶポップアップストアに、さらにポップアップストアとして参加しています。久しぶりに屋内なのでとても嬉しいです(笑)。さらに店頭では、〈JUN MIKAMI〉のアイテムと〈FUROL〉のヴィンテージを組み合わせたスタイリング提案も行いました*1。普段から『私だったらどう着るか』という話をする事が多く、私たち自身が異なる要素を持っているからこそ、それぞれの可能性が広がったような気がします。今回のようなパーソナルな提案は、個人でやる強み、面白さでもありますね」
*1〈JUN MIKAMI〉のオリジナルアイテムは現在、完売しています。
CEMENT by JUN MIKAMI
11月19日(土)〜27日(日)
ラフォーレ原宿2階 CONTAINERスペース
「昔からお客様にはたくさんの刺激をもらいました。人と会って、大好きな服の話をして、たわいもない話をして、時に叱咤激励をされて、時間を共有する。これからも続けられたら、そんなに幸せな事はないなと思います。
このヴィンテージブームが落ち着いても、ブームとは違うところで繋がれたら。なるべく多くの方に古着の魅力を伝えられるようになっていたいです。」
鈴木 里美
Satomi Suzuki
文化服装学院スタイリスト科卒業後、都内のヴィンテージショップに入社。ショップマネージャーとしてほぼ毎日店頭に立ち、経験を積む。2016年5月より〈FUROL〉を主宰。独自の視点で古着の面白さを発信している。
instagram:@furolvintage
エディター 山本香織
7年ほど前、古着屋で購入した80年代後期の〈ジャン・ポール・ゴルチエ〉の袴パンツは、深紅のシルク地に闘牛の絵が描かれたなかなかの個性派アイテム。着る機会がないので先日、思いきってフリマに出してみたものの、お客さんが手に取る度にそわそわ…。結局、「非売品です。」と言い放ち、持ち帰りました。いつまで経っても断捨離なんてできません…!
Text:Kaori Yamamoto