ジョージア、ファッションの新発信地、そしてその魅力 02:〈LTFR〉デザイナーのインタビュー

ジョージア、ファッションの新発信地、そしてその魅力 02:〈LTFR〉デザイナーのインタビュー

〈ヴェトモン〉のデザイナー、また〈バレンシアガ〉のアーティスティックディレクターであるデムナ・ヴァザリアの生まれ育った地としてファッション関係者から注目を集めるジョージア。首都トリビシで5月に行われたメルセデスベンツ•ファッション•ウィークに参加したスタイリスト吉村結子さんがその魅力について、全3回に分けてレポートしてくれます。

第2回目の今回は吉村さんがスタイリストとして、個人的に一番気になったブランド〈LTFR(エルティエフアール)〉について。あまりにも心を動かされてショーの後、バックステージに駆け込みアポイントを取ったという(すごい行動力(!))、デザイナーのマックスさんのインタビュー。ショーはもちろんのこと、別日に改めて訪れた彼のアトリエからその様子をお届けします。実は彼、何やら日本からもインスピレーションを得ているようです。


アイテムは一見スタンダードなのに世界観はウルトラオリジナル。
座っていられない!「すごいナンバーワンに出逢っちゃった!」

ファッションウィーク初日、〈LTFR(エルティエフアール)〉の会場は、廊下に並んだヴィンテージの椅子や床に自由に座って見るというリラックスしたムード。小さなボリュームで流れている音楽の中、幼いお洒落な男の子がランウェイを通り過ぎた時には既にショーがさりげなくスタートしていて(これがファーストルック?)それに気がついた時少し慌ててしまいました。

とにかく次々と出てくるルックが、古着とリメイクがベースになっているのですが、そのスタイリングのアプローチが最高にユニークだったから。ラフなスタイルなのにとにかくチャーミングな工夫とアイデアによってそのスタイルがとても洗練されているように感じました。あまりに素敵で座っていられない衝動で立ち上がった時、モデルが出入りするドア付近でビートに乗って楽しそうにモデルの最終チェックをしている男性と目が合ったんです。そう、彼がこのブランドのデザイナー、Maxime Machaidze((マキシム・マチャイゼ) 以後マックス)でした。ルックも素敵だけど彼もタダモノじゃない!

ショーが終わってから、大興奮してバックステージにすぐに飛び込みました。そこはモデルを務めた彼の友人達が、ランウェイで着ていた服をそれぞれラックに戻しながら寛いでいるフレンドリーな雰囲気の基地だったのです。大きな窓から自然光が入るここは、実はマックスのアトリエだと知り、もっと話が聞きたくて滞在中、別の日に訪れる約束をしました。

FUNKはZEN!?
アトリエで話を聞いてきました。

改めて通された広いアトリエには、ショーのスタイリングで使われたアクセサリーや服をかけたラックと共にマジックで描かれたスケッチがコートを飾っていたり、おもちゃがアクセサリーに変身を遂げてたり。色々なものがあるのに、それらが置かれた空間にはクリエイションする愉しさが溢れていたし、それぞれは点在しているのにレイアウトはパーフェクトで心地良さを生み出している、そんな風に感じたのです。

彼にとって全てのクリエイションや生活の総称が〈LTFR(LET THE FUNK RIDE)〉というプロジェクト(でありコレクション)。そこには自らもラップするミュージックレーベルの〈KAYAKATA〉、ファッションブランドの〈SADAAWHERE?〉などが内包されているとのこと。FUNKはZENだと理解しているんだ、と歌うようなリズムで話すマックス。この空間に集う全ての要素、それぞれの組み合わせからインスピレーションを得てそれが新しいアイデアを結び、彼のいろんな活動につながっているんだな、と理解しました。

私はスタイリングを仕事としています。アイテム同士をインスピレーションで繋ぎながら連想で生まれてくるイメージに喜びとファンタジーを感じます。ムードを眼に見えるものにすることが楽しいのです。一見異なる要素をつなげて何かを生み出していく、という彼の根源にあるスタイルに共感しながら、ショーの時に感じた興奮の数々が自分の中で紐解かれていきました。

そういえば繋いだり、結びつくという化学反応はアトリエ滞在中にもありました。

「トランジスタラジオって書いてある!」と置かれたアイロン台のカタカナを読んだ時、「やっと意味が分かった!」とマックス。「同じロゴを見つけたんだ」とスウェットも取り出してきてくれました。それが音楽のジャンルであるワードと知り、最高だ!と喜ぶ姿がとてもチャーミング。読めなくてもデザインされた文字から感じとるフィーリングがあることはきっと世界共通なんだなとも思いました。

今回のショーのテーマを彼に聞いたところ、自分が見たり聞いたりしてきたストーリーすべて、という答えが返ってきました。それぞれのストーリーにはキャラクターがいて今回発表した各ルックは彼なりにそして現代的にアレンジしてそれらを表現しているとのこと。その輝くオリジナリティ溢れるセンスを味わいたくて「私にもマックスのスタイルを着せて!」とリクエストしたら、着ていた服に重ねてコーディネートしてもらうことができました。マックスワールドのキャラクターを味わえて最高に嬉しかった!

帰国後マックスに追加取材!

Q1デザインのインスピレーション源とは?

周りの全てのものかな。僕が思うにデザインは様々な要素を集めてきて、それらを結合、そしてそれを再び形成していくプロセスだと思うんだ。

実際、僕は着る服や使用しているもの、家具を全て揃え、それらを一からリフォームしたりした。この場所(アトリエがある建物)にはスケートパークを作ったりしたよ。

例えば暮らしの中で、服を脱いで椅子にかける時、もしくは並んだ照明の下に置いて彫刻を見るように眺める時、視点を変えることでランダムに、そして同時にいくつものインスピレーションを得ることができるよ。

Q2服と音楽の関係性は?

服と音楽は同等のものだと捉えて活動しているよ。話は飛ぶけど日本の安土桃山時代から江戸時代に活躍した沢庵宗彭(たくあんそうほう)って知っているかな。彼は茶の湯、書道に親しみ、歌人であり禅僧とマルチに活動した人なんだけど、多くの活動をしているという意味で僕は彼と自分を重ねるんだ。

あと音楽を作る時にはぴったりあった服を着るのがマストかな。

Q3. 日本のカルチャーで好きなものってある?

もちろん。日本のカルチャーは僕に大きな影響を与えてきているんだ。武士道、侘び寂び、自動販売機、神道。僕の精神的な成長には宮崎駿のアニメーションがとても重要な役割を果たしてきたよ。そして久石譲と坂本龍一は僕の人生のサウンドトラックとして流れ続けているんだ。
着物、書道、合気道、刀、国旗、ヤクザ、空手、文字、それらを独自に研究していて僕の世界を作っている。「from followers the function(形態は機能に従う)」というフレーズが僕にとって日本を表しているなと思う。

Q4. 一番最初に作った洋服は?

僕が最初につくった洋服はTシャツだったかな。子供の頃、ステンシルにスプレーしたTシャツをファンシーなカフェで売ったことがあるよ。最初のプリントデザインは頭が電球、キャンディラップが蝶ネクタイ、懐中電灯が身体というものだったよ。

Q5. ジョージアの好きな場所や理由を教えて?

素敵な場所が沢山あるよ。まず、ここの隣の植物園が好き。あとトビリシ(首都)は最高におもしろいと思う。文化が混じり合って混沌としているところが好きだな。例えばソビエトの塔とイタリアの庭、そして今作られているDIY建築物が一緒にあるところ。そこに森や海辺といった自然も小さなコンパクトな空間の中に収まっていていつも刺激を受けているよ。

KayaKata new album 発売中


「prayerloops. Feature from Tokyo Artists coppe」
日本のアーティストも参加しているニューアルバムが発売中

吉村結子 よしむら・ゆいこ

スタイリスト。ファッション誌、広告、映像、コラボレーション企画など活動は多岐に渡る。ファッション誌が持つファンタジー、外国映画の素敵なシチュエーション、幼少期から観たそれらのディテールが好きでスタイリストに。おしゃれとスタイリングはドラマティックに!が信条。
旅が大好き。「新しい国に行き続ける」をライフワークにこれまで50ケ国へ。

9月から開催される岡山国際現代美術展に出品されるファビアン・ジロー&ラファエル・シボーニの新作映像作品にスタイリングで参加。ヒステリックグラマーでおなじみの「yokodoll」25周年記念の書籍プロジェクトの撮影がこれから楽しみです。映画『ランブルフィッシュ』鑑賞は夏休みの定番。毎年この時期に観ることを恒例にして20年以上。年齢とともに感情移入する対象が代わるのも楽しいです。

 

Text: Yuiko Yoshimura

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