革製品に惹かれる人間の気持ちっていうのは、どういうところから来るのだろう?って度々思うんですよね。
世の中には人工的に作られたファブリックが無数にあり、こと機能の面においてはあらゆる自然物を凌駕する能力を有していたりします。それでもなお革製品には、抗いがたい魅力ありますよね。
香港のカバン職人と話していた時、その職人は革の魅力を「自分の皮膚を纏っている皮があるでしょ。それとこのカバンはいっしょ。同じものだから魅力がある」と言ってました。
確かに、それはあるかも。その職人は続けて「汚れや傷痕があったとしても、それは皮膚だからね。おまえのカラダにも傷があるだろ? 同じ同じ」と言ってたんですけど、それは僕が買ったカバンについている傷についての言い訳にすぎなかったと思うのだけど。
エトロの秋冬の新作は、美しく丁寧に加工された革に、刺繍的なアプローチでステッチが施されています。それによってエトロおなじみのペイズリーモチーフが浮き上がり、豊かな陰影を浮かび上がらせています。
なめらかな皮革が糸によって美しくひきつり、さまざまな表情を見せる。これは皮革ならではの表現ですよね。
職人がいかに正確に仕事をしようとも、もともとの皮革のポテンシャルがひとつひとつ違う表情を表します。さらに使い方によって違った表情を得ていく。人生が刻んでいく皺のようです。