〈コリエ・ド・シアン〉というエルメスの人気バングルの金具モチーフを使った、美しいサンダルです。
上質な素材でできたファッションを目にすると、その瞬間、まだ触れてもいないのにこちらの体に素材の触感が伝わる時がありますよね。
トップブランドの製品は、写真で見るだけで触覚に訴えかけてくることが多いように思います。
これはなめらかなんだろうな、ひんやりするんだろう、逆にザラりとした感じが気持ちいいんだろう。いろんなことを思うわけです。
手のひら、手の甲、頬や、脚など、いろいろな部分に訴えかけてきます。
中でもサンダルという存在は、指先に強く訴えかけてくるような気がします。何故か。おそらくは、サンダルというのは面ではなく線で構成されているからでしょうね。つまり、サンダルをカタチ作っているその優美なラインは、私たちに、この指でなぞりたいという気持ちを促すのでしょう。
美術館に赴いて、ペインティングを間近に見ると、その絵筆の動きが見るものの体の中で再生されますよね。それは絵画を愛でる大きな楽しみです。
質感のよいサンダルを目にした人の体の中でも同じような喜びが生じているような気がするんです。
星空に現れては消える流星を見ている時にも、同じような気持ちになります。ラインを見ることは、それを描き、なぞる喜びなんでしょう。