会員向けメールマガジン『GINZA iD LETTER』で連載中の「プロフェッサー栗山愛以をつくるもの」。GINZAでお馴染みのファッションエディター・栗山さんが語る愛用品の数々。これまで配信された6カ月分のアイテムをお届けします!
編みトップ
GINZAでは「服装が怖い」と言われていますが、パンキッシュな要素に目がないことがその一因となっているんでしょうか。スタッズやダメージ加工はもちろん、ネットやメッシュ素材も大好物です。
2022年春夏の〈ラフ・シモンズ〉にはゴスやヘビメタっぽい空気が漂っていてすっかり心奪われました。そこで手に入れたのがネットのショルダーピースです。身頃は肩だけが縫い付けられていて、クロップド丈。首周りが寂しい時にアクセサリー感覚で使えます。
「魔女」がテーマだった2004-05年秋冬の〈コム デ ギャルソン〉。たくさんのホックが付いたメッシュトップに、取り外し可能なおどろおどろしい飾りが付いています。
おそらく同時期ごろに買った〈MM6 メゾン マルタン マルジェラ〉をはじめ、シンプルなフォルムのネット素材のトップは他にもいくつか持っています。
手持ちのなんてことないアイテムも、重ねるだけで好みのムードに導ける。装飾として大変重宝しています。
引っかけるアクセサリー
ところでパンクスといえば、いろんなところに果敢にピアスを開けているイメージ。が、私は痛みにめっぽう弱く、片耳一個ずつが精一杯でした。そこで役立つのが引っかけるだけでそれっぽく見えるアクセサリーです。
一番最近買ったのは〈グッチ〉のノーズクリップ。下のリングを鼻の穴に入れ、上の二つの球で鼻根を挟みます。マスクからちらっとのぞかせるだけでもけっこうインパクトがあり、装着時にすごいところに穴を開けたもんだと驚かれました。
2022年の新作で、〈ディヘラ〉のイヤーカフです。ユーモア溢れるアイデアが面白いパリ発のブランドなのですが、こちらのようにちょっとしたパンク精神も感じられるので思わず手に取ってしまいます。
最後は〈アレキサンダー マックイーン〉。一番上と下に付いているイヤリングのキャッチで固定する仕組みで、7個もピアスホールが開いているように見せることができます。
痛みを伴わずにハードな雰囲気を醸し出せる。「おしゃれは我慢」が座右の銘ではありますが、ピアスを開ける恐怖には勝てない私にぴったりなのです。
黒いサンダル
暑い日には素足でOKのサンダルが重宝しますが、夏に活躍したのはこの3足です。
ひときわボリューム満点なこちらは2022年サマーの〈バレンシアガ〉×〈クロックス〉。その存在感と好みのゴス風味にすっかり心奪われ、迷わず購入しました。
2005年春夏の〈ジュンヤ ワタナベ〉です。麻をメイン素材としたナチュラルなムードが漂うコレクションでしたが、それと相反するようなファスナーやスナップボタンを大胆に装飾として用いていました。サンダルも大ぶりのボタンに覆い尽くされています。
〈メゾン マルジェラ〉は細いアンクルストラップとかかと部分がシルバー。「タビ」ブーツはデザインが好きなのはもちろん歩きやすいこともあっていくつか持っていますが、「タビ」を感じさせつつ抜けもあるこちらは真夏にぴったりです。
本来サンダルは涼を呼ぶ履きものだった気がしますが、こうして並べてみると真っ黒で、さらにたくさんの金具付き。季節関係なくヘビーさを求めてしまう性分なのでした。
炎モチーフ
マッチを擦るのもびくびくしてしまうタイプで、キャンプには小学校以来行っていません。が、炎のヴィジュアルには心惹かれてしまうのです。
2022年春夏の〈ヴェトモン〉にはファイヤープリントシリーズがありました。インパクト大のシャツとパンツのセットアップが気になってはいたもののいつの間にか売り切れたりしていて、結局のところミニのタイトスカートをセレクト。
そういえば炎モチーフを初めて手に取ったのは10年前のことでした。リアーナがファイヤーTシャツに黒のサイハイブーツを合わせ、レザーのジャケットを羽織ったスナップをどこかで見て、彼女のファンというわけではなかったのに即〈メゾン マルタン マルジェラ〉に買いに走ったのです。それほど炎プリントが私の心をわしづかみにしたのでしょう。ラフな洗濯のせいで、炎の勢いがかなり弱まってしまっているのが残念でなりませんが。
〈ケイティ〉でタイツを見つけた時も迷わず購入した次第です。他の2つに比べてイラスト感が強く、炎と言ってもちょっとかわいらしさがあるのがブランドらしいような。
真夏だろうが服も灼熱。クローゼットに涼しげなアイテムがなかなか見つからないのでした。
ブラックレザー
2022-23年秋冬のキーカラーは黒、注目素材はレザーです!私のクローゼットには、新調するまでもなくすでにいくつか並んでいます。
〈マリーン・セル〉のアップサイクルレザーのドレス。肩パッドが入っていて袖にボリュームがあり、シルエットもパワフルなので2023年も大いに活躍するはず。
フェイクレザーのミニスカートは〈ミュウミュウ〉です。ハードな素材がフレア形やキラキラの装飾といった「カワイイ」要素を中和していて、〈ミュウミュウ〉が牽引するガーリームーブメントに関心を持っていても年齢やキャラを考えて躊躇してしまう、私のようなタイプにはぴったりです。
最後は〈ジュンヤ ワタナベ〉で、ストレッチ素材に本革がボンディングされているレギンス。レザーが伸縮するとは新しい。レイヤードでも、一枚でも活用できそうです。
パリコレ用バッグ
2022年9月末〜10月初め、パリコレに行ってきました。全9日間もあるので、バッグはいくつか用意しておきたい。ヘビロテしたのはこの3つです。
バレンシアガの新作〈クラッシュ〉。元から使い古したような風合いなのでラフに持つことができ、マチがあるためミディアムサイズでも思いのほかものが入ります。スタイリングに合わせてチェーンの長さを変更できるのも便利です。
ラインストーンに覆われたミニバッグは〈ミュウミュウ〉。容量は限られますが、キラキラした輝きはアクセサリーとしての役割も果たしてくれます。
10年以上前に手に入れた〈ジュンヤ ワタナベ〉。ブラックレザーにゴールドのスタッズがアクセントになっており、必需品はきっちり収まる作りです。
ショーを見に行くのに大荷物は野暮。手ぶらが理想なくらいですが、お財布や招待状、取材用の手帳とペン、WiFiルーター、手指消毒液、リップなど、ポケットには入りきれない荷物もあります。これらは最適なサイズ感で、どんなスタイルにも合うので重宝しているのです。
栗山愛以 くりやま・いとい
GINZAで「服装が怖い女」としてお馴染みのファッションエディター。時を経ても色褪せない強さのあるアイテムを見極めることを目指す。心がけているのは思わず話題にしたくなるスタイリング。