2年に渡って私服スナップを披露してくれた”編アシKO”こと大平かりんさん(「自由すぎる私服スナップ」記念すべき1回目はこちら)。GINZAを卒業し、現在はフリーランスのエディターとして活躍中だ。東京生まれ、東京育ち、ファッションが大好きな彼女の新連載でまず聞いてみたいのは、毎日のコーディネートのお話──
大平かりん Dear,Girls!世界はファッションで回ってる
vol.1 365日違う服を着る理由
ところでみなさん、5月病ですか?私はまさに、それかもしれない。
とある占いに「今週はのんびりすることも必要」とのお告げがあり、ここしばらくインスタグラムに私服スナップを更新するのを休んでいる。一度後まわしにしてしまうと、重い腰を上げて再開することは、限りなく不可能に近いように感じる。あぁ、継続の難しさ!
「365日同じコーディネートはしません」という宣言のもと、3月からインスタグラムで私服コーディネートをアップしている。一応、ほぼ毎日更新したい気持ちはある!
こんな時「もっと自分に厳しく」「気合いが足りない」と精神論に行き着きがちだ。私もストイックなメンタリティを学ぶべきかと自己啓発本を探しに本屋に出かけたのだったが、意外にも自分の心を動かしたのは、その道中、友人から聞いたパブロ・ピカソの話だった。
ピカソは生涯に十万点を超える作品を残したという。作品数が少ないほうが希少価値が生まれて価値があがるのではないか、とアートに詳しい友人に尋ねると「作品数が多いほうがマーケットを作りやすいからね」と、そして「徹底的な準備・努力と完璧主義に重きを置くアーティストがいるが、どうだろう。人も社会も毎秒、毎分変化し続けている。そこで迷いながらも作品を生み出し、偶然や運を取り込んでいくことで名作が生まれるんじゃないか」と彼は続けた。なるほど。
その後、箱根彫刻の森美術館の「ピカソ館」へ訪れる機会があり、ピカソの作品をまとめて見るチャンスがあった。どの作品が駄作なのか、傑作なのかということよりも、ある限られたテーマに対する彼の一貫した関心と姿勢に魅了された。そして1日数点の作品を晩年まで作り続けた制作のスピード、豊富なアイディアに驚いた。ピカソにとって制作は生涯の娯楽であったにちがいない。
ピカソの作品を300点余り所蔵している。お皿やポットなど陶芸作品が多いのが魅力。絵画よりも「遊び」がある。自由でのびやかな感性が大好きだ。
ピカソのように、おしゃれを楽しめたら最高だろう!
毎朝クローゼットに入って「今日は何を着よう」と考える。そこは偶然性を楽しむ時間でありたい。天気、気分、会う人、観た映画、音楽、写真…不確実性に溢れる世界に身を委ねて。それは、冷蔵庫の残り物でうまいこと料理を作るのに似ている。そこに偶然やいたずらがもたらされたとき、人はもっと自由にファッションを楽しめるようになるのではないか。365日違うコーディネートを楽しむということは、その準備だ。かっこよくキマる日もあれば、きわどい日もある。しかし一度で成功しようなんて思わず、たくさん試し続けたいと思う。
なんだかやる気が湧いてきた!
最近観た映画『君の名前で僕を呼んで』の影響で、夏のヴィラ(別荘)で過ごすスタイルに夢中だ。劇中に登場する赤いラコステのシャツはもちろん購入した。ちなみに南仏のアトリエでのピカソの生活や制作の様子をドキュメントした写真集(写真家でピカソの親しい友人であったルシアン・クレルグが撮影)にも、映画のそれに通じる雰囲気があり参考にしている。
スナップを更新していない日は、もっぱら「黒」ばかり着ていマス。
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大平かりん
GINZA編集部を経て、現在はファッションや音楽企業のデジタルマーケティングを手がける。「最新」と名のつくものに弱く、コンビニの新作商品、最新映画、ヒットソング、新聞の時事ニュースに目がない。
Instagram @ko365d