ロンドンから注目のニューカマーがやってきた。日本の怪談に刺激を受けたというその名も〈カイダン エディションズ〉。 〈バレンシアガ〉をはじめ数々のトップメゾンで経験を積んできた実力派デザイナーデュオにブランドの背景を尋ねてみた。
“怪談”に魅せられた新鋭ブランドの挑戦
2人の映像世界を色濃く描き出した2018年春夏のイメージビジュアル。1950年代の建築理念であるブルータリズムをベースに、70年代のどこか安っぽい、田舎の家庭にあるようなファブリックが掛け合わされた。
上: ドレス ¥147,000 下: コート ¥223,000、シャツ ¥106,000(以上カイダン エディションズ | アディッション アデライデ)
〈カイダン エディションズ〉というブランドをご存知だろうか? フランス出身のLeaとベトナム系アメリカ人であるHungのデザイナーデュオによって2016年に設立され、そのブランド名は、夫婦である2人がプライベートで観た小林正樹監督のオカルト映画『怪談』(65)からとられている。意外性のあるテキスタイルの組み合わせとミステリアスなビジュアルを展開し、早くも世の注目を集める新進気鋭のブランドだ。
「初めて映画を観た時、その異様さと美しさに衝撃を受けました」。学生時代の初デートは映画『シャイニング』(80)鑑賞というもともとホラー好きの2人は、ダークなものにこそ美しさを見出すと話す。「多くの人に語られていくことで少しずつ物語を変化させてきた〝怪談〟という文化自体の歴史も興味深く、自分たちもそんなふうに長い時間を経た時にファッションに何かしらの影響を与えている存在でありたい、という思いを込めました」。服作りへのアプローチもそんな美学に通じるものがある。映画製作のように場面先行でスケッチされるデザインは、常に対照的な2つの要素をあえて組み合わせることで生み出される〝葛藤=異様さ〟で人々が驚くようなデザインを探求。ストーリーを感じさせる一貫性のあるコレクションを完成させている。「予算の限られている中での製作活動は試練も多いですが、それがブランドを強く成長させてくれています。世の中のスピードに流されることなく、ゆっくりと時間をかけて〈カイダン エディションズ〉を育てていきたいと思っています」
立ち上げ間もないブランドのデザイナーとは思えないほどしっかりと地に足のついたプランを語ってくれた2人。お互いをビジネスパートナーとして、デザイナーとして、さらには夫婦として心から信頼し合っているからこそ持ち得る、確固とした自信がみなぎっていた。彼らが早くも見据えているブランドの30年後、40年後が今から楽しみだ。
シャツ ¥94,000、スカート ¥149,000(カイダン エディションズ | アディッション アデライデ)
コート ¥251,000、パンツ ¥126,000 (カイダン エディションズ | アディッション アデライデ)
シャツ ¥100,000、パンツ ¥130,000(カイダン エディションズ | アディッション アデライデ)
Text: Aiko Yanagida Edit: Aiko Ishii
■ショップリストはこちら