01 Sep 2020
石田ゆり子のフォトエッセイ『LILY’S CLOSET』番外編:制作への思いと撮影のオフショットを特別公開

クローゼットから選び出されたアイテムと、その愛を丁寧に紡いだ文章。石田ゆり子さんのフォトエッセイ『LILY’S CLOSET』が話題だ。今回は特別に、書籍では披露されていないファッションへの考えと、エッセイを書き上げた思いを語ってくれた。ゆり子さんのファッション哲学が、服を着る楽しさを再発見させてくれる。
『LILY’S CLOSET』
服が大好きで、服に関するエッセイも普段から愛読しています。そして、ありがたいことに私の服に興味を持ってくださる方がときどきいて、それならばファッションについて書いてみたいな、と思ったのがこの本を出すきっかけです。
奥が深いですよねえ、服って、とても。実際に書き始めると想像していたよりもずっと大変で、本当にこんなに苦労するとは思わなかった。全部自分の服だし、それぞれの服に対して思い入れもあるから、書けないはずがないって。でも、いざ、ひとつずつアイテムに区切って書こうと思うと、行き詰まる(笑)。なんでしょうね、好きなものってとにかく直感で選んでるんですよね。
知らなかった扉を開けた。ものを書くときはいつもそう感じます。服は、その道のプロがつくり上げている作品。デザイナーの想いとかブランドの歴史など、背景にあるものをあらためて知り、より愛情が湧いて、どれほどパワーをもらっていたかを実感しました。だからこそ失礼があっちゃいけないし、間違ったことも書けない。
私はファッションのプロじゃないし、プロによる本はいっぱいあるわけだし、自分が出す意味はなんなんだろうと、よく考えました。なぜこれが好きなのか、この服にどういう物語があるのか、そこに対する賛美や感謝、気持ちを共有するために書くんだ、と。そう決めたら少し気が楽になりました。
服を着ることは、今日も元気で前向きに生きています!と、周りにも自分自身にも伝えることだと思います。
一番自分らしくいられる自分を作ることができる、すごく面白いジャンル。セルフプロデュース。自分に服を着せられる人は、自分しかいないですから。うちの父みたいに、洋服にお金をかけてうつつを抜かすなんて!みたいな人もいますが(笑)、それも一理ある。でも私は、いや、そうじゃないと思っているし、好きな服を自分で働いて一生買っていきたいし、それをきちんと着られる身体をつくりたい。服を着ることは、とても社会的なことでもあると思っています。
こんな時期にこういう本を出して、みなさん手にとってくれるのだろうかと不安にもなるのだけれど、むしろ、なんだろう、女の人に元気出しておしゃれしてもらいたいし、しっかりと前を向いて綺麗であってほしい。 そんな希望を込めて、丁寧に正直に自分と向き合いました。
石田ゆり子 いしだ・ゆりこ
2020年7月に発売された著作『LILY’S CLOSET』(マガジンハウス/¥1,800)は、告知されるやいなや大評判に。女優という枠組みを超え、ファッションについて書くということに挑戦した本作。ページをめくるたびにまっすぐで優しいゆり子さんの声が聞こえてきそうな一冊、必読です。
Model: Yuriko Ishida Photo: Hiroko Matsubara Styling: Miho Okabe Hair&Make-up: Tamae Okano Text&Edit: Kanako Uchida
GINZA2020年8月号掲載