〈マリーン・セル〉が新たなジュエリーシリーズを発表。「REGENERATE(再生)」というブランドコンセプトを、意外性のあるピースを組み合わせたジュエリーで表現する。
〈マリーン・セル〉が見せる、再生と昇華のジュエリー。素材のストーリーが強さとなる
2017年にまさに彗星の如く現れ、LVMHプライズでグランプリを受賞。その後も一過性のブームとはならず、確実に着実に地位を築くマリーン・セル。彼女が「REGENERATE(再生)」と言うとき、それは、物や素材が持つ特徴を生かして新しい形にすることを指す。(デザイナーインタビュー記事はこちら)
サステナブルブランドとして語られる段も多いが、〈マリーン・セル〉がこんなにも強く光るのは、その挑戦的かつ実践的なクリエイションによるものだと思う。アップサイクル素材を単に「再利用」しているのではなく、価値を認め、与え、他の素材と組み合わせて命を吹き込んでいること。そのやり方に、このブランドの芯がある。だからこそ、生まれた服は「再利用」ではなく「再生」となりえるのだ。
そして2022年春夏コレクションでは、このコンセプトがジュエリーにも拡張されている。
もう使われなくなったフォークは、先端部分をイヤリングや指輪に。持ち手はブレスレットに。古いスプーンの先端も、ペンダントトップになる。物本来の意味を解体し、組み直し、芸術品として昇華させる。けれど、物のストーリーは引き継がれる。
たとえばキッチン用品から「再生」したジュエリーは、見る人を「Arts de la table(食卓の芸術)」へと誘う。なにより、「食べる」というきわめて日常的な動作を作っていた道具が、「身を飾る」品になる不思議さ。けれど実は、身体との距離の近さは変わらないというところにも、この再生の面白さがある。
シリーズ内には他に、マリーンが長年収集していた貝殻や木片、ガラスビーズなどを使ったものも登場。物との出合いや思い出は、そのまま価値になることがある。それぞれに価値や意味を持つ小さなパーツできたジュエリーは、お守りのようにも、シャーマンの呪物のようにも見える。いわゆる洗練されたジュエリーではなく、むしろヒッピームードすら漂わせているが、どこか退廃的な美学がきらめく。
こうやって、すでにある何かにそれまでとは全く違う役割を与えて、身にまとうこと。単にスタイリングを華やかにするだけではない、本当の意味での装いの可能性を感じるシリーズだ。