メンズカルチャーを起源とするアイテムの基礎知識を今日的な解釈も含めて解説。シューズデザイナーの竹ヶ原敏之介さんに“ドレスシューズ”についてお話を聞きました。#メンズアイテムの基本
シューズデザイナー/竹ヶ原敏之介が語る“ドレスシューズ”|押さえておきたい、メンズアイテムの基本 vol.2
ドレスシューズの定義について
ドレスシューズは紳士の文化です。その名の通り、カジュアルシューズ以外の、スーツや礼装に合わせるための靴。大枠でいうとブーツ、短靴、スリッポンの3種類に分かれます。
起源はイギリスやヨーロッパの軍人や貴族が礼装のために作ったというものが多い。たとえば、ダブルモンクストラップはイギリスのウインザー公が老舗メーカーの〈ジョンロブ〉にオーダーしたもの。デザインというより、その起源が重要だったりもする。
イギリスのカントリーシューズというジャンルは、ウイングチップなど狩猟に用いるボリュームのある靴ですが、狩猟が貴族の嗜みだったのでドレスの範疇に入る。
一方で、ローファーはスーツにも合わせますが、ネイティブ・アメリカンのモカシンから発展した形なので入らない。諸説はありますが、様式美が重んじられるような世界なのです。
長くはくためのお手入れ方法
Shoe Brush & Polish 靴ブラシと靴クリーム
はき込んで経年変化を楽しめるのもドレスシューズの魅力だと思うんです。気の配り方としては、洋服は汚れたら洗う、髪も伸びたら切る、それぐらいは気にしてあげてほしいなと。
デイリーケアは柔らかい布でさっと汚れを落とすだけでも違う。ほとんどの人がまず何もしないでしょ(笑)。革自体に油があるので、ブラシでさっと磨くだけでも輝きが違います。欲を言えばクリームもあるといいですね。黒の靴には黒、茶色には茶、靴の色に合わせるのがベスト。
買ってはいて終わりじゃなく、時には手入れしてあげる。おしゃれの差ってそういうところだと思います。
靴の製法とその特徴
大きく分けるとグッドイヤー・ウェルト製法とマッケイ&セメント製法。
グッドイヤーはアッパーにウェルトという細い革を縫い付け、ソールにさらに縫い付ける。重厚感があり、底の張替えができて耐久性にも優れています。ただ、パーツも工程も多いので値段も高くなるし、見え方もコバの分ゴツくはなります。セメントは接着剤の意味で底を貼り付ける製法。
マッケイはさらに中からミシンをかけた作り方。工程が少ない分価格も安く、ウェルトがないのでスマートに作れるという良さもある。今は技術が向上しセメント製法で底の張替えができるものも出てきています。
代表的なデザインと
ブランドをおさらい
オーソドックスな話でいうとストレートチップが一番フォーマルとされています。ブランドは、多少個人的な好みも交えて選ぶと、イギリスなら〈ジョンロブ〉、フランスは〈ジェイエムウエストン〉、アメリカでは〈オールデン〉。
ノーサンプトンで創業したジョンロブは、昔ながらの質実剛健な作りの靴と洗練された現代的な靴の両方を凌駕しています。ウエストンは瀟洒な佇まい。ジョンロブが物としての嗜好品だとするとウエストンはファッションアイテムの趣がある。
オールデンはモデファイドラストという足なじみのいい木型が特徴。アメリカンベーシックのスタイルによく合います。
はき心地はなにで変わる?
靴の作りで言うとフォルム。フォルムを出すための木型のクォリティに左右されることが多いです。老舗のシューメーカーはその知識や経験が豊富なのでしっかりした靴が作れる。メンズとレディスでは木型が違うので、はき心地はレディスで作られたものがいいと思います。
木型にはそのメーカーのコンセプトが込められているため門外不出のものなんです。サイズも重要です。革が伸びるからキツめを選ぶという話もありますが、ピッタリなものをおすすめします。いい靴には型くずれを防ぐための芯地が入っているので、はき込んで革が柔らかくなっても伸びたりしないんですよ。
🗣️
竹ヶ原敏之介
シューズデザイナー
1994年〈オーセンティック シュー アンド コー〉を設立。その後渡英し老舗〈トリッカーズ〉で経験を積む。帰国後〈フット ザ コーチャー〉を始動。2010年より〈ビューティフルシューズ〉スタート。
Illustration: Yoshifumi Takeda Edit: Naoko Sasaki