メンズカルチャーを起源とするアイテムの基礎知識を今日的な解釈も含めて解説。〈KAPTAIN SUNSHINE〉デザイナーの児島晋輔さんに“ミリタリーウェア”についてお話を聞きました。#メンズアイテムの基本
〈KAPTAIN SUNSHINE〉デザイナー/児島晋輔が語る“ミリタリーウェア”|押さえておきたい、メンズアイテムの基本 vol.3
ミリタリーウェアの元祖
トレンチコート
第一次世界大戦下、イギリス軍が塹壕での戦闘服に採用したもので、戦地での目的に対して作られたスペックが特徴です。
素材はコットンギャバジン。綾織物の糸の打ち込みの強さで水を弾いていました。襟は喉元のフックで留めるとスタンドカラーに。フロントはダブルブレスト。ベルトやカフストラップも閉めることで体温を逃さない。
ストームフラップは銃を撃った衝撃を和らげる役割もあり、ガンパッチとも呼ばれます。階級章を示したエポーレット(肩章)は銃などの物をつるす役割も。Dリングは水筒や手榴弾をつるしたようです。ストームポケットはコートを着たまま中の上着に手が届く仕様が一般的。
ファッション界で
愛されているアイテム
トレンチやPコート、ダッフルコートはもはや定番ですよね。フライトジャケットでは1950年代のアメリカ空軍のMA-1。マリリン・モンローが映画『バス停留所』(56)で着用したのがB-3ボマージャケット。
モッズコートはアメリカ陸軍が野戦地で使用したフィッシュテールが特徴で初期はフード付きでした。後期のM-65に付いたキルティングライナーをモディファイしたアウターも人気ですね。
カーゴパンツはファティーグパンツとも言われ、用途によってポケットなどの仕様が違います。フランス軍のパンツM-47はマルジェラがランウェイで裏返してはかせたことも知られています。
ヴィンテージならではの楽しみ方
Tag, Emblem
タグとワッペン
ワッペンを付けたりカスタムして、ファッション的にもユニークな物を探すのも面白いです。A-2というレザーフライトジャケットは背中にピンナップガールを描いたものが残っていますし、落書きされたモッズコートも可愛い。今はオーバーサイズが流行っているから買い時かも。
軍物には取説のタグが縫い付けられていて、用途やスペック、生地の混用率から洗い方まで…読んでみるのも一興。少しマニアックですが(笑)。ショップは富ケ谷の「ミスタークリーン」や高円寺の「ミリタリア」がおすすめです。
陸軍、海軍、空軍のウェアの違い
US NAVY
アメリカ海軍
わかりやすくアメリカ軍で言うと、空軍はエアフォース。フライトジャケットは操縦席に座ることを前提にしているので、基本的に丈が短いものが多い。海軍はネイビー。毛織物が多く、Pコートやダッフルコートなどは昔から形があまり変わっていません。その名の通り、濃紺色も特徴です。
陸軍はアーミー。戦地に合わせた色が多様にあり、カーキは砂漠、白は雪山、オリーブドラブは森林。カモフラージュ柄も多い。階級があって、着る物の素材も丈も違う。個人的には海軍の服が好きです。クラシックで品がありますよね。
各国のデザイン
どの国にも同じようなアイテムが存在していますが、国によって素材感や色合いが少しずつ違い、特性が出ているのも面白いところ。
フランスやベルギー軍は形や色がエレガント。フランス軍のモーターサイクルコートは麻を使っていたり、パンツのシルエットも綺麗。イギリスは基本的には無骨なのですが、ディテールがしゃれている。グルカパンツは2プリーツやクロスベルトが特徴的でサファリファッションのルーツとして知られています。
カモフラージュは日本で目にするのはアメリカ軍のものが多いけど、ドイツ軍のスノーカモなどはデザイン的にも洗練されている気がします。
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児島晋輔
〈KAPTAIN SUNSHINE〉デザイナー
1976年兵庫県生まれ。ファッション誌の編集の傍ら、2002年よりファッションデザイナーとしてのキャリアをスタート。さまざまなアパレルのデザインに携わり、13年に〈キャプテン サンシャイン〉を設立。
Illustration: Yoshifumi Takeda Edit: Naoko Sasaki