男女がお互いのコレクションを自由に選べる雰囲気、そもそもユニセックス、女性にしっくりくるメンズブランド。そんなニュートラルな持ち味の服が気になりまくり。日常に溶け込むさりげなさでいて、服オタクが唸る24の注目株を連載で一挙紹介。20-21AWからピックアップしたのはすべてメンズ服。試す価値あり! #厳選ニュートラルブランド24
シルエットが美しい〈エイトン〉、なじみの良い〈コモリ〉etc. 厳選ニュートラルブランド vol.2
ATON
人がまとって動く姿
着込んだ先に真価がある
なびく、はためく、しなる、たわむ。どれだけ言葉を重ねても、このシンプルな中に潜む表情の多彩さには追いつけない気がする。〈エイトン〉は、目の行き届く国内の工場で生産される。信頼を築いた関係性で妥協なく開発される素材のクォリティは格別だ。その長所が遺憾なく発揮されるのは、動く姿やバックスタイル。たとえば、コートをまとって歩けば、後ろ裾がやや遅れて寄り添い、美しいドレープが余韻を残す。また、定番のカットソーは洗い込むたび味わいが増し、インドで手摘みされ和歌山のニッターが編み上げるコットンスウェットはシワができてもまろやかで上品。着るほどに愛着のわく経年変化が楽しめる。
COMOLI
さりげないムードの
初めからなじみがいい服
〈コモリ〉の服は、最初からすでに、長年愛用してきたようななじみ方をする。たとえばトップなら、どのアイテムも自然と肩が落ちるようなつくりで、角のないシルエットが着る人を選ばない。装飾を最小限に抑えたプレーンな見た目は、大人の女性にも支持される理由だ。こうした持ち味を魅力に昇華しているのは、吟味された質の高い素材のおかげ。新しく作られた1着が最初の持ち主の手から離れて、古着としてまた別の持ち主の手に渡る未来を、デザイナーの小森啓二郎は想像し期待している。彼自身が出合った古着が、確かなテキスタイルの良さによって、後世に引き継がれてきたものばかりだったように。未来を内包している服を、たくさんの季節をまたいで長く着たい。
AUBETT
デイリーに溶け込む
モードのエッセンス
2020年秋冬スタートの〈オーベット〉は、仏の大手メゾンで立体的な服づくりの経歴を積んだデザイナーの杉原淳史と、グラフィックデザイナーの吉村雄大によるデュオ。日々発見のある服を目指して、長く愛せるシャツ、チノパン、ブルゾンといったアイテムのメンズとウィメンズをそろえている。杉原によると「パターンのいい立体裁断で仕立てると、異なる体格の人がどのサイズを試しても不思議とどれも成立する」という。確かな技術の掛け合わせが、性別や体型を超える質の高い普段着を実現し、そこに凝ったモードなディテールが加わることで、唯一無二のアイテムが誕生。「モードと日常をつなぐ美しい服」を掲げるニューブランドに期待は高まる。
UNDECORATED
テキスタイルの声を聞き
最小限の手を加える
〈アンデコレイテッド〉を手にしたら、商品に付けられた下げ札にも注目。天然繊維やオーガニックを中心にした原料産地と生産地のほか、その組成までもが200字近い解説文で明記されている。デザイナー河野貴之は、ときには糸の開発から携わり、テキスタイルができてはじめてデザイン作業に移る。「おいしい有機野菜でサラダを作る感覚」と自ら例える通り、素材の魅力を最大限引き出す“引き算”を心がけている。「飾らない」を意味するブランド名にも納得だ。一貫した価値観から生まれるミニマルな作りは、袖を通したときの肌触りや、感動するほどの軽さにも通じる。そんな素材の心地よさ、軽さを求める気持ちには男女に差がないことも、ニュートラルなムードの秘密なのかも。
Photo: Kaori Ouchi Text&Edit: Yoshikatsu Yamato