男女がお互いのコレクションを自由に選べる雰囲気、そもそもユニセックス、女性にしっくりくるメンズブランド。そんなニュートラルな持ち味の服が気になりまくり。日常に溶け込むさりげなさでいて、服オタクが唸る24の注目株を連載で一挙紹介。20-21AWからピックアップしたのはすべてメンズ服。試す価値あり! #厳選ニュートラルブランド24
デザインスタジオが手がける〈ウェル〉、構築的なシルエット〈スタジオ ニコルソン〉etc. 厳選ニュートラルブランド vol.3
well
着る人の価値観に
寄り添う“普通の”服
〈ウェル〉は、ファッションデザイナー、編集者、グラフィックデザイナーをメンバーとして、出版や編集も行うデザインスタジオ。ターゲットやジャンルを限定しないアプローチで手がけるライン〈Ordinary〉を展開している。ただし、アイテムは決してスタンダードではない。「普通さ」「平凡さ」といった捉え難く曖昧なものを服に落とし込むため、細部のデザインやその見せ方は工夫に満ちて、“ありそうでなかった”が形になっている。メンバーの生活感の写り込んだスナップをあえて未分類のまま掲載したようなウェブサイトや、シーズンルックのヴィジュアルに現れる、デザインスタジオという不思議な集団性の編集力にも注目したい。
STUDIO NICHOLSON
ここにしかないカラーと
服と体の間合いが絶妙
独特のカラーパレットや構築的なシルエットで定評のある〈スタジオ ニコルソン〉。デザイナーのニック・ウェイクマンが「モジュラー・ワードローブ」と呼ぶのは、シーズンごとに発表されるコレクションが、古びて過去になるのではなく、新たなアイテムと組み合わせることで相互作用をもたらすよう意識したデザインだから。ウィメンズの展開もあるが、よりゆとりのあるサイズ感で着られるメンズを好む女性も多い。特にハリのある素材のパンツは、立体的なパターンのおかげで、オーバーサイズがかえって華奢な雰囲気を演出してくれると好評だ。服と体の間合いをはかるスキルに長けたこのブランドならでは。今季のアクセントカラーは、イエローとパープル。
Kota Gushiken
全人類に向けた実直で
ファニーなニットウェア
2019-20年秋冬より本格的にブランドを始めた具志堅幸太は、イギリスの名門、セント・マーチンズのニットデザイン科卒。スケッチブック上の2次元的なデザイン方法に行き詰まりを感じていたとき、デザイン画を描く前に手を動かすことで編み地を生み出せる家庭用編み機に出合ったのが、ニットデザインの道へ進むきっかけに。「心から面白いと思えるものをつくりたい」という思いのもとハンドメイドで作られるのは、とてつもないボリュームに驚くパワフルな重量級アートピースから、数種類の繊細な編み地が掛け合わされた軽やかで風に揺れるリアリティあるモデルまで。ユニセックスを超えた「人間に向けて作っている」ニットの、ハッピーで自由なクリエイションにノックアウト!
stein
ふんだんなギミックで
めくるめく着方の幅
デザイナーの浅川喜一朗は、人気セレクトショップ勤務を経て、神宮前に「キャロル」をオープン。オーナーとしてさまざまな服を取り扱い、販売しながら、名作と呼ばれる古着などを解体し、その造形を研究するなかで自身のブランド設立に至った。今季の〈シュタイン〉に特徴的なのはボタン使い。脱ぎ着のためというより、服の立体感や落ち感、アクセントの位置に違いを出す仕掛けとして、あらゆる場所に用意されている。全体に通底するオーバーサイズのシルエットは、力強くジェンダーレスを掲げずとも、女性にも男性にも分け隔てなくなじむムード。ルックブックなどから受ける儚げな印象も、ドレープや落ち感の美しい服とマッチしている。
Photo: Kaori Ouchi Text&Edit: Yoshikatsu Yamato