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ニューバランス特派員、小谷実由が行くNB探訪記。「フェートン」編

ニューバランス特派員、小谷実由が行くNB探訪記。「フェートン」編

モデルとして活躍する小谷実由さんが〈ニューバランス〉を多角的に取材し、新たな魅力を再発見する探訪記も4回目に突入。今回は、東京を飛び出し初の地方遠征へ。向かったのは、石川県加賀市というエリアに存在しながらも、常に全国からお客さんが集まると話題のセレクトショップ「フェートン」。ネットショッピングが主流の今、絶えず人気をキープするにはなにか秘密があるに違いない。その真相を探るべく“敏腕特派員”がオーナーである坂矢悠詞人さんを直撃インタビュー。〈東京デザインスタジオ ニューバランス〉も惚れ込んだ噂のショップを徹底解剖しちゃいます!


「フェートン」の顧客は日本全国⁉
石川という地で、なぜこんなにも愛されるのか?
その魅力は、オーナー・坂矢悠詞人さんにあり!

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全国にその名を轟かせる石川県のセレクトショップ「PHAETON(フェートン)」。多くのファッション関係者や業界人が注目するこのショップのオーナーである坂矢悠詞人さんは“セールを一切行わない”など、独自の販売スタイルで、他とは一線を画する店舗を築き上げてきた。セレクトに絶対の自信があり、また坂矢さんの審美眼で選ばれたモノはなぜか魅力的に映って見えてくる。〈東京デザインスタジオ ニューバランス〉のアイテムも「フェートン」のフィルターを通すと、不思議と旗艦店とは違った印象に。多くの店舗をかまえるだけではなく、『大勉強』という「フェートン」発信の雑誌まで制作する。物や人など、迷うことなく一瞬の嗅覚で判断するという坂矢さんのユーモラスな発想・考えを探ります。

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小谷実由(以下小谷)  たくさんのブランドを買い付けされているなかで、〈東京デザインスタジオ〉もセレクトされていますが、取り扱いの決め手はなんだったんですか?坂矢さんのなかでなにか基準のようなものはあるのでしょうか?

坂矢悠詞人(以下坂矢)  僕は、一目惚れよりも早い、「瞬目惚れ」ってよく言うんですけれど、すべてその瞬目惚れなんです。一目じゃもう遅いですね。考える余地がありますから。考える時間を与えないほど瞬間的にいいって思ったものを選ぶようにしています。それは、物だけじゃなく、出会う人に対しても同じです。瞬間に“匂い”がするんですよ。例えば、買い付けで海外のマーケットなどによく行くんですが、迷わず一瞬で買ってきます。この人は僕が好む、狙っているものを持ってるな。ってすぐにわかって、その勘は外したことがないですね。

小谷 嗅覚が鋭いんですね!

坂矢 そうみたいです(笑)。

小谷 それじゃあ、〈東京デザインスタジオ〉に関しても直感的に選ばれたってことですか?

坂矢 商品自体もそうなんですけれど、マーケティングマネージャーの池戸豪さんとお会いしたときに、もう絶対この人だ!って瞬間で匂いを感じて、すぐに取り扱いを決めました。

小谷 理屈ではなく感覚的にいいものを嗅ぎ分けるんですね。

坂矢 はい。

小谷 聞いた話なんですが、買い付けされた商品は、すぐに売り切ってしまうというという噂ですが……、しかも、お客様のほとんどが県外からとか。何か特別な販売方法があるんでしょうか?

坂矢 うちは9割が県外からのお客様です。僕らからしてみたら当たり前のことなので、特別と感じることはなにもしていないですよ。ただ、ここ本店は、今年で11年目になりますが、これまでセールは一切したことがありません。例えば定価7万円のシャツがあったとします。そのデザイナーがパターンを引いて、生地を選んで縫製して。そうやって作られて完成したものの価値は、あくまでも7万円なんですよ。それをそのシーズンで売れなかったから、50%オフで3万5千円です。と言って販売するのは大変失礼なことだなって。

小谷 確かに。

坂矢 そもそも売れない、売る力がないのであれば仕入れたらダメだと思うんですよ。それって誰も得をしない。お客様は得したと思うかもしれませんが、実はそうじゃない。結局半額になったものの波動って良くないんです。追いやられたものだから、全然気持ちよくない。定価で買うからこそ、そのものの良さであったり価値がついてくるんだと思います。そういう考えでオープン当初からやっています。

小谷 セールって当たり前のように受け入れていましたけど、デザイナーさんへの敬意を思うとその通りですね。

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坂矢 あと、どんなに素晴らしいデザイナー、ブランドの服であったとしても、僕が着ないなと思ったらやれないんですよね。仮に売れればいいですけれど、何かあれば真っ先に外すのは、そのブランドになります。だって着ないわけですから。もしかしたらセールをする可能性だって出てきてしまいます。隣でカフェをやっていますが、僕はコーヒーを飲まないので、だからコーヒーは出しません。香水のお店も展開していますが、自分がつけない香水は売らないです。自分自身がいいと思って、実際に使うものじゃないとお客様に良さが伝えられないじゃないですか。そうしているとお客様も信頼してくれるんですよ。

小谷 すごい説得力がありますね。自分の名前が載って世に出てしまうという責任がありますし、その基準で動けるのって理想ですね。せっかくオファーしてくれた人に対しての敬意もあるし。そう思うと、やっぱり自分が納得したことじゃないと絶対にできないことなので。だからお店で取り扱うアイテムへの気持ちがよくわかります。このお店はウィメンズの扱いがありますけれど、坂矢さんは女性物は着られないじゃないですか。そういったものはどういう判断で選ぶんですか?

坂矢 実は、ここにあるものはすべてユニセックスなんです。最近力を入れているロンドン発のブランド〈トゥーグッド〉もユニセックスのブランドです。男性が着られない服はやってないんです。

小谷 そうなんですね!

坂矢 はい。例えば、〈ユーモレスク〉っていうレディスのニットブランドがあるんですが、そのニットにすごく感動して、どうしてもメンズサイズが欲しかったので頼み込んで作っていただいた、なんてこともしています。

小谷 なるほど、それは面白い! 本当に徹底されているんですね。

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小谷 ちなみに、金沢市内からも離れていますが、なぜこの場所にお店を選んだのでしょうか?

坂矢 このお店から見える景色、あれがすべてです。空が広くて海が見えるロケーションって気持ちいいじゃないですか。オンラインが普及している今、ますます実店舗の価値というものを意識するようになりました。金沢市内からわざわざ高速で20分かけてくるだけの価値を作らなくてはいけないですよね。

小谷 小松空港からのアクセスの良さも、県外からの集客につながっていますよね?

坂矢 間違い無いです。空港から7分。インターから目の前のこの立地は大事ですね。「フェートン」の隣に「ティートン」というカフェを作ったのも理由があります。ここにしかない洋服を求めて、海外からのお客様も少なくないのですが、わざわざ海外から来られて、40〜50分買い物してまたタクシーで金沢まで戻っていかれたんです。それが申し訳ないなって思って。もっともてなしたいって気持ちで、さらにもう1時間滞在してもらうためにカフェを併設したんです。

小谷 ここにカフェがあるのは嬉しいかもしれませんね。それだけ色々なところからお客様がいらっしゃるってことは、売り上げのほとんどは店舗ですか?

坂矢 オンラインの10倍ぐらいが店頭になります。

小谷 すごいですね!買い物ってお店に来るっていう体験も込みじゃないですか。家でポチッとやって欲しいものが届くだけだと、その間の過程が抜け落ちますよね。そうやって手に入れたものって何でそれが欲しかったのかもよくわからなくなるし、物を大事にできる度合いも変わってくる。

坂矢 購入に至るまでのストーリーがないですからね。

小谷 そうなんです。私はすごく服も好きだし、ものを集めることも好きなんですが、それぞれにちゃんと思い出やいいと思う理由があるから、より大事にできる気がします。手に入れるまでの過程みたいなものは大切ですね。

坂矢 我々も、来ていただくための努力や工夫をいつも考えています。

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小谷 先ほど、坂矢さんにコーディネートをしていただきましたが、どういうイメージだったんでしょうか。

坂矢 最初にヒアリングさせていただいて、小谷さんの「黒」ってキーワードから選んでいきましたが、〈トゥーグッド〉の黒のワンピースを気に入ってらっしゃったので、まずそれをベースに。

小谷 フリルのディテールがかわいかったんですよね。

坂矢 ただ、あまり品良くまとめ過ぎずに外していきたかったので、〈C.P.カンパニー〉のアウターを選びました。このブランドのダウンジャケットは、ガーメントダイ特有の色ムラが絶妙なんです。それを光沢感のある上品なコットンリネン生地のワンピースに合わせれば、コントラストと変化が生まれると思いました。インナーに〈トゥーグッド〉のギンガムチェック(ストール)を重ねて「最先端の不良」をイメージしたコーディネートです(笑)。パールのジュエリーもアクセントにしています。

小谷 足元に合わせた〈ニューバランス〉「TDS574」の新作タンカラーとも、すごくバランスが素敵!

坂矢 お店に置かれている商品の“質”が合っていれば、全部統一されて見えるものなんですよ。極論、物の質さえ合っていれば、色のトーンとかそういう次元すらも関係ないと思っています。

小谷 物のクオリティが大切なんですね。そういう価値観で選ばれた商品を坂矢さんがひとつひとつ丁寧に説明してくださったので、単に着心地だけではなく、機能性だったり、作り手の意図だったりを深く知ることができました。その知識や意味を理解することで着る人の気持ちが全然変わってきますよね。それってやっぱりオンラインだと難しいことだから。お店で買い物するいいところだと感じました。

小谷 こういった接客スタイルは、普段からやられていることなんですか?

坂矢 スタイリング提案はとても重要です。うちのお客様は、コーディネートしたものを全部買ってくださる方がとても多いんです。それって、提案が良かったからってことじゃないですか。やっぱり嬉しいですよね。僕が心がけているのは、1回目の試着の時のサイズ選びを絶対間違えないこと。実は初めてのお店へ行って試着する時に、サイズが合わないものを提供してしまうと「このお店は私に合わない」って認識するんですよ。一発目が重要で、かなり、マッチ度高いスタイリングを組まなきゃいけないんです。

小谷 最初の印象は大切ですよね。

坂矢 これは、全スタッフに教育していますが、もしもですよ、サイズを選び間違えたら、すぐにはずしなさいって伝えています。そういうイメージを持たれないようにするんです。だからバックヤードでは、Sサイズと言いながらMも用意するようにしています。違ったらすぐにMに着替えてもらう。これ、結構大事なんです。

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小谷 それこそお店での利益をあげようと思うと、接客ってものすごく重要ですよね?

坂矢 一番重要ですね。お店は、お客様と店員と物っていうとてもシンプルな構造です。扱っているものを、どういう風に伝えるのか、どうプレゼンするのかっていうことだけなんですよね。僕らは、接客っていうのはクリエーションだと思っていますので。美容師には、指名料があるじゃないですか?だから、次の新店舗では、接客に対して指名料をつけることも検討中です。これは、スタッフの意識改革にもつながりますし、接客のクオリティアップにもつながります。

小谷 またすごい発想ですね。正直、街中から少し外れているのに、わざわざ来るってどういうことなんだろうと疑問だったんです。でも、接客の仕方であったりコーディネートを組んでもらったりとか、ここで過ごす時間すべてが心地良くて。来て良かったと思える、そういう体験が多くの人が訪れる理由じゃないかなと思いました。坂矢さんには、まだまだアイデアが眠っていそうですね。新店舗の完成が今から待ち遠しいです。

 

今日のみちくさ

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「今回のカフェ巡りは、出張番外編です。ここ『ティートン』は、取材させていただいた『フェートン』の隣にあるお店なんですが、実は、会員制の紅茶専門店なんですよ。年4回、会員になれるタイミングがあって、オンラインか直接店舗で入会する仕組みを取っているそうです。SNSでもチェックしていましたが、なんといってもここの名物のパフェが本当に楽しみだったんです。今日は、新作メニューの『ムーンマウンテン』という栗のパフェを提供していただきました。まず、見た目が美しくて作りが本当に繊細。食べるのがもったいないくらいです。素材は能登栗がベースで、そこにカカオのフレーバーが風味を引き立てています。一番のお気に入りは、栗のチップス。あんみつの箸休めに昆布とかあったりするじゃないですか。あの発想で、塩気のある揚げた栗のチップスが添えてあるんです。これのおかげで最後までパフェを飽きさせない演出に。このパフェに『ティーミルクスープ』という紅茶を合わせました。店内は奥に茶室があってそのコントラストが素晴らしい。開放的なお庭もあるから、つい長居してしまいそうな空間ですね。会員制って敷居が高いのかなって思いましたが、居心地がいいのと、この絶品パフェを考えたら会員制じゃないと大変なことになりそう。何度も来たくなっちゃいますね」(小谷さん)。

Profile

坂矢悠詞人 さかや・よしひと

石川県生まれ。 石川県に構えるセレクトショップ「フェートン」「リトー」「香水専門店 フェートン フレグランス ロングバー」のディレクターのほか、4月に新たにオープンした「フェートン フレグランス ハウス」「ポータークラシック金沢」「オールドジョー金沢」「ゴールデンブラウン金沢」を運営。 またインディペンデントな雑誌『大勉強 by PHAETON』を出版するなど、幅広く活躍。@phaeton_smart_clothes

INFOMATION

ニューバランスジャパンお客様相談室 ☎0120-85-7120

ニューバランス公式ページ

公式Instagram

小谷実由 おたに・みゆ

1991年東京生まれ。14歳からモデルとして活動を始める。自分の好きなものを発信することが誰かの日々の小さなきっかけになることを願いながら、エッセイの執筆、ブランドとのコラボレーションなども取り組む。猫と純喫茶が好き。通称・おみゆ。2022年7月に初の書籍『隙間時間(ループ舎)』を刊行。
Instagram: @omiyuno

Photo: Daisuke Shimada  Hair & Make-up: kika  Edit & Text: Yu-ka Matsumoto

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