〈NIKE(ナイキ)〉とアーティストのMACCIU(マチュー) のコラボレーションが実現。「ナイキ エア ズーム MACCIU By You」が6月16日にNIKE.COMで発売した。この斬新なルックスのシューズは、スニーカーとしては珍しい“布団”をイメージした柔らかな素材を使い、配色も日本古来の配色を用いるなどジャパニーズアーティストらしいデザインが随所に見られる。その他にもシューレースを簡素化し取り扱いしやすくすることで、誰にでも開かれたデザインに仕上がっている。制作秘話や彼女のライフスタイルを探るべく、MACCIUにインタビューを行った。
「ナイキ エア ズーム MACCIU By You」が発売。ナイキとコラボしたアーティストのMACCIUにインタビュー
—どういった経緯でコラボレーションをするに至ったのですか。
「所属しているクリエイティブアソシエーション『CEKAI』が数年前から〈NIKE〉とイベントなどのお仕事をしていて、それがきっかけで私もデザインを一緒にすることになりました。今回は、特に2020年に向けて日本のアーティストとコラボレーションがしたいということで、お話をいだだきました。」
—どのようなシューズを製作しようと思って取り組んだのでしょう。
「スニーカーと出合った人たちの視界が、パッと明るく澄んで前向きになるような。そんなストーリーとデザインを兼ねそなえたシューズを、最初から構想していました。」
—スニーカーを手がける中で、新しい挑戦がありましたか。
「これまでに立体物を手がけたことがなかったので、初めての経験でした。〈NIKE〉のデザインがあまりに完璧だったので、今回のプロジェクトではグラフィックをあえて封印しました。シューズが持つ形としての美しさを生かしたいと思って。グラフィックデザイナーとしてこれは新しい挑戦だったと思います。」
—「ナイキ エア ズーム タイプ」は、ナイキ史上最速とされたシューズの一つのレガシーを受け継ぐものですが、履き心地はいかがでしたか。
「まるで雲の上を歩いているかのような履き心地の良さでした。ふわふわしていて、長時間歩いても疲れなさそうな印象があります。」
—MACCIUさんは、このシューズにどんなコーディネートを合わせる予定ですか?
「個人的に、歌手のビリー・アイリッシュに感銘を受けていて、普段から身体のラインを強調しないようちょっとルーズなシルエットを好んで着用しています。太いパンツを穿くことが多いので、合わせてみたいですね。とはいえ、このシューズを履きたいと思ってくださる方には、自由な発想と解釈で履いていただけたら嬉しいですね。」
—ご自身のライフスタイルの中で、ミニマルであるために意識していることは?
「今の世の中、物も情報も溢れているので、そういったものをそぎ落としていった方が、本質にたどりつきやすいのではないかと思っています。服装や生活においても、できる限り複雑にせず無駄なことをしたくない。極端な話ですが、必要のない労力や筋力を使いたくないというか(笑)。生活の範囲も小さくして、その中でいいものを作りたいという気持ちが大きいです。情報過多になると疲れてしまうことも、ミニマルな生活にこだわる理由です。」
—今回のコラボレーションで、気に入っているところはどこですか。
「すべて気に入っています。特にこのお布団のような素材は、実現できて良かったです。あとはシューレースを通す穴をミニマルにして、手数を減らして誰もが簡単に履けるようにしたことと、スウッシュやデザイン線もすべて簡素化して、ステッチのみで表現できたところも好きです。」
—“EQUALITY”という言葉も、デザインのコンセプトにあったと伺っています。
「私なりの”平等”の解釈を基にしています。生まれてから死ぬまで、何も予想することができない、という点について誰もが平等です。全ては自分次第。人生の中で起こることを肯定的に捉え、その未知なる予測不可能なものに感じる心地よさを表現しました。」
—京都出身であることは、クリエーションに影響していると思いますか。
「シューズのアッパーは“ファスト(FAST)”を表していて、ソールは“スロー(SLOW)”を表しています。私自身コロナ禍になる前は、東京と京都に拠点があり行き来する生活をしていました。どうしても東京は動くペースが早いので、パンクしそうになったら京都で制作。そういったライフスタイルだったので、このシューズのデザインに共感しますし、何か自然と表現できていることが嬉しいです。」
—コレクションの中でお気に入りのカラーはどれですか。
「ベースとなる配色は、日本古来から袈裟に用いられてきた「壊色(えしき)」というカラーに着目して、決定しました。プロトタイプとして提出したのは白でしたが、個人的にはグレーもいいなと思いました。」
—グラフィックデザイナーになる前は、クラブシーンの中でフォトグラファーをされていたと伺っています。
「フライヤーのデザインをしたり、パーティフォトを撮りに大阪や出身地の京都にあるクラブへよく足を運んでいました。特に影響を受けたのは、フォトグラファーの米原康正さん。彼の人を呼び寄せるキャラクターと、知らない人をも巻き込んで撮影をするスタイルに憧れていました。」
—クラブカルチャーに触れたことが、現在のクリエーションにつながっていると思いますか。
「それがすべてのはじまりだと思っています。“クラブカルチャー”という社交場があったおかげで、のちに自分の進むべき道を教えてくださった多くの先輩方と出会うことができました。私がもっとも尊敬するクリエイティブ・ディレクターのムラカミカイエさんもその一人です。この10年、カイエさんに頂いた言葉の数々を大切にしながら表現を続けてきました。そうした出会いに支えられて今の自分が形成されてきたんだと思います。」
—最後にGINZAmag.comの読者に向けてメッセージをどうぞ。
「6月13日からオンラインエキシビジョン『CHOICE BY MACCIU』を行っています。世界中どこからでもアクセスできますので、是非見に来ていただけると嬉しいです」
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MACCIU
京都出身。アーティスト、グラフィックデザイナー 。作品提供は国内外を問わず、アパレルメーカー、公共施設、書籍、TV番組、音楽業界など多岐に渡る。グラフィック提供から、有名ミュージシャンなどとのコラボレーションまで様々。
【MACCIU By Youナイキ エア ズーム】
取扱店: NIKE.COM/NIKE BY YOU
Text: Aika Kawada