今期のニューヨークコレクションで何よりも目立っていたのは、プラスサイズのモデルたちだった。毎回キャスティングが面白い〈eckhaus latta〉やまだ1年目の新ブランド〈Miaoxx〉などの注目の若手ブランドから〈J.Crew〉や 〈Prabal Gurung〉までの約10ブランドがプラスサイズモデルがランウェイを歩いていた。
〈eckhaus latta〉
〈Miaoxx〉
そういえば、『V MAGAZINE』で大々的にプラスサイズのモデルが取り上げられて話題になったことがあったなあ、なんて思い出して調べてみたら、2009年のことだった。当時はCrystal Rennというモデルが注目のプラスサイズモデルで、雑誌のファッションエディトリアルで取り上げられたりしていたけれど、今回はその舞台がランウェイへと移ったようだ。
2009年当時は、プラスサイズモデルをファッション誌で取り上げることにまだ賛否両論あった。美の基準のバロメータとされるファッション誌で規定外のボディタイプを取り上げることは提案として素晴らしいと賞賛される一方で、他の号では(特にビューティー号でも)スリムなモデルたちを使ってるのに、「どんなボディタイプも美しい」なんて矛盾する、などと指摘する声もあったり。個人的には確かに後者の意見はごもっともで、プラスサイズモデルはつまり、読者の気を引くための起爆剤として使われていたに過ぎないところがあった。
でも、時が変わって5年後の今。2018年春夏コレクションを見せるランウェイを歩くプラスサイズのモデルたちは、身長の低い人や年配の人、アンドロジナスな人、妊婦と、様々なボディタイプの中の一つとしてキャスティングされている。プラスサイズモデルも異種類のモデルの代表としてではなく、本当の多様性の一つとしての表現であり、それはつまり「なんであれ、ありのままの自分を受け入れよう」というような空気感が漂う。これは今のニューヨークの政治的にリベラルでいたいと思う人々の気持ちともリンクして、とても肯定的に受け入れられているようだ。
トランプ大統領が就任して以来、Black Lives Matterや女性の権利など、当たり前の人権を今一度確認する気持ちが高まっている中、ファッションを通して政治的なアピールをするブランドも増えてきている。年齢や体型をミックスしたモデルのキャスティングはさして新しいことではないかもしれないが、こういう時代だからこそなおさら響くこともあるんだなあと実感した。