7月末に東京で開催された世界巡回型ライヴイベント「プラダ エクステンズ トーキョー(PRADA EXTENDS TOKYO)」。キュレートを担うリッチー・ホウティンが語るパーティーの在り方を熱気に包まれた会場の様子とともにお届けします。
リッチー・ホウティンが創作する「プラダ エクステンズ トーキョー」!ダンスフロアの可能性
人々を結びつける手段として音楽に重点を置いた体験型イベント「ザ サウンド オブ プラダ」の一環としてスタートした世界巡回型ライヴイベント「プラダ エクステンズ」。パンデミック前から計画が練られていたプロジェクトがようやく実現したのは2021年11月のこと。会場となったのはイギリス・ロンドンにある現代美術館テートモダンだ。
このプロジェクトの創作とキュレーションを担当するのは、イギリス生まれでカナダ育ちのエレクトロニック・ミュージシャン、リッチー・ホウティン(別名義はプラスチックマン)だ。“ミニマル・テクノの帝王”という異名も持つ彼は、〈プラダ〉の2022年春夏メンズウェアコレクションのランウェイの曲も手掛けている。
そして、第二回となる開催場所には、東京が選ばれた。日本酒ソムリエの資格も持つリッチーは定期的に来日している。2年半ぶりの日本、そして待ち望んでいたパーティーの開催はリッチーの目にどのように映っているのか。
「日本に来ることができてとても嬉しいです。外国人観光客も少ないし、前に比べて静かに感じました。その中で来日できたことは、すごく特別な気持ちです」とリッチー。
「プラダ エクステンズ」の話は、ラフ・シモンズにもちかけられたという。〈プラダ〉との出合いも語ってくれた。
「1998年にリリースしたプラスチックマンの『Consumed』というアルバムがあるのですけれど、当時、“自分のルック”について考えていました。私はミニマルな音楽を作っていて、いかに頭の中に抱いているイメージをオーディエンスにピュアに伝えられるかを大事にしている。〈プラダ〉の洋服のデザインやシルエットを見たときにまさに“自分のルック”だと思いました。それなので、プロジェクトの話がきた時も、自分がキュレートするのはごく自然なことのように感じました」
そして、今回選ばれたのは、3名のDJ。韓国のプロデューサーおよびビートメーカー・アーティストであるLionclad、東京を拠点とするアーティストmachìna、日本のプロデューサーおよびエレクトロニック・ミュージシャンであるYuri Uranoだ。日本を拠点に活動するVJとともに一夜を盛り上げた。
「このプロジェクトは、〈プラダ〉のために手がけたランウェイの音楽の延長といえます。イメージやデザインに対して共通の価値観を持っていたから、ショーも成功した。ファッションは、視覚で感じるものですが、音楽は目を閉じて想像し、その中でイメージするものです。同じような意識で空間を作り上げられる方々をキュレートしました」
テクノの発祥の地、アメリカのミシガン州デトロイトで10代、20代を過ごしたリッチー。今後、世界を巡るこのプロジェクトやパーティーに求めるものとは。
「ダンスフロアは人と交流する場として最適です。音楽だけでなくいろんな分野のアーティストやクリエイターたちに集まってきてほしいと思っています。ただ仲良くするだけでなく、刺激を与え合い、アイデアを交換する。“友情と競争”という、お互いを高め合う関係こそ、デトロイトという地で学びました」
ラフ・シモンズと出会ったのも1990年代、ベルギーのクラブのダンスフロアだった。
「6〜7時間くらいDJしている中、満員の状態でみんなが汗だくになりながら踊り続けていて、そのなかの一人がラフ・シモンズでした。彼はエレクトロニックニュージックに対してものすごい情熱を傾けてくれている。今日まで、刺激し合える関係を築いてこれています。洋服、お酒、音楽……。人生というのは、どの要素を混ぜたら自分が気持ち良くなるかを探求することではないでしょうか。さらに、それを人と共有し、分かち合うことこそ、人生の楽しみ方だと思っています」
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Richie Hawtin
イギリス生まれカナダ育ち。エレクトロニック・ミュージシャン。PlastikmanやF.U.S.E.など、さまざまな名義を持ちサウンドを手がける。25年以上に渡り、日本の音楽と文化に深く関わり、日本酒ソムリエの資格も持つ。日本酒造青年協議会から「酒サムライ」賞も授与されている。