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sacaiの模様の謎を知りたくて!カリグラファーMIKITYPEさんに突撃

sacaiの模様の謎を知りたくて!カリグラファーMIKITYPEさんに突撃

早くも来シーズンの話で恐縮ですが、〈sacai〉の秋冬展示会へ行った時のこと。

流麗な曲線が連なるテキスタイルが印象的で、いったい何の柄なのだろう…と思って聞いてみたところ、MIKITYPEさんという日本人のカリグラファーの方が手掛けた文字をプリントしているとのこと。Instagramを覗いてみると、レタリングする動画や、ファッションブランドとコラボレートしたアイテムの写真がたくさん。カリグラフィーとは、西洋の書道のようなものですが、自分ではカードなどで見かけるくらいの浅い接点のみ。その堅いイメージを覆す多彩な表現は驚きでした。東京で活動されてるみたいだし、これはお会いしてみたい!ということで、文字を手掛けたご本人、MIKITYPEさんに話を聞きに行ってきました。

 

1展示会にて。シフォンやウールなど、色んな生地にカリグラフィーがプリントされて、目立っていた。

武蔵野美術大学デザイン情報学科出身で、現在23歳(意外と若い!)のMIKITYPEさん。元々、字が上手だったり、書道を習っていたというわけでもないそうですが、カリグラフィーをはじめたきっかけは何だったのでしょうか?

「元々タイポグラフィには関心があったのですが、大学1年生の2011年10月頃、ドイツの書体デザイナー、ヘルマン・ツァップさんの展覧会を見て、カリグラフィーに興味がわいたんです。アルファベットを手で描くということを芸術にしているのが衝撃で。その後、展覧会を主催していた三戸美奈子さんの教室に通い、あとは大学の図書館で本を読んで学びました」

ただ闇雲に書くだけでなく、書体の持つ歴史・意味を知り、自分らしい文字へと昇華していくことが大事だというカリグラフィーの世界にのめりこみ、Instagramで作品を発信するように。

「今は、日本でもインスタ然り、ウェブで情報を探して学ぶことが出来るようになってきているので、運がよかったです。ただ、インスタにアップし始めた頃もまだまだで、1ヶ月後に見返すと『下手だな』と思うこともありました。やっぱり本場なので海外からの反応は多いですね。海外の有名なカリグラファーの方がコメントでアドバイスしてくれたり。」

MIKITYPEさんの作品は、カリグラフィー用のつけペンや筆以外の道具で描くなど、新しい表現に溢れているのも魅力。色んな表現法にトライするようになったのは、2014年、大学3年生のとき、大学で行ったカリグラフィーの展示がきっかけでした。

「3年生の時の展示では、インクの濃淡があまりにも均一で綺麗すぎたので、プリントアウトしたものを展示しているのかと思われたんです。そこで、卒業制作では、アルミ缶やバルサ材(薄い木材)を切り出したものを筆として使い始めました。今はデジタル文字に囲まれる一方で、手書き文字への注目も進んでいます。手書きならではの、文字自体に時間を与えること、かすりやにじみなど表情を持たせることを目指しました」

 

2大学3年時から身体に文字を書く「Body Lettering」も制作。入念に文字デザインを練ったのち、マスキングテープで文字の位置を指定して、ポスカで2時間程かけて書くそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA2013年12月、大学3年時に展示したドイツ文字のカリグラフィー筆跡もなく美しくて、確かに申し訳ないことにデジタルで作ったかのように見えます…。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA2015年3月、卒業制作の展示「Lettershaping 息する時間を内包する文字」。表情が豊かですが、ドイツ文字は画数が多いので、それだけ筆跡で表現する余地が生まれるとのこと。

5実際に使用している道具の一部。テクスチャーが出るもの、ということでバルサ材(右上)を使うように。木がインクを含むので書きやすい

大学の友人の影響でファッションにも興味があり、次第にファッションブランドから仕事の依頼も舞い込むように。N.ハリウッドとのコラボレートや、三代目J Soul Brothersの衣装(!)も手掛けているそう。一つ一つ、書体、素材が異なり、どれも力強い文字で引きこまれます。

 

6初めてファッションブランドとコラボレートしたという、フラグメントデザイン×N.ハリウッドのジャケット。POOL AOYAMAで限定10着で販売された。

そして、sacaiから今回の話が来たのが、昨年末頃のこと。POOL AOYAMAでの仕事の時に知り合ったという、sacaiのクリエイティブ ディレクションを務める源馬大輔さんから連絡があった。

「Cadelという文字を装飾する技法があるのですが、この飾り文字が得意で。そこに興味を持ってくださったみたいで、このカリグラフィーをテキスタイルにしたいと話があり実現しました。カリグラフィーをメインにやっていこうと決めたときに、四大コレクションのどこかでコラボレートすることが目標のひとつだったので、NYでのN.ハリウッドに続いてパリでも参加させていただけて、とても光栄でした」

7Cadel文字の「R」。これで1文字とはなんとも豪華!装飾を加えて、オリジナリティーを出していきます。

判別しがたい文字列、飾り文字と聞いて納得です。カリグラフィーデザインは、どのように進められたのでしょうか?

「”Love will save the day”という2016AWのsacaiのキーワードを書きました。まず、LOVEの4文字が四角に並んで、真ん中にsacaiのSの文字があります。そして、”will save the day”の文字列と、それをつなげるように装飾を加えたデザインにしました。このカリグラフィーでは、純粋に綺麗であること、造形として美しいものを書こうとしました。ただ、混沌としているというか、線が密集している独特の空気感も出したかった。言ってしまえば、文字はひとつひとつただの線なので、それが集合して文字となったときに、どういう意味を持つのかを意識しました。
デザイナーの阿部さんとこまめにやりとりして、少しずつ確認しながら10日程かけて書き進めたのかな。そうして洋服になっているものを生で見た時は、やっぱり感動しましたね」

Sacai Paris RTW Fall Winter 2016 March 2016

Sacai Paris RTW Fall Winter 2016 March 2016

9胸のあたりに目を凝らすと…LOVEの文字が四角く並び、中央に「sacai」のSが。重なったボトムの下に、”will save the day”の文字が続きます。

Sacai Paris RTW Fall Winter 2016 March 2016

Sacai Paris RTW Fall Winter 2016 March 2016

お気に入りの一着を聞いてみたところ、選んだのがこちら。ジャケットにはカリグラフィーが刺繍され、ボトムにテキスタイルが使われています。

最後に厚かましくも実演をお願いしてみると、スルスルと綺麗な文字がそこに…「描くときは線だけじゃなくて、空間を意識すること。字が綺麗じゃないと思ったら、線と線の間のバランスを疑うといいのかもしれないです」

まるでそこにあるのが正しい、と思わせる、測ったかのようによどみのない線が引かれるのを見るのって、気持ちがいい。

11筆先は紙に対して30度をキープ。「ラフに書いているので」とのことでしたが、あっという間に美しい文字があらわれ…

12「ファウンデーショナル体」という、カリグラフィーを学ぶ際に一番初めに習う書体で書き上げてくださいました。ちなみに今、MIKITYPEさんは数十種類の書体をマスターしているらしい。

 

日々デジタル文字を追いかけるばかりで、手で書くことを忘れがちですが、MIKITYPEさんのあえて手書きの持つリアリティ、美しさを追求する姿勢に、これからどんな作品を生み出し、影響を与えていくのだろうと期待が膨らみます。歴史と美意識、創造性が絡みあった深い世界の一端に触れて、いつかGINZAでもご一緒できたらいいなと思いを馳せるのでした。

 


profile

MIKITYPE
1992年生まれ、北海道出身。直近では6月発売のスガシカオさんのCD「Progress」(プロフェッショナルのあの曲!)のジャケットも手掛ける。
website: http://mikitype.org/
instagram: @mikitype

編集C

打合せや取材でノートPCを開いてメモすることに憧れつつも、もっぱらノートに手書きしてしまうアナログ派。あまりにもロマン溢れる話を伺っているうちに、カリグラフィーに挑戦してみたくなりました。

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