初めてファッションブランドとコラボレートしたという、フラグメントデザイン×N.ハリウッドのジャケット。POOL AOYAMAで限定10着で販売された。
そして、sacaiから今回の話が来たのが、昨年末頃のこと。POOL AOYAMAでの仕事の時に知り合ったという、sacaiのクリエイティブ ディレクションを務める源馬大輔さんから連絡があった。
「Cadelという文字を装飾する技法があるのですが、この飾り文字が得意で。そこに興味を持ってくださったみたいで、このカリグラフィーをテキスタイルにしたいと話があり実現しました。カリグラフィーをメインにやっていこうと決めたときに、四大コレクションのどこかでコラボレートすることが目標のひとつだったので、NYでのN.ハリウッドに続いてパリでも参加させていただけて、とても光栄でした」
Cadel文字の「R」。これで1文字とはなんとも豪華!装飾を加えて、オリジナリティーを出していきます。
判別しがたい文字列、飾り文字と聞いて納得です。カリグラフィーデザインは、どのように進められたのでしょうか?
「”Love will save the day”という2016AWのsacaiのキーワードを書きました。まず、LOVEの4文字が四角に並んで、真ん中にsacaiのSの文字があります。そして、”will save the day”の文字列と、それをつなげるように装飾を加えたデザインにしました。このカリグラフィーでは、純粋に綺麗であること、造形として美しいものを書こうとしました。ただ、混沌としているというか、線が密集している独特の空気感も出したかった。言ってしまえば、文字はひとつひとつただの線なので、それが集合して文字となったときに、どういう意味を持つのかを意識しました。
デザイナーの阿部さんとこまめにやりとりして、少しずつ確認しながら10日程かけて書き進めたのかな。そうして洋服になっているものを生で見た時は、やっぱり感動しましたね」
Sacai Paris RTW Fall Winter 2016 March 2016
胸のあたりに目を凝らすと…LOVEの文字が四角く並び、中央に「sacai」のSが。重なったボトムの下に、”will save the day”の文字が続きます。
Sacai Paris RTW Fall Winter 2016 March 2016
お気に入りの一着を聞いてみたところ、選んだのがこちら。ジャケットにはカリグラフィーが刺繍され、ボトムにテキスタイルが使われています。
最後に厚かましくも実演をお願いしてみると、スルスルと綺麗な文字がそこに…「描くときは線だけじゃなくて、空間を意識すること。字が綺麗じゃないと思ったら、線と線の間のバランスを疑うといいのかもしれないです」
まるでそこにあるのが正しい、と思わせる、測ったかのようによどみのない線が引かれるのを見るのって、気持ちがいい。
筆先は紙に対して30度をキープ。「ラフに書いているので」とのことでしたが、あっという間に美しい文字があらわれ…
「ファウンデーショナル体」という、カリグラフィーを学ぶ際に一番初めに習う書体で書き上げてくださいました。ちなみに今、MIKITYPEさんは数十種類の書体をマスターしているらしい。
日々デジタル文字を追いかけるばかりで、手で書くことを忘れがちですが、MIKITYPEさんのあえて手書きの持つリアリティ、美しさを追求する姿勢に、これからどんな作品を生み出し、影響を与えていくのだろうと期待が膨らみます。歴史と美意識、創造性が絡みあった深い世界の一端に触れて、いつかGINZAでもご一緒できたらいいなと思いを馳せるのでした。