7月14日神宮前アディション アデライデ。メンズファッション界のライジングスターがイタリアから来てますよ、とのことで駆けつけました。SELF MADE BY GIANFRANCO VILLEGASのデザイナー、ジャンフランコ・ヴィレガス。PITTI UOMOで、若手デザイナー8人を毎年選出するWHO is NEXTに選ばれた、つまりは「これからくるデザイナーリスト」に名を連ねる男である。
彼のなにが面白いか、って? デザインもさることながら、その背景にそそられる。まずはトラッドなフィレンツェの街からファッション界にデビューしたフィリピン二世のイタリア人であること。それって、簡単なことじゃない。そして、彼をデザイナーとしてバックアップしつづけたのは、われら日本人のおしゃれ魂だってこと。
SELF MADE BY GIANFRANCO VILLEGASのデザイナー、ジャンフランコ・ヴィレガス
「小さいときからメンズファッションに興味を持っていたけど、リッチな生まれじゃないからね。14歳から働いて働いてポリモーダ(フィレンツェの服飾専門学校)に入学したんだ」。聞けば彼はフィリピンからやってきたシングルマザーの母のもとフィレンツェで育った。ラフ・シモンズとエディ・スリマンに憧れた彼は、遊んでる暇なんて全然なくて、学校とアルバイトを両立しながら、デザイナーへの道を突っ走った。とつとつと話す彼から、この男は「本気=マジ」だ、と感じた。「ファッションに本気=マジ」なんだ、と。
「僕の境遇はラッキーだよ。歴史あるアートの街フィレンツェで、フィリピンの家庭に育って。イタリア文化の持つ細部にこだわるセンスと、フィリピンの、つまりはアメリカンポップカルチャーに強い影響を受けた文化、その両方を当たり前に肌で感じて育ってきたからね」そう言う彼の服は、100%イタリアンメイド。Tシャツ、レザーのウェストポーチ、レザーブーツ、良質でシンプルなアイテムに刺繍を施し、デザイン性を高めている。「プロダクションはフィレンツェのそば、トスカーナ州が大半。素晴らしい職人が多いんだ。でも小さな工房はどんどん潰れていってるのも現状。原価を下げたいけど、彼らイタリア職人の生活もかかってるからね」。これまでも、バナナの繊維のテキスタイルを使用したり、カラフルな三輪ジープをモチーフにしたりと、フィリピン文化を取り入れてきた。「フィリピンに恩返しができるかなと思って」。どこまでも真面目である。
「ブランド名だけが大事だったり、有名な誰かが着たからバカ売れする、そういう最近の風潮に辟易してるんだ。僕にとって『ファッション=自分の人生』なの。大きなブランドの中でデザイナーとしてキャリアアップしていく方法ももちろんある。でも僕は自分のブランドで戦いたい」
そのチャンスを作ったのは、日本だと言っても過言ではない。ポリモーダ校の卒業コレクションのすべてを、セレクトショップ「アディション アデライデ」が買い取り、販売した。「いきなりマルジェラやラフ・シモンズの服の横に、僕の服が並んだんだ。すごいことだよね。それを足がかりにSELF MADEは世界的に注目されるようになった。ブランド名の入ったラベルでなくて、服そのものを見て判断する。聞いたことないブランドでも気に入ったら買ってくれる。服の裏にあるデザイナーの意図を理解しようとする。日本だけだよ、こういうの」。
「SELF MADEは自分自身のパーソナルな日記のようなもの」と言う。ファーストコレクション20015/16AWのテーマは「YOU ARE MY HERO」。彼にとって、かけがえのないお母さんに捧げたコレクションだった。今回の初来日のイベントで見せたドローイングパフォーマンス「VITA」(イタリア語で人生の意味)でも、自分の人生を5章に見立て、まずは「DEAR MAMA」の文字から描きはじめた。次々に彼は自身のメッセージを、Tシャツが貼られた黒いメタルのロッカーボックスの上に描いていく。2018SS最新コレクションのテーマ「WE GOT SOUL, DON’T BELIEVE THE HYPE」のフレーズも。デザイナーのジャンフランコを筆頭に、このブランドを回すチームは「ファッションは自分の人生そのもの」という「SOUL」をもった10数名だという。パブリック・エナミーが「DON’T BELIEVE THE HYPE」で歌ったように、メディアに振り回されるだけのファッションなんていらない、と信じて進む精鋭たちだ。デビューから3年たった今、フィレンツェとパリ、半々で生活しているジャンフランコ・ヴィレガス。初来日だが「実はまだぜんぜん東京を見れてない」という働き者すぎる26歳。まだまだ続く彼の人生日記が、ファッションを通してどう描かれていくのかが楽しみなのです。
「DEAR MAMA」から始められたドローイング。
「コムスター?」などタガログ語の会話が刺繍されたTシャツ。
ドローイング後半では、マシンガン型の水鉄砲からペンキを発射。
パフォーマンスは二部構成で、まずは3枚のTシャツを仕上げた。
イベントの動画はこちらからご覧いただけます。
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