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北村道子:「自分だけのコンフォタブルを追求する」。スタイリストが語る、毎日のワードローブ哲学

北村道子:「自分だけのコンフォタブルを追求する」。スタイリストが語る、毎日のワードローブ哲学

見て、選び、着ることで生まれる経験と美学。スタイリストが語るフィロソフィーとルールから、“私”を導く装いのヒントを手に入れたい。#毎日のワードローブ哲学


 

自分だけのコンフォタブルを追求する

北村道子

スタイリスト 北村道子 ワードローブ

「私は裏通りの人間だから」と北村道子さんは語る。ポートレイトの撮影中も、新宿中央公園で見ず知らずの男性とごく自然に会話を交わす。この日は〈タイムウォーンクロージング〉のメンズのTシャツとスイムパンツに〈コム デ ギャルソン〉のガウンを羽織り、足元は〈メゾン マルジェラ〉のタビシューズ。自身でブーツの踵をカットしたという靴からは、彼女のファッション哲学が見てとれる。世の中の〝当たり前〟に疑問を呈し、本を漁って納得がいくまでとことん調べる。そして、何より面白がることを忘れない。
「裏通りでカルチャーを学んで、それをファッションに取り入れてきました。男性服を女性に着せるし、“おかしい”と思われることを平気でしてきた。1枚30万円もするTシャツが世に出回るなんてそもそも普通じゃないんだから、ファッション写真では究極に〝いけないこと〟をしないとデザイナーの表現へのエクスキューズにはならないと思っています。スタイリングはおかしくてOK。写真が高貴であればね」
1988年のブランドデビュー以来、公私共に変わらない愛情を注いできた〈メゾン マルジェラ〉に対しても、北村さんならではのルールがある。ネームタグの四点留めは必ず切ること。発想が好きで着ているから、マークはいらない。服に穴が空いても、自分で繕い、着続ける。
「初期の〈メゾン マルタン マルジェラ〉からは、良いライダースを買えなかったら自分でペイントするっていうフィロソフィーが感じられる。私は自分のバッグをリキテックスで塗っていたんですが、どうしても割れて剝がれてきてしまう。そのうちに、マルタンが白のペンキでコーティングされた日常でも使いやすい商品を発表したんですよね。塗料まで工夫するのが彼のすごいところです」
革のバッグと財布はすべて〈トム フォード〉。白いワイシャツは〈コム デ ギャルソン〉、Tシャツは〈ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン〉が北村さんの定番だ。〈リック・オウエンス〉は肌に合うというドーバー ストリート マーケット ギンザのエクスクルーシブ商品の中から手に取る。10万円以上するものは信頼するブランドで1年に1回購入。それ以外に必要なものは無印良品でそろえるそうだ。
「基本的に私が着る服はワークウェアだから、すべてにお金はかけられない。川久保玲さんは目利きだから、『ドーバー ストリート マーケット ギンザ』に1日いるだけで勉強になりますよ。本も雑誌もあるし、3時間だっていい。私は買いものをしたら、7階のローズベーカリーでごはんを食べて、日比谷駅まで歩いて帰るんです。大きなショッピングバッグを抱えてね」
「コンフォタブルでない限りは自分のものではない」というのが、北村さんの装いに対する思想だ。その考えは幼少期から現在に至るまで、彼女を支える軸となってきた。
「私は小学校も中学校も高校も、ほとんど行っていません。面白くないと思ったら、やらないっていうのが私の流儀ですから」
信念を持って意思を貫く生き方、経験が生み出す物語と言葉、そしてファッション哲学。すべてが一本の線上につながり、そこから導き出された装いが、北村さんそのものを表現しているのだろう。

スタイリスト 北村道子 ワードローブ

肉体が服を変化させる
「“格好良いな〟と思うのは、肉体に合った服選びをしている人。着倒したTシャツや、鍛えられたヒップに合わせたパンツは、ウィンドウディスプレイと比べ物にならないくらいよく見えます」

家族の装いの共通項は“黒”
「子どもに与えられがちな群青色ではなく、黒を着て育ちました。姉は黒のサージ生地で作ったセーラー服に黒い鞄。私はセーラー服さえも着ていませんでしたが、黒い傘を手にした時、気持ちが楽だったのを覚えています」

スタイリスト 北村道子 ワードローブ

刈り上げのボブは床屋で
「ヘアカットは近所の床屋で1800円で済ませます。とにかくクイックだし、オーダーの仕方も慣れたものよ。たくさん持っている〈白山眼鏡〉のメガネから今日は白のフレームを」

まとう色は影のようなもの
「似合う色はシャドーでしょうか。私自身が邪魔な存在だから、せめて着るものくらいは邪魔にならないものをと思ってます」

スタイリスト 北村道子 ワードローブ

ジャケット、靴、バッグは5年に一度
「良いものをとことん吟味して納得のいくものを購入します。〈トム フォード〉のバッグは横から見た時のフォルムも面白い。タビローファーは踵を踏んでスリッパのようにしてはくんです」

ヴィジュアルで生きている
「ものすごく覚えがいいんです。初対面の時にその人の格好をしつこく見ている。その記憶がない時のことは忘れていきます」

スタイリスト 北村道子 ワードローブ

自分流に作り変える
「今日着ているボトムはメンズのスイムウェア。内側のメッシュは切って外しています。破れたら継ぐ。いらない布は切るし、タビブーツだって昔から自分でカットしていました。そして気に入った服はとことん着倒すんです」

北村道子 きたむら・みちこ

1949年、石川県生まれ。10代でアメリカ大陸一周の旅に。1年間のパリ滞在を経て、帰国後はスタイリストの道へ。『それから』(85)で映画衣裳デビュー。著書に『衣裳術 2』『衣装術《新装版》』(共にリトルモア)などがある。

Photo: Yuri Manabe Text&Edit: Sakiko Fukuhara

GINZA2020年9月号掲載

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