10 Feb 2023
クローゼットの宝もの Waka Adachiさんのミリタリーパンツ、レザージャケット

現代のものにはない色や柄、フォルムに無性に惹かれるのはなぜだろう。時間という魔法にかけられて、それらはとってもチャーミングな輝きを放つ。ヴィンテージを愛する人に“いちばんのお気に入り”を見せてもらいました。
「昔から、人とかぶらない服が好き。高校の頃は『Zipper』に載っている男の子っぽい古着に憧れ、90年代は矢沢あいさんの漫画『ご近所物語』の、エッジの効いたファッションに夢中。仕事の幅を広げたくてヴィンテージ天国のロンドンで過ごした6年間を経て、今はメンズの古着が多いですね」
そう語るヘアスタイリストのWaka Adachiさんが手にしたのは、黒のレザージャケットとミリタリーパンツ。どちらもメンズで、ジャケットに至ってはXLサイズ。どう見ても細身の女性には大きすぎると思いきや、Tシャツの上にさっと羽織った姿の、さまになることといったら!ジャケットの肩が肘近くまで落ちて生地がたまっている感じも、無造作にまくった袖から細い手首が見えるのも素敵なのだ。
ワードローブに古着が増えたのは、ロンドンで活動した2014年から2020年までの間。この2着もその時に手に入れた。
「ジャケットは、ファッションウィークでパリへ行った時にのぞいた店で、試着して即購入。フランス人のおじいちゃんが着てたのかな、みたいな佇まいもよかったし、何よりサイズ感がしっくりきたんです。アーミーパンツはパートナーがはいていたものを譲ってもらいました。ベルトでキュッと締めて、ゆるっとはいています」
また、当時少なからぬ影響を受けたのが、インディペンデント雑誌の撮影現場で見た、メンズファッションのスタイリング。
「ジャージーと革を合わせたりして、古着を上手に取り入れていたんです。それが無性にカッコよくて。私もよくこのレザージャケットとジャージーを重ね着してました」
そんなWakaさんが古着を選ぶ時に重視するのは、サイズ感とシルエット。
「トップもボトムもオーバーサイズが心地いい。シルエットは体のラインを拾わないものが落ち着きます。レディスよりメンズを選んでしまうのはそのせいでしょうね。それに、オーバーサイズは懐が深いというか、何と合わせても格好がつく。パーカでもニットでも、ツッコミが入るようなヘンテコ柄のTシャツでも、亡くなったおばあちゃんの黄色いカーディガンでも。いつでも自分らしく着られる気がするんです」
Waka Adachi
ワカ・アダチ>> ヘアスタイリスト。美容師を経て渡英。パリ・ミラノ・ロンドンのファッションウィークにも携わった後に帰国。ファッション広告や雑誌など多岐にわたり活動中。
Photo: Ayumu Yoshida Text: Masae Wako
GINZA2022年12月号掲載