人の出入りが多く、忙しない繁盛店ほど床の劣化は早い。それゆえシンプルで丈夫な床材を使っている店が多いけれど、ふと入った店で、凝った柄の床材が使われているとつい見入ってしまいます。劣化を恐れず果敢にも洒落た床材を選んだ店には拍手を送りたくなる。そんなステキな床とおいしい食べ物をご紹介。
「アラスカ」「アランダルース」「タナベベーカリー」ステキな床を眺めながらご飯が食べたい!おいしい床探し
窓からの眺めも、床の眺めも素晴らしい「アラスカ」
地下鉄東西線竹橋駅と直結するパレスサイドビルの最上階にあるレストラン「アラスカ」は、1963年にビルが建った当時から入っている創業80年以上の歴史を持つ老舗。皇居とその先にそびえ建つビル群とともに食事を楽しめる優雅な空間です。こちらの素晴らしさは景色や料理だけではありません。
入り口、廊下、個室、メインフロアに渡って敷かれたジオメトリック柄のカーペット思わず感動。色のパターンは緑と赤で、切り替え部分の柄合わせ(よく見ると柄がひとつ分ズレていて、そこもいい!)にもときめきます。床材の中でも特に劣化が早いカーペットですが、51年の間に張り替えたのはわずか2回。現在のカーペットは15年前に張り替えたそうで、細やかなメンテナンスによって、きれいに保たれています。
【アラスカ】
TEL:03-3216-2797
住所:東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル9F
営業時間:11:30~15:00 17:00~23:00
定休日:土曜、日曜、祝日
スペインとモロッコのタイルに心踊る「アランダルース」
江古田駅の近くにあるスペイン&モロッコ料理が楽しめる「アランダルース」。店主がコツコツと内装を手がけたという広い店内は、スペインから取り寄せたタイルを床に、モロッコタイルを壁やカウンターに、さらには手作りのパネルが壁や天井に張り巡らせていて、リトル・アルハンブラ宮殿といった雰囲気。
ランチはボリューミーなタジン料理(¥1200)とパエリア(¥1200)のほか、サンドイッチ(¥700)などがあり、すべてドリンク付き。写真は魚介のパエリアとモロッコティー。これでもかというほど具沢山のパエリアで満腹になったお腹を、モロッコティーの爽やかな甘さが癒してくれます。
【アランダルース】
TEL:03-3565-1301
住所:東京都練馬区旭ヶ丘1-74-1 瀧島ビル2F
営業時間:11:00~15:00 17:00~23:00
定休日:火曜
床もオリジナルのパッケージもキュート!「タナベベーカリー」
筆者の地元・高知県西部にある窪川駅の周辺は大きくはないけれど、散歩しがいのある街。目当ての喫茶店の向かいに当たり前のようにあったパン屋が気になって入ってみると、そこはステキな床とパンの天国でした。一見単純な柄ですが、連続する八角形と花のように連なった四角いモチーフが可愛らしい。
そして何より心惹かれたのが、パン……も、ですが、そのパッケージ。昔、地元の印刷屋さんに発注した完全オリジナルのものを含め、この地域ならではのものばかり。「タナベベーカリー」の帽子パン(高知県のご当地パン)はツバが小さめなモダンなタイプ。甲斐みのりさんの著書「地元パン手帖」好き(自分のことですが……)にはたまらないお店です。
対応してくださったのは2代目の店主でしたが、60年以上続くこちらは96歳になる創業者もなんと現役!お会いしたかったです。
【タナベベーカリー】
TEL:0880-22-0341
住所:高知県高岡郡四万十町茂串町5015
営業時間: 7:30~19:00
定休日:日曜
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西村依莉
編集者・ライター。ファッション誌・ライフスタイル誌を中心に活動しつつ、高度経済成長期のステキな建築や街の風景を日々記録している。グラフィック社から『足の下のステキな床』(グラフィックデザイナーの今井晶子、フォトグラファーの奥川純一との共著)、大福書林から『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』(東京ビルさんぽ名義での共著)が発売中。
【イベント情報】
『足の下のステキな床』presents 新春床祭り ー街へステキな床や喫茶を探しにー
著者ゆかりの地·愛知県岡崎市の老舗せんべい店の2階にある読書室で、床の写真展を開催。1月13日にはカメラマンの千葉亜津子さんを迎えてのトークショーも。
期間:2018年1月6日~14日
場所:一隆堂読書室(愛知県岡崎市連尺通3-18 一隆堂ビル2階)
Edit&text: Eri Nishimura