24 May 2018
今行くなら”半分くらい外”の店 ボン花火

〈駒形 ボン花火〉
夕景に遠のいていく船を、 川のほとりでおでんと見送る。
東京には川床がある。駒形の隅田川の川っぺりに。京都・鴨川の納涼床のように夕焼けで北の山並みが真っ赤、みたいないわゆる絶景とはまた違うけれど、対岸に望む浅草のシンボルとマンション群、首都高速6号向島線がオレンジに染まっていく姿は、東京イーストサイドの正しい夕景に違いない。その手前を、ぼんやりと明かりを灯した屋形船が通り過ぎていく。あの高い高いスカイツリーをバックに従えた、ノスタルジックな川面の存在感たるや。感動。運ばれてきたおでんの大根は、心なしかすこしだけのっぽ。うん、よく浸みていて、冬でなくともやっぱりうまい。気持ちの良い川風に吹かれながら、クラフトビールでほろ酔い気分。ところで河川の敷地利用というのには細かいルールがあり、東京都から隅田川で実験的に利用を認められた数店のうちのひとつが、このお店らしい。いずれ川床の店ももっと増えて、この穏やかな風景も変わっていくのかもしれない。それでも時間は過ぎると言わんばかりに、屋形船がまた一隻、橋をくぐって小さくなる。一説には、東京の夏は隅田川の花火大会から始まるらしいけど、ちょうどこの店の前が打ち上げ会場なのらしい。なるほどそれで、〝ボン花火〟。まず店の名前からして最高だった。
おでんは大根、玉子、こんにゃく、厚揚げ、さつま揚げがあり、それぞれ¥200から。日本のクラフトビールのほか、各地の梅酒も充実。
「ボン花火」
住: 東京都台東区駒形2-1-7 MKビル
☎: 03-5830-1180
営: 11:30〜14:00LO・17:30〜23:00LO、土日祝11:30〜23:00LO
住: 無休
他の“半分くらい外”の店はこちらから。
Photo: Kazuharu Igarashi Text: Neo Iida
GINZA2018年6月号掲載