〈FOOD〉夏の終りのハーモニー Vol.1

〈FOOD〉夏の終りのハーモニー Vol.1

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一番好きだと思った季節が、今年も終ろうとしている。そんなとき、どこからか流れてきた1曲の歌がある。1986年8月20日、明治神宮球場のコンサートで初めて披露された名曲「夏の終りのハーモニー」。井上陽水と玉置浩二という強い個性が混ざって生まれた、何にも代えがたい幸せな調和。同じように、アイコニックな2つの素材が合わさった料理には、どこか心惹かれてしまう。噛みしめるべき味覚のハーモニーが、そこには確かに存在するから。最高だった夏と一緒に、夢のような1皿を、いつまでもずっと忘れずに。


どうげん
りんご

どうげん 肉とりんご

道玄坂の奥で邂逅した、トロッと肉とサクッと果実。

渋谷の百軒店の超ディープなホテル街の一角にある焼肉ホルモンの店「どうげん」の看板メニュー 「りんご」の誕生は、オーナーの金京男さんのひらめきで生まれた。「消化酵素を含む梨は焼肉のタレや付け合わせにあるけど、夏から秋と収穫期間が限定される。その点、ハウス栽培もされているりんごなら年中提供できるのでは?」と思いついたのがきっかけ。A4黒毛和牛の肩の筋肉が交差しているちょうどド真ん中の希少部位であるロース芯は、さっと炙って頬張ると一瞬でとろけ、噛むほどに旨味がドバッとあふれ出す。そこに、酸味とフルーティな甘さがあるサクサクした歯触りのりんごを加えたら奇跡のサクトロ食感が完成した。出逢うべき運命とは、まさにこのこと。

「どうげん」
「りんご」は1枚 ¥600。〆は感動的な「ザ・麺」が鉄則。店内はダクトなしだから煙まみれ。その雑多な感じもまたいい。
: 東京都渋谷区道玄坂2-19-10

☎: 03-6416-1729
: 18:00〜24:00
: 不定休

 

食堂とだか
ウニ と 煮玉子

食堂とだか うに

ワンフィンガーで 口の中は大海原に。

スナックや居酒屋、バーが軒を連ねるリバーライトビル、通称〝五反田ヒルズ〟の最高峰として美食家が集う「食堂とだか」に入ってまず驚かされるのは奇想天外なメニューの数々だ。「鮎餃子」「甘納豆チーズタワー」「アンチョビ椎茸」など、店主の戸高雄平さんが生み出す創作料理はどれも見た目と味の想像がつかないものばかり。その中で特に目立つのが「ウニ・オン・ザ・煮玉子」。注文すると、見るからにネーミングを完璧に体現していて、平皿にちょこんとのって現れる佇まいがとにかく可愛い。「脳内キッチンで試行錯誤してたどり着いた」という味はいかに。早速、ぐにゃんとよろめく玉子をしっかりつかんで口の中へ放り込むと、ぷりっとしたウニから磯の香りがバッとあふれ、ウニペーストを混ぜた醤油と濃厚な黄身がとろ〜んと絡み合い、舌の上がミルキーな大海原へと一変。壮大なイリュージョンの後は幸せな余韻だけが残る。ずっと続けばいいのに。

「食堂とだか」
プラス¥200でイクラを追加可能。「ウニ・オン・ザ・煮玉子」¥700。「生おろしレモンサワー」も衝撃のうまさ。
: 東京都品川区西五反田1-9-3 リバーライトビル B1 

☎: 03-6420-3734 
: 18:00〜24:00LO 
: 日

 

サーモンアンドトラウト
キウイパクチー

サーモンアンドトラウト キウイとパクチー

口に入れた瞬間にすっと吹く、涼やかな秋の風。

代沢にある「サーモンアンドトラウト」のシェフ、森枝幹さんはハーモニー料理の伝道師だ。和洋折衷の調理法を縦横無尽にアレンジし、あっと仰天する食材を駆使して変幻自在な一品を繰り出す。コース料理にはザリガニやブラックバスなど、一般的に食されないものがオンパレードで、「ホヤとスイカ」のような斬新なペアリングも次々と登場。毎月食材が異なり、いつ訪れても驚きの連続なのだが、唯一定番として提供され続けているのが「パクチーキウイ」だ。パッと頬張ればみずみずしさと清涼感が重なり合い、酸っぱいライムとフェンネルの甘い香りが調和。塩漬けした山椒も噛むほどに現れ、清々しい風が吹く草原の丘に瞬間移動したような、不思議な感覚に包まれる。

「サーモンアンドトラウト」
コース ¥8,000。前菜、スープ、揚げ物の後に「パクチーキウイ」は口直しとして登場するが、献立は毎回予測不能。
: 東京都世田谷区代沢4-42-7

☎: 080-4816-1831
: 18:00〜24:00
: 火水

 

おこん
海の幸

おこん 渋谷

最高の土台の上で奏でる 超濃厚なぜいたく。

ピンク色のジューシーなローストビーフにウニ、イクラ、キャビアの海の宝石たち。代々木上原「おこん」のローストビーフの土鍋ご飯は、一度お肉を別皿にわけ、ご飯をしっかり混ぜてから肉巻きで頬張るのがお作法。牛肉のベールからあふれ出た海の幸に、生きててよかったと素直に感動。その喜びを支えるのは、土鍋で炊かれた銀色のお米。「今日は福島県産『にこまる』と高知県産『きぬむすめ』のブレンド米。土台の米があるから叶えられる夢のご飯なんです」と店主小栁津大介さん。粒がそろい、甘く、豪華絢爛な食材でないと釣り合わないほど力強い。2つの大きな個性の後ろで安全地帯が淡々と演奏していたように、素晴らしいバックバンドがあってこそハーモニーは引き立つ。夏の隠し味、アボカドとコーンも爽やか。「米は冷めるとより甘くなります」と小栁津さん。冷めても甘い、夢の中へ。

「おこん」
メニューはコースのみ。白米をそのまま味わうウェルカムライスに始まり、先付け、刺身、メイン、土鍋ご飯で¥5,000〜。
: 東京都渋谷区西原2-48-2

☎: 03-3469-5004
: 18:00〜24:00、土日祝15:00〜22:00
: 火
Photo:Sachie Abiko,Kazuharu Igarashi Text: Kyosuke Nitta,Ryoko Iino Cooperation: Akiko Matsuki

GINZA2018年9月号掲載

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