小さな料理 大きな味 26
赤い宝石
コロナ禍の状況下、どんなふうに過ごしていますか。
おのずと自宅で過ごす時間が増え、台所に立つ機会が多くなっているのではないでしょうか。私も同じです。もともと長年のテレワーク状態、机の前に座る時間は変わらなくても、誰かと会ったり外出する機会がないから、掃除したり、鍋を磨いたり、重箱の隅をつつくように風呂掃除をしたり、家事を気分転換の手段に使おうとしている。これはこれで、まいっか、と思いながら。
でも、ずるずると家事に引きずりこまれるのも、ちょっと。うちにいる時間が長いとしても、めりはりは必要。時間の流れに緩急をつければ、能率も上がるし気分もいい。
手間も時間もかからず、必ずおいしく、日持ちもOK、応用範囲が広い一品を紹介します。
それは、赤い宝石のように艶やかに光って美しい。
【材料】
プチトマト20個 にんにく半かけ 塩ひとつまみ
【作り方】
①プチトマトのへたを取り、縦半分に切る。
②冷たいままのテフロン加工のフライパンに、プチトマトの断面を下にして並べる。
③つぶしたにんにくを入れて中火にかけ、熱くなって汁気が出てきたら表裏を返す。
④ひとつまみの塩をぱらぱらと振って全体をざっくり大きく合わせ、すぐ火を止める。
⑤粗熱がとれたら、鍋肌にくっついている焦げやにんにくもいっしょに、一個ずつ容器に移して保存する。
フライパンに並べて火から下ろすまで、せいぜい2分ちょっと。唯一のポイントは、煮ないこと。〝煮過ぎない〟のではなく、〝煮ない〟〝混ぜない〟。着地点は、一個ずつの形を残すところにある。
以前はとろんと煮込んでいたのです。でも、つぶしてしまうとトマトピュレやソースと同じになるから、皮や形や食べごたえを残してごろごろの存在感を尊重してみようと考えた。天板に並べてオーブンでじっくり焼いて乾かす方法もあるけれど、その真逆をいってもプチトマトの濃いうまみは生かせるんじゃないか。
赤い宝石は普段使いからラグジュアリーな場面まで。ちゃちゃっと食事をすませたいとき、ゆでたペンネに赤いのをのせ、オリーブオイルをたらす。朝食のオムレツや玉子焼き、ときどきトーストにのせたりもする。ワインを開けた夜は、サラダに添えると赤い輝きがまぶしい。肉のソテーの付け合わせにもたっぷりどうぞ。
時間と手間を極力かけず、おいしい食卓を引き寄せる力がこの赤い宝石にはある。