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かぶの攻略にもってこいの一品。豚ばら肉と厚切りかぶ炒め。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.33

かぶの攻略にもってこいの一品。豚ばら肉と厚切りかぶ炒め。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.33

小さな料理 大きな味 33

かぶの白

「今日は大雪なのに、暖かいです」

北国に住む知人から来たメールの一行めに書いてあった。

「大雪」と「暖かい」をうまく重ね合わせられず、何度か読み直して想像してみるのだがむずかしい。この感覚は、冬が来るたび雪と付き合わなくてはならない土地に暮らさなければ、きっとわからない。東北で生まれ育ったべつの友人は、八甲田山にはじめての冠雪が積もったというニュースを聞くと、「ああ、また雪かきの季節が来るのかと思うとプチ憂鬱なんだよね」と言っていた。でも、「小学生の頃から年季が入っているから、雪かきの巧さとスピードは誰にも負けない」。

北国の冬の厳しさを思うと、自分が知っている冬など間口が狭い、甘っちょろい。とはいえ、こればかりはどうなるものでもなく、でっぷり太った白菜一個の過激な重さにひるむことなく向かっていこう、自分なりの気合いを入れる。

寒くなれば野菜の白が際立つ。白菜、長ねぎ、大根、かぶ。ただ白いのではない。たとえば、かぶは純白の球体に漲る力の結実。冬の日差しを弾き返す白がたくましく、よしきっちり向き合おうと思わせられる。

かぶの味は、火が入り過ぎれば一瞬で崩れる。ぴちっと張った緊張の糸が切れ、ぐずぐずの毛糸玉になってしまうから用心したい。いっぽう、火の入り具合を寸止めにすれば、キレ味は上々。かぶを相手にするときは「はっけよい、残った残った」、行司に煽られる気分になる。

かぶの攻略にもってこいの一品を紹介します。

厚めに切ったかぶを炒めるだけの簡単な料理だが、もたつくと足もとをすくわれる。かぶはなかなか手厳しい。

【材料】
かぶ(大玉)2個 豚ばら肉150g 酒小さじ1 オリーブオイル小さじ2 塩・こしょう

【作り方】
①かぶを、皮つきのまま厚さ5ミリくらいに切る。

②豚ばら肉を4センチ角くらいに切る。

③フライパンを熱してオリーブオイルを注ぎ、豚肉を炒める。

④きつね色になったらかぶを加え、油となじませながら炒め、酒、塩、こしょうを振る。

冬になるたび、繰り返し何度もつくる料理。そのたび、つくり馴れているはずなのに、ぴりっと緊張する。かぶの真価を逃すのがもったいなくて、いつも気が抜けない。その気の抜けなさが冬の寒さとそっくりだ。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らしをテーマに執筆活動を行う。『買えない味』で第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。『味なメニュー』(新潮文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『暮らしを支える定番の道具134』(マガジンハウス)など著書多数。近著は『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』(文藝春秋)。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2021年2月号掲載

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