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“一幕めは水餃子、二幕めは焼き餃子”で二度おいしい。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.34

“一幕めは水餃子、二幕めは焼き餃子”で二度おいしい。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.34

小さな料理 大きな味 34

水餃子、焼き餃子

家で食べる餃子は二度おいしい。

そうだよ二度楽しめるんだよ、面倒がっている場合じゃない。あわてて思い直すと、皮を包む指がいそいそと動き出す。「貪欲」って、最高のエネルギー源だ。

家で餃子をつくるとき、最初にうれしいのは、包みたての白いふくふくの餃子がバットの上に整列する光景を眺めるとき。不揃いの大きさや形も愛嬌のうち、しかも、多少のばらつきがあとで生きてきたりもする。

さあ、湯を沸かしましょう。

餃子劇場、第一幕は水餃子です。

沸騰した湯のなかにぽとん、ぽとんと沈めて待っていると、ぷかりと浮き上がってくる。ひと呼吸置いてすくい上げ、鉢に移す。私のやり方は、最初はひとり分5個見当。人数分をゆでたら、大急ぎで食卓に運んで箸をのばす。たれは酢と醤油を合わせただけなのだが、なにもつけなくても十分おいしい。

つるんと口のなかに滑りこむ心地に、やみつきになる。2個、3個、5個、夢中で食べたところで少し落ち着き、さあ追加をゆでましょう、となる。ひとり分追加3個ではちょっと物足りなくて、たいてい5個ゆで、合計10個食べて第一幕を満喫する。このあと、あり合わせのおかずを食べながら水餃子の余韻を楽しんでいると、だんだんお腹がふくらんでくる。

第二幕は焼き餃子。この展開に「二度おいしい」の理由がある。

「そもそも焼き餃子は余った水餃子の上手な生かし方なんですよ」と、北京で教わった。餃子名人の老婦人の教えは、「まず、ゆでたての水餃子をみんなで頰張ります。余ったら、そのままザルに上げてひと晩置いて乾かすと、皮がきゅっと締まって張りが出る。翌日、それを焼くと水餃子とは別ものの味になるのが、また家族の楽しみで」。

そうだったのか。焼き餃子は、残った水餃子の活用法なのだった。

あれからずっと、家で餃子をつくるときは「一幕めは水餃子、二幕めは焼き餃子」が決めごとになった。たまに小麦粉をこねて自分で皮をつくるときもあるし、市販の皮を買うこともあるのだが、買うときは、ゆでたのを乾かしたいので厚手のものを選んでいる。

冬によくつくる変わり餃子をひとつ紹介します。これも北京の食堂で出合って以来レパートリーに加わった餃子で、あんの中身は「豚ひき肉+大きめの粗みじんに切ったれんこん」の組み合わせ。調味料は醬油と酒、風味づけにごま油をひとたらし。

こりこりと歯ごたえのいいれんこんが、水餃子のつるん!を盛り立てる。かりっと焼くと、皮の香ばしさとれんこんの存在感がうれしくて、冷たいビールがクイッと進む。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『味なメニュー』(新潮文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』(文藝春秋)などの著書が。最新刊は“そこにしかない、まちの味”を体現する24の店を、京都在住の姜尚美さんとの往復書簡で教えあった『遺したい味 わたしの東京、わたしの京都』(共著/淡交社)。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2021年3月号掲載

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