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雑穀ならではの歯応えが癖になる“ごついパンケーキ”。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.36

雑穀ならではの歯応えが癖になる“ごついパンケーキ”。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.36

小さな料理 大きな味 36

ごついパンケーキ

シリアルは好きですか。

オーツ麦、大麦、小麦、トウモロコシなど穀物を圧し潰して乾燥させたシリアルは、簡単な朝食にぴったりで、いつもストックしてある。ボウルにざざっと入れて、牛乳をかけたり、ヨーグルトやジャムを添えたり、腹持ちもいいので大助かりだ。

ひとくちにシリアルといっても、種類がいくつかある。オーツ麦(燕麦)を脱穀したオートミール、穀物にナッツやドライフルーツを混ぜたミューズリー、穀物にナッツ類を混ぜて焼いたグラノーラ……いろんなタイプを、そのときどき買い分けて楽しんでいる。ただ、ときには違う食べ方もしてみたい。袋の中身が余り気味になったときなんか、とくに。

パンケーキに仕立ててみたらどうかしら。シリアルはクッキーにも使うことだし、さっそく試してみた。

そうしたら、なかなかいい具合です。

用意するのは牛乳、卵、バナナ。スライダーくらいのミニサイズが六枚ほど焼ける。なぜミニサイズかというと、大きく広げて焼くと、穀物系はまとまりにくいから。

【材料】
シリアル1/2カップ
牛乳50​cc
バナナ1本
卵1個
塩ひとつまみ
バター小さじ1〜2

【作り方】
①ボウルにシリアルと牛乳を入れ10分ほど置く。

②刻んだバナナ、卵、塩を加えて練り混ぜ、なめらかな生地にする。

③フッ素樹脂のフライパンを熱してバターを入れ、大さじ1強の量をすくって置く(直径7〜8cmくらいになる)。

④弱めの中火でじっくり両面を焼く。

ごつい食べ心地が気に入った。いろんな歯ごたえや味が舌のうえでごつごつする。パンケーキといえばしっとり柔らかい生地だけれど、こっちは違う。しっかり嚙んで、嚙みしめて、穀物やバナナの風味を楽しむ質実剛健な持ち味。ぶちぶち、ごつごつ……ひと筋縄ではいかない歯触りは雑穀ならではの妙味で、癖になる(グラノーラは硬めに仕上がるので、このパンケーキにはオートミールやミューズリーのほうが向いているかもしれない)。バナナの量を減らしてチーズを入れてみたり、シリアルは懐が深い。

シリアルの応用範囲が広がって、すっかりごついヤツにハマッている。水切りヨーグルトやジャムを添えたり、ソーセージ、ゆでた野菜、ゆで卵といっしょにワンプレートにすれば申し分のない一食。フライパンで焼いたり丸い形にまとめるひと手間がかかるけれど、シリアルを育てている気分になってくるところがまたうれしくて。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『味なメニュー』(新潮文庫)、『かきバターを神田で』(文春文庫)、『そばですよ』(本の雑誌社)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』(文藝春秋)などの著書が。近刊は京都在住の姜尚美さんとの往復書簡『遺したい味 わたしの東京、わたしの京都』(共著/淡交社)。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2021年5月号掲載

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