小さな料理 大きな味 37
ショートカット炒飯
この順路しかないと思っていたら、ひょんなことから近道が見つかることがある。
こうじゃなくちゃ、という思い込みは意外にたくさんあるもの。料理もおなじで、豆腐は四角く切らなくてもいいし、刺身は醬油で食べなくてもいい。ざっくり崩した豆腐にオリーブオイルをかけたり、塩だけぱらぱら振って味わう刺身もなかなか。長年の習慣はオソロシイもので、考える前に手が動いて豆腐を四角く切っていたりもするけれど。
炒飯の決まりごとをいったん外してみた。
炒飯は、そもそも飯を炒めて作る料理だ。熱い鍋肌で醬油がほんのり焦げた香ばしい香りは炒飯の魅力を盛り上げる一大要素であることには何の異論もない。ただ、その大好きな炒飯をものすごく手軽に作ってみたくもあり、試しにやってみた。
名づけて「ショートカット炒飯」。米を炊くとき、焼き豚とグリーンピースと卵と調味料をぜんぶいっしょに入れて火にかける。そう、炒めずに炒飯を作る「ショートカット」。炒めない炒飯を「炒飯」と言っていいのかというハテナは残るし、「じゃあ炊き込みご飯でしょ?」というツッコミも当然。ただ、食べているとき、おおいに〝炒飯を感じる〟ので、私自身は勝手に納得している。焼き豚とグリーンピースと卵の三大柱は強い。
【材料】
焼き豚80g
グリーンピース50g
卵1個
米2カップ
醬油小さじ1と1/2
酒小さじ1
塩小さじ2/3
ごま油小さじ2
米を炊く分量から調味料分を引いた水
胡椒(多め)適宜
【作り方】
①焼き豚を1センチ角に切る。
②グリーンピースは、生はそのまま、缶詰を使う場合はいったん水でさっと洗っておく。
③鍋または炊飯器に洗った米を入れ、焼き豚とグリーンピースを加えてざっと混ぜ、中央を窪ませて卵を割り入れる。
④すべての調味料と水を米の周辺から静かに注いで炊く。
⑤全体をまんべんなく、卵を切るようにしてさっくり混ぜ合わせる。
焼き豚のラードとごま油(サラダ油でもいい)が、米をパラパラに炊き上げる。米の窪みで火が通った卵は、全体を混ぜ合わせるとき、ほどよく黄身と白身がばらばらに崩れてくれるので手間いらず。茶碗に盛って皿を当て、くるりとひっくり返すと炒飯のドームが現れたら、ますます気分は炒飯だ。食べる直前、さらに胡椒をふりかけてガツンといく。
ぜひいっぺんやってみてください。やっぱり炒めるほうがいいよねと思われるかもしれないけれど、優劣や比較の問題ではなく、手抜きでもなく、距離の離れた二種類の方法を持っておいて損はない。ショートカットの手段があるかないかでずいぶん肩の力は抜けるようだ。で、朝からこれ。