SEARCH GINZA ID

アンチョビという安心。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.44

アンチョビという安心。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.44

小さな料理 大きな味 44

アンチョビという安心

いざというとき大きな助けになってくれる缶詰なのに、小さなお荷物になってしまうときがある。もちろん自分のせいで。

忙しくて買い物に行けないとき、時間がないとき、手早くすませたいとき、非常時の備えにも絶大な力を発揮してくれる缶詰だから、買い置きは欠かせない。いっぽう、うっかりすると手つかずのまま。そんなときがありませんか。わたしはときどき缶詰の渋滞を引き起こしてしまい、そのたびに(ああまたやってしまった…)と反省しながら、あわててお荷物の解消に走る。

アンチョビの缶詰もそのうちのひとつだ。アンチョビは、カタクチイワシの塩漬けをオイルに浸して缶詰にしたもの。長期保存が利くし、うまみのかたまりのような素材だからこのうえなく使い勝手がいいのに、ふと気づいたら、まとめ買いした数個が棚の片隅でじっと身動きできないままになっている。好きな素材なのにどうしてかなと首を捻りながら、思う。たぶん缶詰という存在に安心しすぎて甘えているんだろう。

そういうとき、急いでつくるのがアンチョビソースである。プルトップのふたに指を掛けながら思うのは、5分もあればすぐできるし、とても便利なソースなのにもったいなかったな、ってこと。

【材料】
アンチョビ(フィレ)一缶分(約40g)
にんにく2片
タカノツメ1/2本
オリーブオイル大さじ4

【作り方】
①缶詰の油を切ったアンチョビ、にんにくを細かく刻む。
②小鍋に全部の材料を入れ、弱火にかけてふつふつ煮ながら、軽く潰す。
③粗熱が取れたら、保存容器に移す。

無敵のソースです。スパゲッティでもショートパスタでも、ゆでたてにかけて和えれば文句なしにおいしいパスタのひと皿ができるのだが、もちろんそれだけではない。

ゆでたじゃがいもに混ぜて、アンチョビ風味のポテトサラダに。
キャベツ炒め、もやし炒め、ピーマン炒めの味つけに。
豚肉のソテーの仕上げに。
蒸したブロッコリ、カリフラワー、にんじんのソースに。
ゆで卵に添えて前菜に。
トーストしたバゲットに塗って、おつまみに。
炒飯の香ばしい味つけに。

…あれこれたくさん。ごぼうや大根、春菊にもよく合うから、冬野菜の盛り立て役にもなる。

ゆうに2週間は保存できる。アンチョビソースの万能ぶりを堪能しながら、いやあやっぱりすごいな、と感心する。だからアンチョビの缶詰は欠かせない。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『本の花 料理も、小説も、写真も』(角川文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』(文藝春秋)など著書多数。近刊『父のビスコ』(小学館)は初めての自伝的エッセイ集。ふるさと倉敷のあの頃と今、父や母の言葉、子ども時代のこと、食にまつわる記憶などが詰まった1冊だ。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2022年1月号掲載

#Share it!

#Share it!

FOLLOW US

GINZA公式アカウント

関連記事

今宵、きつね丼。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.42

今宵、きつね丼。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.42

豆腐が余ったとき、白和えがすべてを引き受けてくれる。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.41

豆腐が余ったとき、白和えがすべてを引き受けてくれる。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.41

保存のために“味噌だれに漬ける”のもひとつの手。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.40

保存のために“味噌だれに漬ける”のもひとつの手。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.40

ベトナムで食べたおやつ“冷たいアボカドクリーム”。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.39

ベトナムで食べたおやつ“冷たいアボカドクリーム”。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.39

“包む”という魅惑の食べ方について。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.38

“包む”という魅惑の食べ方について。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.38

肩の力を抜いて炒めずに作る“ショートカット炒飯”。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.37

肩の力を抜いて炒めずに作る“ショートカット炒飯”。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.37

にらには剛のA面、柔のB面がある。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.35

にらには剛のA面、柔のB面がある。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.35

雑穀ならではの歯応えが癖になる“ごついパンケーキ”。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.36

雑穀ならではの歯応えが癖になる“ごついパンケーキ”。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.36

“一幕めは水餃子、二幕めは焼き餃子”で二度おいしい。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.34

“一幕めは水餃子、二幕めは焼き餃子”で二度おいしい。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.34

かぶの攻略にもってこいの一品。豚ばら肉と厚切りかぶ炒め。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.33

かぶの攻略にもってこいの一品。豚ばら肉と厚切りかぶ炒め。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.33

冬のねぎの甘さとうまみをじっくり引き出した常備菜。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.32

冬のねぎの甘さとうまみをじっくり引き出した常備菜。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.32

優しい気持ちになる冬の朝ごはん。ぷちぷち食感のたらこ豆腐。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.31

優しい気持ちになる冬の朝ごはん。ぷちぷち食感のたらこ豆腐。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.31

“豚肉+海老”は相性抜群。新感覚のつくねレシピ。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.30

“豚肉+海老”は相性抜群。新感覚のつくねレシピ。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.30

PICK UP

MAGAZINE

2022年6月号
2022年5月12日発売

GINZA2022年6月号

No.300 / 2022年5月12日発売 / 特別定価860円

This Issue:
洋服愛あふれるワードローブ紹介
クローゼットスナップ!

ZOOM UP
クローゼットの中身!

...続きを読む

BUY NOW

今すぐネットで購入

MAGAZINE HOUSE amazon

1年間定期購読
(17% OFF)