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真冬、白粥ですっきり。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.45

真冬、白粥ですっきり。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.45

小さな料理 大きな味 45
*2022年2月号掲載の内容になります

真冬、白粥ですっきり

お粥をつくりますか。

尋ねられたら、返事はふたつに分かれる気がする。

月子さん「はい。ときどきつくりますよ。お粥、好きです」

花子さん「いいえ。だってお粥は具合の悪いときに食べるものでしょう?」

私は月子さんのほうなのだが、子どもの頃は花子さんだった。風邪をひいて熱を出し、学校を休んで布団に潜り込んでいる日、母がこしらえてくれた一膳のお粥に癒やされた記憶はいまだに薄れない。

でも、月子さんとしては伝えたい。

「お粥はご馳走なんですよ」と。

煮えばなのお粥は、炊きたてのご飯とはまた違うおいしさだ。水、火、ゆったりとした時間、この三つが合わさると、米ひと粒ひと粒がとろりと優しい表情をまとう。米がふんわりほどけたような甘い香りを嗅ぎながら、「特別だな」と自然に思えてくるし、一膳をおなかに収めると、胃の腑にぽっとともる温い灯りを体感して充ち足りた気持ちになる。

シンプルな白粥のありがたさはたくさんある。身体を温め、胃に優しく、新陳代謝を促す。私は、ちょっと身体が重いなと思ったらお粥に切り替えることが多いのだが、体重の調整にもなるし、食べ過ぎも防いでくれる。一膳の白粥は、一膳のご飯より羽のように軽くて優しい。そのあと、気持ちよくおなかが空くのもうれしい感覚だ。

ぜひ生米から炊いてみてほしい。生米がだんだん熱を含んでぷっくりとふくらんでゆく様子は、米の華が咲くかのよう。厚手の鍋で静かに、気長にのんびり。ぴかぴかの白粥が出来上がるととても豊かな気持ちになるのは、それが米という糧だからだろうか。

むずかしいことは何もない。米の分量の何倍の水で炊くか、そこだけ決めれば万事OK。ご飯を炊くときは、米と水はほぼ一対一。いっぽう、お粥を炊くときは、私は米の6倍から8倍くらいの水で炊くことが多い。6倍なら〝ぽってり〟、8倍なら〝とろり、さらりの中間〟。10倍で炊くときは〝さらさら〟。お粥は寛容だから、失敗なんてこともありません。途中で、自分の好みのとろみになったなと思ったら、火を止める。

【基本の白粥のつくりかた】
①研いだ米、米の6〜8倍量の水を厚手の鍋に入れ、火にかける。
②最初は強火、沸騰したら弱火でことこと、ふたを少しずらして煮る。
*ときどき鍋の底を静かに起こし、焦げつきを防ぐ。煮る時間の目安は、米1/2カップの場合、30〜40分くらい

主食としてのお粥なので、味はつけないまま炊く。白粥のおともは野菜炒めから梅干し、卵焼きまで何でも。

とかく運動不足になりがちな冬場だからこそ、薦めたい。身体を軽やかな方向へ導いてくれるお粥の効果がよけいにわかるから。月子さんは毎冬そう思いながら白粥を炊く。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『本の花 料理も、小説も、写真も』(角川文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』(文藝春秋)など著書多数。近刊は、初の自伝的エッセイ集『父のビスコ』(小学館)。故郷・倉敷のあの頃と今、父や母の言葉、子ども時代のこと、食にまつわる記憶などが綴られている。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2022年2月号掲載

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