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米とアスパラガス。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.49

米とアスパラガス。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.49

小さな料理 大きな味 49

米とアスパラガス

北の大地、北海道の五月。スカッと胸がすく広大な畑に近づくと、無数の緑の棒がにょきにょき直立して生えているのが見えた。アスパラガスは、こんなふうに土を押しのけて頭を出し、空に向かって鉛筆みたいにまっすぐ伸びるのか。初めて見た光景は圧倒されるくらい力強く、ちょっとシュールでもあった。

もうひとつ驚いたことがある。アスパラガスを刈ると、切った根もとの断面からみるみる水分が湧き、盛り上がったしずくが朝陽を浴びて光る。一本のなかに充満する生命力を見せつけられ、感動してしまった。

それほどのアスパラガスだから、旬がやって来るたび、たっぷり食べて元気を養いたい。熱湯でゆで、シンプルに塩とオリーブオイルで。皿に四、五本寝かせたところに熱々のポーチドエッグを重ねて。アスパラガスとベーコンの炒めもの、アスパラガスの味噌汁、アスパラガスの天ぷら、アスパラガスの味噌マヨネーズディップ……毎日がアスパラ祭り。

あるとき気がついた。

アスパラガスから、いいだしが出る。

味噌汁を味わうと、アスパラガスのうまみが加わっていることに気づいたのがきっかけだった。しゃきしゃきの歯ごたえを大切にしてきたけれど、そこだけに縛られなくてもいいんじゃないか。くったり煮えて柔らかなアスパラガスには、また別の顔があるようだ。

つくってみたのはピラフ。生米を炒めてから炊く米料理だ。

【材料】(二人分)
アスパラガス3〜4本 米1カップ 水1カップ強 オリーブオイル大さじ1 塩小さじ1/4 チーズ(パルミジャーノなど)、黒こしょう各適量

【つくりかた】
①アスパラガスを4㎝長さの斜め切りにする。
②小鍋にオリーブオイルを入れて温め、米(洗わない)を炒める。
③米が透き通ったら、アスパラガス、塩、水を加え、ふたをして15分炊く。
④全体をひと混ぜしてから5分ほど蒸らす。
⑤皿に盛り、黒こしょう、すり下ろしたチーズをかける。

なかなかいいじゃないか、アスパラガスのピラフ!と自画自賛し、以来つくるようになった。柔らかな緑を米とともに味わうと、じゅわんと滋味深い風味が弾ける。米とチーズのうまみや塩気、黒こしょうのキレ、重層的なうまさが持ち味のひと皿は、たしかにアスパラガスならではのおいしさだ。

炊き込みごはんも試してみたら、これもイケる。1㎝くらいのコロコロに切って炊くと、何かに似ている。ええと何だっけ、と思ったら、とうもろこしごはん。緑も黄色も、北海道の恵みは、米にもあらたな力を与えてくれるんだな。北の大地にあらためて敬意を抱く。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『本の花 料理も、小説も、写真も』(角川文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』(文藝春秋)など著書多数。初の自伝的エッセイ集『父のビスコ』(小学館)で読売文学賞受賞。週刊文春の連載をまとめた『いわしバターを自分で』(文春文庫)が好評発売中。

Illustration: Kanta Yokoyama

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