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本当のわかめスープ。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.52

本当のわかめスープ。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.52

小さな料理 大きな味 52

ケチャップでスパゲッティを炒めるナポリタンはニッポン・オリジナルだ。でも、日本生まれとは知らなかった子どもの頃は、外国の食べ物だと信じて疑わなかった。一滴垂らしただけなのに、口のなかが火事になるタバスコにしても未知の辛さだったから、ナポリタンとタバスコの組み合わせは完全に別世界の食べ物に思えたのだった。

〝似ているのにまるで違う〟ものは結構多い。カヌレやマリトッツォまでコンビニに並ぶ国に暮らしていると、本物と偽物の領域が滲みがち。〝おいしけりゃ、まいっか〟とお茶を濁したりもする。

さあそこで、本物のわかめスープを紹介したい。

わかめのひらひらが数切れ浮いているヤワな偽物ではなく、黒々として重量感たくましく、わかめの風味が口いっぱいに広がる正調わかめスープだ。韓国では、誕生日のお祝いや出産後の滋養補給にも食べるソウルフードとして日常生活にも欠かせない。韓国人の友だちが日本の焼き肉屋でひらひらの衣が数枚だけ透けているのを見て「ア然として呼吸が止まった」と嘆いていたこともあった。本物のわかめスープは視界不良な暗黒の沼そっくりなのだが、黒々としたわかめの量は、惜しみない愛情の証でもある。

家庭料理だから、とても簡単で時間もかからない。

【材料】(4人分)
生わかめ100g 牛肉100g 醤油大さじ1 おろしにんにく小さじ1/2 長ねぎ5cm分 ごま油大さじ1 すりごま小さじ1 塩・こしょう各適宜 水約5カップ

【作り方】
①わかめを洗い、たっぷり水を張ったボウルに浸して洗う。水気を搾ったあと、食べやすい大きさに切る。
②牛肉を包丁で叩き、そぼろ状にする。
③鍋にごま油、牛肉、わかめを加えてさっと炒める。
④醤油を加えて混ぜ、香りが立ったら水を加えて煮る。
⑤沸騰したらあくを取り、おろしにんにく、みじん切りにした長ねぎ、塩・こしょうで味を調える。最後にすりごまを振る。

拍子抜けするくらい簡単でしょう?

ポイントは、わかめをごま油で炒めるところ。炒めると、わかめのうまみがとろんとほどけるのが本筋です。アレもいいけどコッチもね、ではなく、コッチじゃなきゃ!と思うはず。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『本の花 料理も、小説も、写真も』(角川文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『いわしバターを自分で』(文春文庫)など著書多数。初の自伝的エッセイ集『父のビスコ』(小学館)で読売文学賞受賞。最新刊は好きが高じて、油揚げのことだけを綴った『おあげさん』(PARCO出版)。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2022年9月号掲載

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