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料理未満だけど。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.53

料理未満だけど。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.53

小さな料理 大きな味 53

おでんは、まず最初に何を選びますか。

私の場合、不動のスターティングメンバーは「厚揚げ、大根、こんにゃく」。そのあと、スジとか昆布とか卵とか。いつもアンコールしたくなるのが、こんにゃくなんです。理由はとくにないけれど、こんにゃく欲が湧いてしまう。

ぷりっぷりの弾力に惹かれるのだろう。クイッと歯が食い込む瞬間の抵抗感も強烈だ。嚙むたびに、きゅっきゅっと小さな音が鳴る(気がする)のも好もしい。考えてみると、こんな食べ物はほかにない。主役として舞台に上がらなくても、そこに居るだけで代替えのない存在感を発揮するし、主役を食ってしまうことさえある。あなどれません。

こんにゃくが、昔から「胃のほうき」「お腹の砂おろし」と言われてきたことを知っていますか。先人は、科学を超えてこんにゃくの効能に気づいていた。実際のところ、こんにゃくは食物繊維が豊富で、しかもセルロースやこんにゃくマンナンには身体にとって不必要なものを排出する毒だし効果があり、効率よくカルシウムを摂れることもわかっている。低カロリーなのもうれしくて、こんにゃく礼賛はエンドレス。

だからもっと食べたいのに、どうも扱いにくくて、という声を聞きます。そうですよね。だって、とくに味がないし、そもそも味が染みこみにくい。かといって、おでんみたいに何時間もひたすら煮るのは、ちょっと現実的じゃない。

こんにゃくといえば田楽、けんちん汁、ピリ辛炒めあたり。でも、手間をかけずに楽しめたらもっといい。

私のこんにゃく対策を紹介します。ポイントはふたつ。フォークでざくざく切れ目を入れること。塩ゆでして、かりっ、ぷくっとさせること。あとは味噌を指で塗るだけ!

【材料】
こんにゃく1枚 塩小さじ1 味噌、七味唐辛子各適量

【つくり方】
①こんにゃくの両面にフォークを刺し、縦横に線を入れて格子状にし、 サイコロに切る。
②熱湯に塩小さじ1を入れ、強火で5分以上ゆでる。
③ザルに空け、粗熱を取る。
④こんにゃくの表面に味噌を指で塗り込み、七味唐辛子を振る。

料理未満。工作みたいに簡単なところもうれしくて、定期的につくっては、「お腹の砂おろし完了!」と指差し確認。ビールのつまみにもなかなかです。

もうひとつ、こんにゃくのすてきなところをアピールしておきたい。嚙めば嚙むほど不思議な満足感がやってくる。ゆっくり嚙んでいると、満腹中枢が刺激される。なのに低カロリー。

こんにゃくは暮らしの友。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『本の花 料理も、小説も、写真も』(角川文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『いわしバターを自分で』(文春文庫)など著書多数。初の自伝的エッセイ集『父のビスコ』(小学館)で読売文学賞受賞。最新刊は好きが高じて、油揚げのことだけを綴った『おあげさん』(PARCO出版)。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2022年10月号掲載

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