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豆腐を崩す。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.54

豆腐を崩す。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.54

小さな料理 大きな味 54

豆腐ほど頼もしい食材はないと思っている。優れた植物性たんぱく質、低カロリー、値段も安い。それに、私の愛する油揚げの親玉でもある。なんといっても、毎日顔を合わせても飽きないところがすばらしい。

といいながら、つい似たような線上を走っていませんか。  豆腐の味噌汁。冷や奴。湯豆腐。煎り豆腐や焼き豆腐、豆腐チャンプルーという手もあるけれど、なんとなくルーティンをぐるぐる回っているような。まあそれでも飽きが来ないのだから、何の問題もないのですが。

そこで勧めたいのが「豆腐を崩す」。このときは木綿豆腐を使う。ざっくり崩すと、アラ不思議、とたんに豆腐が別のものに見えてくる。無意識のうちに白くて四角い物量感にとらわれていたのかな。ふるふると柔らかいものを大事に扱わなきゃ、という思い込みもあるだろう。

豆腐を潰すとき、私はコブシを使う。グーパンチの要領で、上から静かに豆腐を押すと、力を入れなくても自然に崩れるところが豆腐の優しさ。ざっくり割れた断面もおおらかで「さあ、何にでもなりますよ」と語りかけてくる。

崩したまま、塩とオリーブオイルをかけて食べることもあるのだが、「さっきは豆腐だった」という記憶を消し、食材のひとつに変えてみたい。私が役立てているのはひき肉と豆腐の合体バージョンで、なめらかに混ぜ合わせてタネにまとめ、焼いたりゆでたり。豆腐が入ると、加熱したら硬くなりがちな肉が締まらず、ふんわり柔らかく仕上がるところも好きだ。

基本のつくりかたです。

【材料】(2〜3人分)
鶏ひき肉250g 木綿豆腐1/2丁 卵1個 白ごま大さじ1 醤油大さじ2/3 酒小さじ2 みりん小さじ1 おろし生姜小さじ1 塩・胡椒各適宜

【つくりかた】
①木綿豆腐を手で押して軽く潰し、ザルに広げて皿を載せて15分ほど置き、水切りする。
②ボウルに鶏ひき肉を入れ、よく混ぜてなめらかにする。
③溶き卵を加えて肉になじませ、おろし生姜と調味料、白ごまを混ぜる。
④豆腐を加え、全体を混ぜ合わせる。

考えてみると、たんぱく質同士の組み合わせなんです。だから違和感がないのかな。小判型にころんと丸めて焼いたり、ちいさな団子にしてスープにしたり、これから寒くなってきたら、鍋に摘み入れたり、豆腐が入るだけでふんわり余裕のある味に変わるところはさすがだなと感嘆するはず。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『本の花 料理も、小説も、写真も』(角川文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『いわしバターを自分で』(文春文庫)など著書多数。初の自伝的エッセイ集『父のビスコ』(小学館)で読売文学賞受賞。最新刊は好きが高じて、油揚げのことだけを綴った『おあげさん』(PARCO出版)。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2022年11月号掲載

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