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一石二鳥の鶏にゅうめん。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.55

一石二鳥の鶏にゅうめん。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.55

小さな料理 大きな味 55

四文字熟語「一石二鳥」のおおもとは、イギリスのことわざ「ひとつの石で二羽の鶏を殺す」。ちょっと穏やかではないけれど、つまり、一挙両得のこと。日本の某メーカーのキャラメルのキャッチフレーズに、「1粒で2度おいしい」なんていうのもあった。意味をつかむ前から、すでにオイシイ。

いつも「一石二鳥」のフレーズが頭に浮かんでにんまりする台所の一場面が、ささ身をゆでているときだ。

鍋に湯を沸かしてささ身を数本ゆでるのには、同時にふたつの目的がある。

■ほぐして鶏肉のふわふわをつくる

■鶏スープをとる

どちらかといえば、鶏スープのほうに軸足がある。鶏肉は、それがどんな部位であっても、ただゆでただけで滋養たっぷりの澄んだスープがとれるのだけれど、ささ身は最も手軽に、しかもスピーディに出来上がる魅力的な部位だ。この、肉をゆでるだけで手に入るだしを透明感あふれるスープとして味わい、肉そのものも無駄なく料理に生かす方法は、料理というより、生活技術のひとつといっていい。

ふたつを同時に使うなら、鶏にゅうめんがお勧めです。
冬場、温かい丼をふうふうするだけで、すでに幸せが訪れる。

【材料】(2人分)
鶏ささ身200g(大3本) 水3カップ 酒小さじ2 塩適量 青ねぎ5〜6本 そうめん適量

【つくりかた】
①ささ身に包丁を入れて左右に開き、平らに均す。
②鍋に水と酒を入れて火にかけ、ささ身を入れてゆでる。
③火を止め、そのまま置いて粗熱を取ってからささ身を取り出し、繊維に沿って手で細かくほぐす。
④そうめんをゆでる。
⑤鍋のスープを温め、塩を加えて味を調え、器に盛ったそうめんにかけ、ほぐしたささ身適量をのせ、小口切りにした青ねぎを散らす。

鶏ささ身3本分をほぐすと、かなりたくさんの量になるところも気に入っている。残りは、サラダや和えものに入れたり、炒飯や雑炊に入れたり、使い勝手はいろいろ。私が好きなのは、せん切りにしたきゅうり、練り胡麻、醤油、酢、ラー油と和えた棒々鶏ふうの一品。小さなおかずとして役立ちます。

いまふと思ったのですが、ささ身をほぐす作業もかなり好きなんです。ボウルを膝にのせ、録画予約しておいたビデオを観ながらせっせと指先を動かしてささ身をほぐす単純作業は、無心になれる喜びまで連れてくる。一石二鳥どころじゃなかった。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。食文化と暮らし、文芸をテーマに執筆活動を行う。『本の花 料理も、小説も、写真も』(角川文庫)、『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)、『いわしバターを自分で』(文春文庫)など著書多数。初の自伝的エッセイ集『父のビスコ』(小学館)で読売文学賞受賞。最新刊は好きが高じて、油揚げのことだけを綴った『おあげさん』(PARCO出版)。

Illustration: Kanta Yokoyama

GINZA2022年12月号掲載

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