16 Jan 2017
違いのわかる男は味噌をドリップする ー あなたの食「おこだわり」教えてください。フクナガコウジさんのみそしる編

「そ、そんな細かいところまでこだわる!?」という「おこだわり人」を紹介する人気マンガ『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』(清野とおる著/講談社)に深く敬意を表し、険しく高い「食の道」を究めんとする人々の「おこだわり」を徹底調査。
街中のコーヒーカップの
中身がミソスープだったら、
日本のカルチャーは
もっと面白くなる!
フクナガ コウジ≫
クリエイティブなミソチーム「大晦日」主宰。出張ミソスタンド“LOVE ME AND MISO SOUP.”は都内のイベントを中心に出店。
味噌汁をドリップするユニットがいると聞いた時、時代はついにそこまで来たか……、と体が震えた。
「昔から味はもちろん、喫茶店やカフェなどコーヒーを取り巻く空間が好きだったんです。でもある時、コーヒーカップを持って街を歩いている人を眺めていたら、味よりもそのスタイルが好きで飲んでいる人が結構多い?ならば、カップの中身は、他のものでもいいのでは?とふと思ったんです。そこでコーヒーに替わる中身を探していたら、日本のソウルフードである味噌汁のアイデアが! カップを持った女性とすれ違って、ダシの上品な香りがしたら、なんか面白い未来が来る気がして」
最初はパフォーマンス的な面白さを狙って始めたものの、活動を続けていくうちに、味噌の奥深さを知り、中身にも力を注いでいくようになった。
「産地ごとにコーヒー豆の味わいや風味が異なるように、味噌も日本国内だけで、造る場所や蔵、原材料、製法によってまったく違うものができるんです。だから使うのは、スーパーで売っているありきたりのものではなく、コーヒーのシングルオリジン(単一農園)のように、ひとつの味噌蔵で作られた無添加のものだけ。造り手と直接交渉して、蔵から仕入れています。地方の味噌蔵の方と電話で話すと、『東京ではそんなふうに、味噌汁がオシャレに飲まれているのか?』と不思議がられますね。でも一杯ずつドリッパーで丁寧にダシを引くと、味噌の芳醇な香りが立ち、絶対的に美味しいんです」
メニュー名や説明をユニークにしているのは、若者やインバウンダーたちにも気軽に頼んでほしいから。コーヒー文化のように、味噌文化ももっと現代に根付いてほしいという想いが込められている。 「まさに味噌をリ・デザインしている感じ。伝統を大切にしながらも、既成の価値観を変えて、見せ方を時代に合わせていかないと、残っていかないんですよ」
コーヒーはもう古い!?
違いのわかる男は味噌をドリップする
フィルターをセットして鹿児島産カツオ節の粉末を投入。ドリップで淹れると、鍋で何杯分も作り置きしたものより、引きたてのダシの良い香りが楽しめる。
味噌は大きく分けて米、麦、豆、調合の4種類に分類され、種類によって味や色がまったく異なる。適量をとり、紙コップの中へ入れて、ドリッパーの下にセット。
ケトルの中には、利尻昆布から丁寧にとった温かいダシ汁が入っている。これを勢いよく注ぐことで、対流を起こし、カツオのダシの上品な香りを立たせる。
画像上から
SOY AU LAIT GET LUCKY
熊本県「中山大吉商店」の麦米合わせ味噌に、濃厚な豆乳を合わせたソイ・オレタイプ。麹たっぷりの優しい甘さとマイルドな口当たり。¥500
SINGLE ORIGIN DEMITASSE
愛知県の八丁味噌を使った大豆の旨味たっぷりのビターなデミタス。SB52(まるや八丁味噌)とSB69(カクキュー八丁味噌)の2種類から選べる。各¥400
SINGLE ORIGIN MAGUMA
石川県「ヤマト醤油味噌」の有機米味噌を使用。国産の有機大豆、有機米を使い、木桶でじっくりと時間をかけて長期熟成させた一品。ブランデーのような深みが特徴。¥400
愛知県岡崎市で行っている“8830”プロジェクトの〈ビーントゥバー八丁味噌〉
4個入り ¥400/6個入り ¥1,200。お湯を注げば味噌汁に。バレンタインデーにも◎
Photo: Yoko Tajiri
Text&Edit: Emi Suzuki
Illustration: Kahoko Sodeyama
Cooperarion: Chiho Ohsawa, Nami Inoue, turedurehanako
GINZA2017年1月号掲載