新連載 夜な夜なおつまみ愛 vol.1 エディター編

あのお店のあの一品。帰り道にどうしても食べたくなるあの味。第1回目はGINZAエディターのとっておきの一品をご紹介します。


「オーバカナル」のポムフリット

オーバカナル フレンチフライポムフリット650円。この季節はテラス席がマストです。

遡れば小学6年生。私は中学受験のため中野の塾に通っていた。実家からほど近い駅から、71番のバスに乗って。71という番号もバス特有のあの匂いも(雨の日は決まって車酔いをした)すべて思い出せるのだから、辛い記憶は鮮烈だ。時代を超えてあまねく小学生が同じ気持ちと思いたいが、塾通いはかなり憂鬱なものだった。そんな小学6年女子の憂さを晴らしてくれたのは、塾の自販機で買うアンバサ(当時小学生の間でやたら流行っていた乳酸飲料)と中野駅南口のマクドナルドだ。授業を終えホッとした気持ちで家路につく前、私は必ずマックへ寄った。そしてバス最前列の異様に高い座席に腰を落ち着け、テイクアウトしたばかりのマックフライポテトを指を塩まみれにして貪り食べる毎度、いかんともしがたい背徳心とともにすべてをチャラにしていた。親の言いつけを守って塾に通わねばならぬ放課後も、そのわりに冴えない成績も。

そうか。いま目の前に置かれたビールの横に添えられたポムフリ山盛りがもたらす無条件の歓びは、小6、塾帰りに訪れたあの完璧な安寧に通ずる多幸感だ。しかもそれはバスの中でもマックでもない。パリのエスプリ香るオーバカナルのテラスで味わう揚げたては、仕事終わりの心と体を完璧にヒーリングしてくれる。私はもう無力な子供じゃない。

オーバカナル 銀座
住: 東京都中央区銀座6-3-2 ギャラリーセンタービル1F
☎︎: 03-3569-0202
営: 月~木 11:00~23:00(L.O.22:30)
金 11:00~23:30(L.O.23:00)
日・祝 9:00~23:00(L.O.22:30)
土 9:00〜23:30(L.O.23:00)


Saya KAWADA

同率首位でポムフリと競るのはポテチ。北海道の六花亭ポテトチップスは上品な袋とお味が罪悪感を半減させる。

「モンド バー」のサンドイッチ

自家製ハムのサンドイッチ¥1,500

このサンドイッチを食べたくて何度品川で途中下車したことだろう。アトレ品川が開業した2004年当初からテナントに入っている「MONDE BAR 」。隣のカフェに行列ができていても、私はまっすぐ黙ってモンド。
サンドイッチで特徴的なのは、柴犬色の薄いパン。どうしてこんなに美味しいのだろうかと、ある日作り方を聞いてみた。
① 3斤つながった特注のパンを
② 包丁で切り(パン用ナイフではなく)
③ 業務用オーブン「サラマンダ」で焼く
合わせるお酒は、気温25度を超えればギムレット。あとは一年中マティーニ。この端正なサンドイッチにビールは合わない。せっかくのサクサクをだらしなく溶かしてしまう。ワインだとひっかかりがなさすぎる。パンの香ばしいフレーバー、ハムの塩気、そしてそれらを丸っと包み込むジンのジュニパーベリー。どれが欠けても成立しない、本当に大好きな組み合わせ。駅ビルの中にこんなオーセンティックなバーがあるなんて、東京はやっぱり素敵だ。

モンド バー
住: 東京都港区港南2-18-1 アトレ品川4F
☎︎: 03-6717-0923
営: 11:00〜24:00(日祝11:00〜23:00)
無休


Keiko SUZUKI

2009年からGINZA編集部在籍。これからの季節、自宅での休日飲みによく作るのは、白瓜とバターのシンプルなサンドイッチ。冷えた白ワインによく合う。

「タイニーカフェ」の豆腐の味噌漬け

豆腐の味噌漬け¥400(税込)

大抵はコロナビールと合わせて、たまに日本酒と合わせて(個人的好み)。
そんな食べ方を推奨したいのが、京王線 仙川駅から徒歩5分ほどのところにあるお店「タイニーカフェ」の豆腐の味噌漬け。

毎度味わい深い濃縮された食感とチーズのような味が癖になる。毎度というのはあの味をもう一度と行きたいわけだが、そうもいかないのが漬物の定め。その日の気候や環境、漬かっている日数で硬さや味の染み込み具合だって変わってしまう。そもそもメニューにあるのかないのかさえ店に行くまでわからない。まだ十分に漬かっていない場合、メニューには出されず、ラッキーなタイミングでしか出会えないのも特別感漂う一品。

ちびちびとお酒を飲みながら少しずつ味わい、マスターと「あぁこれはあともう1日待ちたかったですね」、「この味は今までの中で一位かもしれません」などと話し、食を追求する時間がまたよいもの。
それがいつの間にか最近行った展示の話や映画の話に自然と移り変わってゆくのもこのお店の不思議なところ。気づけば他の席の人も加わっていたり…
果たして店の雰囲気に呑まれたのか酔いが回ったのかはわからない。

tiny cafe
住: 東京都調布市若葉町1-42-2
☎︎: 03-3305-0400
営:15:00~24:00(土: 13:00~24:00/日: 13:00~22:00)
休: 水曜日

 
Nico A
編集アシスタントにこ。コロナばかり飲んできたのですが最近は専らレモンサワーに。噂の「蓮香」にも早く行きたい。

Cover Illustration: Mai Endo