毎日のご飯、どんな器で食べていますか?センスのいい料理好きな方たちに、お気に入りの器を使った食卓のワンシーンをSNAPしてもらいました。器のバイイングも手掛ける、〈BLOOM&BRANCH〉のディレクター・柿本陽平さんの食卓とは?
料理好きなあの人の器SNAP。BLOOM&BRANCHディレクター・柿本陽平さんの食卓
柿本陽平/BLOOM&BRANCHディレクター
@yohei_kakimoto
季節のパスタ〈八田亨・作 白掛リム皿〉
週末はパスタを作ることが多く、この八田亨さんのリム皿はそのために買ったものです。9寸ほどあるので大盛りをよそっても余白ができ、品よくまとまってくれます。この一皿は友人でありフードスタイリストの宇藤絵美さんに教わった「ほたるいかと春キャベツのパスタ」のレシピを少しアレンジしたもので、あまりにも美味しくて立て続けに3度も作ってしまいました。フォークは竹俣勇壱さんのryoシリーズです。
八田さんは「焼き切る」という表現をします。薪を焼べた穴窯で長い時間をかけて焼成するのですが、その後さらにガス窯に入れて自分の納得する焼きに近づけていく。この器には、土の中に含まれていた鉄分量の多さや、焦げつきや貫入の場所を見てどの方向から炎があたったかなど、窯の中で起きた土と火の色々なストーリーを想像できる楽しさがあります。
盛りつけ係〈角田淳・作 黄釉花鉢〉
色々な器を試したいけれど、自分の男料理だけだと偏りが出てしまうので、時間がある時は妻が作った料理の盛りつけ係を担当します。この日の昼は「しらすとアボカドのちらし」で三つ葉やアボカドの緑がきれいだったので、春っぽくいこうと角田淳さんの黄の花鉢を選びました。味噌汁は蝶野秀紀さんの汁碗です。
角田さんは白い磁器のイメージがあるのですが、この黄釉花鉢は灰の濃淡と立体的な輪花が際立った芸術性の高い作品で、土もののような柔らかな温かみがあります。とても気に入っていたのですが2年前に割って(割られて)しまい、葉山の金継ぎ教室に半年通ってようやく修復させました。金継ぎといっても仕上げの薪粉は真鍮や銀など種類や価格も様々で、この花鉢は思い入れも強かっただけに金粉を蒔いて仕上げています。黄と鈍い光沢の金の相性が良く、さらに愛着が湧いています。
自分の定番〈三笘修・作 黄石釉深丸鉢〉
昔から大の餡子好きで、季節問わず小豆を煮てはぜんざいを作ります。2、3日連続で食べることになるので、漆器や粉引、片口などその時の気分で器を変えながら楽しみます。特に気に入っているのが、三笘さんの深丸鉢との“地味な茶”の組み合わせです。この釉薬は三笘さんが生活する大分・日田近郊の山から採取した岩を砕き、土や灰を混ぜて偶然に出来たものだそう。アトリエでその現物の岩の大きさを見て驚きました。
そんな自然なものから生まれた黄石釉の茶の奥深い枯れ色と、切れ味のある薄くシャープなフォルム。一見相反する要素が当たり前のように結合してしまうのが、三笘さんの器です。釉調、形、歪み、細部に到るまでの大袈裟でない静かな表現にただただリスペクトしています。
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柿本陽平
セレクトショップのプレスを経てフリーランスに。2014年に骨董通りに面したセレクトショップ〈BLOOM&BRANCH〉を立ち上げ、統括ディレクションとアパレルから器まわりのバイイングまでを担う。
instagram: @yohei_kakimoto