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家庭料理の陰の主役・パセリがチヂミに。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.12

家庭料理の陰の主役・パセリがチヂミに。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.12

小さな料理 大きな味 ⑫

パセリのチヂミ

ちょこんと添えられたパセリは〝残すもの〟だと思いこんでいた「パセリ暗黒時代」がある。あじフライ定食とかスパゲッティ・ナポリタンとかサンドウィッチとか、脇にひっそり控えている小さな緑。たいてい手つかずのまま残っているので、アレを食べないのはマナーなんだと思いこんでいた二十代前半の頃の話。

いまは、パセリが登場すると「待ってました!」と思う。いつ食べようか。もったいなくて、口に運ぶタイミングを密かに推し量るのも楽しみのひとつだ。

八百屋に寄ると、パセリに手が伸びる。私にとって、大束のパセリは玉ねぎやにんじん、じゃがいもと並ぶ常備野菜だ。または、油揚げと同じく手元にないと落ち着かず、もはや長所しか思いつかない耽溺状態。そのくらい頼っている。

炒めてよし、煮てよし、生のまま和えてよし。どんな料理にも役立てられるので、大束を買ってもすぐ消えてしまう。肉といっしょにソテー、ざっくり刻んだのをオリーブオイルで大量に炒めて肉や魚に付け合わせ、煮込みやスープ(ミネストローネには欠かせない)に入れると、だしが出て味がぐんと深まる。いつもスイッと助け船をだしてくれるパセリは家庭料理の影の主役くらいに思っている。

ある土曜日の朝。トーストを食べようと思ったらパンがなかった。手軽にすませたいな。そうしたら例によってパセリの顔が浮かんだ。

チヂミにしてみよう。

とっさの思いつきを自画自賛し、すぐ作った。調理時間67分。食べて感嘆。自分に、ではなくパセリに。チヂミという料理に。

【作り方】

①パセリ5本をざくざく刻む。

②ボウルに卵1個、小麦粉大さじ3、水カップ13を入れて混ぜ、①と合わせる。

③熱したフライパンに油を少し、パセリの生地を流し入れて両面を焼く。

フライパンの表面にきゅっと生地を押しつけ、こんがりきつね色に仕上げる。薄いからあっというまに焼けるし、酢醤油を添えると、さっぱりとした風味になるのも朝食向き。

やっぱりパセリがいい仕事をする。ほろ苦さが幅のある風味に転じ、もしパセリが苦手でも、気がつかないかも。

そもそもチヂミは、手近な野菜を活用する料理だ。ざくざく切ったにらのチヂミも、最高においしい。緑が透けて冴えざえと見える皿の上の風景が好きだから、パセリのチヂミにつながったのかもしれなかった。

朝、とつぜんパセリの料理がひとつ増えた。

平松洋子 Yoko Hiramatsu

エッセイスト。食や生活文化を中心に、のびのびとした親しみやすい文体で執筆。『おとなの味』(新潮文庫)、『忙しい日でも、おなかは空く。』(文春文庫)、『野蛮な読書』(集英社)など。近著は、立ち食いそば文化に正面から挑戦した『そばですよ 立ちそばの世界』(本の雑誌社)。

Illustration: Yosuke Kobashi

GINZA2019年5月号掲載

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