疲れたときのオマジナイ にらの味噌汁。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.15

疲れたときのオマジナイ にらの味噌汁。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.15

小さな料理  大きな味 ⑮

にらの味噌汁

疲れたときのオマジナイは何ですか。

私の場合は「お風呂に浸かる」「とにかく寝る」。この二本柱にすがりついている。いやいや、寝るだけじゃあ何の解決にもならないのでは?と思われるかもしれないが、案外そうでもないんですよ。充分な睡眠は立ち直りの素。思い悩んでいるとどんより黒くなってくるので、とにかく布団のなかへGO。寝ればかならず朝がやってくるのがこのオマジナイのいいところ。コマが次に進んでいる。

食べるオマジナイとしてまっ先に思い出すのは、にらの味噌汁だ。

もう長年すがっている。元気なときは鼓舞してくれるし、元気じゃないときは労ってくれるこの熱い一杯は、夏の元気の素でもある。

にらの匂いが気になるという人もいると思うのだが、ぜひこの方法を試してみてください。

【できるだけ細かく刻んで、5〜10分ほどそのまま置く】

にら独特の強い香りが空気になじんで揮発し、ぐっと柔らかくなる。ずいぶん以前、中国の広東の人に教えてもらったこの方法は、「とにかくできるだけ細かく刻む」。細かければ細かいほど柔らかな香りに変わるというのが、その理由だった。このやり方を踏襲すると、にら玉もひと味違う。卵とにらの一体感が増して優しい風味になる。

味噌汁の場合もおなじだ。味噌とにらが手を取り合う感じ。まず最初に刻んでおけば、だしに味噌を溶いたあたりでにらの懐柔作戦が完了。鍋のなかがひと煮立ちしたら、にらを一気に入れ、さっと火を通したらもうそれで。緑が鮮やかなうちに早めに火を止めるのが、この味噌汁の二番目のコツだ。細かく刻んだにらは、驚くほど早く火が通る。

煮えばなの芳しさ、滋養そのもののおいしさ。くわえて、目が冴える緑の美しさもまたとないごちそう。お椀の表面いっぱい、濃い緑のふかふかがみっしり浮かんだ健やかな風景にいつも見とれる。お椀に口をつけて啜りこむと、とぅるとぅる〜、にらがひとすじの流れとなって滑りこんでくる。

歯の間でさくさくと音を立てるにらの勢いと歯触り。身体のなかにエネルギーが充電されてゆく実感を覚える。この確かな感覚もまた、にらの味噌汁の贈り物だ。

【作り方】味噌汁二杯分

①思い切ってひと束分、できるだけ細かく刻む。目安は5ミリ以下。

②小鍋に湯を沸かし、だしをとって好みの味噌を溶き入れる。

③食べる直前、①のにらを鍋に入れ、さっと火を通す。

ひと束分も大切なオマジナイ。多いでしょ!と思っても、びっくりするほど嵩が減って絶妙の量になるのも、いつもちょっと不思議。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。『忙しい日でも、おなかは空く。』(文春文庫)、『野蛮な読書』(集英社)など著書多数。近刊に『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)など。

Illustration: Yosuke Kobashi

GINZA2019年8月号掲載

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