材料はふたつだけ。口一杯に幸せ広がる、お揚げのカレー 平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.16

材料はふたつだけ。口一杯に幸せ広がる、お揚げのカレー 平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.16

小さな料理  大きな味 ⑯

お揚げのカレー

15分もあれば、さっと作れるカレーの話をしたい。

煮込む時間もいらなければ、材料はふたつだけ。

油揚げと玉ねぎ。

主役がお揚げのカレーです。これがなんとも癖になる。さっぱりしているのに、あとを引く。お揚げにたっぷり染みこんだ熱いカレーの風味が口のなかでじゅぶじゅぶ〜っと広がりながらご飯と混じり合うおいしさは、このカレーでしか味わえない。

本当に簡単なんです。

【作り方】2人分

①油揚げ2枚は太めの短冊切り、玉ねぎ1/2個はせん切りにする。

②鍋にサラダ油を熱して玉ねぎを炒める。

③カレー粉大さじ1を入れてなじませ、水(または、だし)1、1/2カップを加えて全体をペースト状にする。

④油揚げを入れ、2〜3分煮込んでから醤油小さじ1/3を加え、5分ほど煮る。

⑤塩、粗挽きこしょうを加えて味を調える。

煮過ぎると、逆におもしろくない。さっと炒めて、鍋のなかがひとまとまりになったら、もうそれで。カレーは煮込まなければおいしくできないという先入観は捨てたい。油揚げを厚揚げに変えてもいいんです

もうひとつ薦めたいことがある。

カレールーを使わず、カレー粉を使う。

カレー粉は、スパイスを何種類も組み合わせたさらさらのパウダー。私が長年使っているのはS&B赤缶カレー粉なのだが、このバランスのよさ、完成度の高さは、日本が誇る往年のスタンダード作品と言い切って憚らない。今日までの歴史も長い。誕生したのは大正12(1923)年、エスビー食品の創業者・山崎峯次郎が作った国産第一号のカレー粉だ。一世紀近く経ってもトップランナーなのだから、すごい。誕生以来、マイナーチェンジを繰り返しながら、数十種類のスパイスとハーブをブレンドして作る独自の製法を守り続けている。

カレー粉のよさは、素材に寄り添うところ。カレールーは素材の風味を自分の色に染め上げてしまうけれど、カレー粉は素材の持ち味の背中を押す側に回る。赤缶で作るカレーは、昔なつかしいライスカレーの味とどこかでつながっているけれど、ぱっと振るだけで自在に使えるところがとても機能的だ。

台所に、赤缶をひとつ。ぱっと振ればカレー炒飯、カレー風味の肉や野菜炒め、たちどころにカレーの魔法がかかる。台所に立つのもおっくうになる真夏、缶の赤、カレー粉の黄色に励まされる。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。『忙しい日でも、おなかは空く。』(文春文庫)、『野蛮な読書』(集英社)など著書多数。近刊に『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)など。

Illustration: Yosuke Kobashi

GINZA2019年9月号掲載

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