メインとスープの同時調理で一石二鳥!ゆで鶏と鶏スープ 平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.17

メインとスープの同時調理で一石二鳥!ゆで鶏と鶏スープ 平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.17

小さな料理  大きな味 ⑰

ゆで鶏と鶏スープ

ひとつの鍋で同時に作る「ゆで鶏と鶏スープ」。

週二度の割合で続けている私のルーティンだ。

「ゆで鶏が先か、鶏スープが先か」と訊かれたら、「ひよこと玉子の関係と同じ」。鶏肉がなければこんな清らかでおいしいスープは生まれないし、スープができなければゆで鶏も食べられず、つまり、ふたつは同一線上にある。

まず作り方を。

①小鍋に水3カップを入れ、火にかける。

②沸騰したら、鶏胸肉1枚(または、ささみ4、5本)を入れ、15分ほど中火で煮る。

③火を止め、鶏肉を入れたまま粗熱をとる。(鶏肉を鍋に入れたまま冷ますと、余熱で火が通ってしっとり仕上がる)

ことことゆでるだけ。先日、知人と話しているとき「えっ、お酒とか生姜とかねぎとか入れなくていいんですか!?」と驚かれたのだが、何ひとつ入れません。鶏のだしがすでに透明感に充ちているので、余計なものを入れる必要がない。あとでスープを料理に仕立てるときは酒や塩を少し加えるけれど、まず最初はすっぴん。

一度にふたつ、一石二鳥。

ゆで鶏は、厚切りにしてたれをつけて食べたり、細く裂いて野菜と和えたり、どんな料理にも変幻自在。最近流行っているサラダチキンに似ているけれど、もっと素朴な、てらいのないゆでたて。2日ほど保存できるから、冷蔵庫にこれがあれば大丈夫。良質なたんぱく質のかたまりがうれしい。

鶏スープの利用価値も大きい。そのときどき、台所の事情によって、できたてのスープをすぐ使うこともあるし、粗熱がとれたら保存容器に入れて冷凍庫へ直行したりもする。なんといってもすっぴんだから、煮込み、カレー、汁もの、何にでも活用できるところが、またうれしい。

できたての鶏スープに、酒をちょろり、塩をほんの少し。あり合わせの野菜をせん切りにしてさっと煮て、おしまいに溶き卵を散らすかき玉汁はいちばんの好物だ。鶏肉をゆでただけでこんなにおいしい。だから、だしをとるのが面倒で苦手だと言うひとにこそ、作ってほしい。澄んだ透明なうまみが一本の道となって喉を滑り落ちるとき、「ああ」とため息が出るはず。無垢な味に導かれ、また作りたくなる。

おしまいに妙案をひとつ。この鶏スープでごはんを炊き、厚切りにしたゆで鶏を添えれば、タイではカオマンガイ、香港やシンガポールでは海南鶏飯と呼ぶワンプレートのごはん料理ができあがる。レモン汁や醤油、チリソースを添えてどうぞ。

平松洋子 ひらまつ・ようこ

エッセイスト。『忙しい日でも、おなかは空く。』(文春文庫)、『野蛮な読書』(集英社)など著書多数。近刊に『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』(編著/講談社)など。

Illustration: Yosuke Kobashi

GINZA2019年10月号掲載

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